ラボにおけるERESとCSV【第1回】

はじめに
 コンピュータは便利であり、医薬品の研究・開発・製造・販売の各段階で多用されている。また、機器や装置にもコンピュータが組み込まれている。紙の記録から電子的な記録への移行も進むことから、ますますコンピュータは多用されてゆく。これら各段階で多用されるコンピュータに対し、リスクに見合った信頼性を確保する必要がある。
 

 本連載では、ラボにコンピュータやコンピュータ組込機器や装置を導入する場合に、その信頼性確保に必要となるERES対応とCSV対応のポイントを説明する。説明はGMP中心になるかもしれないが、考え方はどの規制領域でも同じである。従って、GLP、Non-GLP、治験薬、QMSの各ラボ、およびGCP中央検査機関などにおいても本連載を活用できると考えている。
 

1.ERES対応とCSV対応
 コンピュータは機能が柔軟であるため、その柔軟な機能の信頼性を確保するための対応技術が必要である。医薬品業界においては、コンピュータの信頼性確保は、下記の対応により行う。

・ERES対応
 ERESとはElectronic Records, Electronic Signatures (電子記録と電子署名)の略語である。コンピュータにより生成される電子的な記録と、コンピュータを用いて行う電子的な署名の信頼性を確保する対応をERES対応という。ERESをER/ESと記載することもある。

・CSV対応
 CSVとはComputerized System Validationの略であり、コンピュータ化システムバリデーションと呼ばれる。CSV対応とは、コンピュータ化されたシステムが意図した通り動作することを、手順を含んで検証し文書化する活動である。コンピュータ化システムをコンピュータ化された業務、あるいはコンピュータが組み込まれた機器や装置を用いて行う業務と考えるとよい。
 

2.ラボにおける導入担当者
 ある程度の規模のコンピュータシステムを導入する場合、社内にプロジェクトチームが結成され、チームメンバーの経験や知識を集結してERES対応およびCSV対応が行われる。また、社外コンサルタントの力を借りることもある。一方、ラボに機器や装置を導入する場合、そのERES対応とCSV対応は導入担当者に任されるのが一般的である。コンピュータ、PLC(Programmable Logic Controller)、機器などを組み合わせ独自のシステムを構築することもある。導入担当者の主業務はラボにおける試験や研究であり、ERESやCSVに精通しているとは限らない。導入担当者の同僚や上司も同様な状況であり、ERESおよびCSVの経験はあっても体系だった知識により導入担当者を支援するのは容易ではない。本連載により、ERESおよびCSVの体系だった知識を習得していただけると期待している。

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