「打錠とは」【第2回】

錠剤に用いられる添加剤とその目的、標準処方と直接打錠法および湿式打錠法での賦形剤の選択
はじめに
「打錠とは」【第1回】では、錠剤の製造法、打錠を円滑に進めるための要素、打錠工程で錠剤物性に影響する因子について解説した。錠剤の主な製造方法としては、攪拌造粒法、流動層造粒法、押出し造粒などの湿式造粒打錠法、スラグ法、ロールコンパクターを用いる乾式造粒法、そして直接打錠法がある。コストの低減の目的で、錠剤の製造方法として、欧米では、直接打錠法が汎用されていたが、生産スケールにスケールアップした際に偏析によるトラブルが起こり易いことから、近年は海外大手ではファーストチョイス(第一選択)として乾式造粒法(ローラーコンパクト法)が主流となってきている1)。
【第2回】は、錠剤に用いられる添加剤とその目的、標準処方と直接打錠法および湿式打錠法での賦形剤の選択について解説する。
1.錠剤に用いられる添加剤とその目的
錠剤には、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等の添加剤が用いられる。賦形剤は、投与量の少ない薬物を製剤化する際に、一定の大きさと重量を与えるために添加されるもので、服用を便利にする2)。しかし、賦形剤は単なる増量剤として使用されることは稀で、結晶セルロースは、結合剤としての働きや、崩壊剤としての作用も持つ。また、デンプン類では、崩壊剤としての性質を持つように、複合した機能を持つことが多い。さらに、従来は主に増量剤として使用されていた乳糖についても、流動性、成形性を改善した造粒乳糖では、直接打錠用賦形剤として用いられる3)。
結合剤は、主成分の薬物と賦形剤などの混合粉体に溶液または、粉末で添加することにより、結合力を与え、成形するために用いられる。一般的には、剤形の保持や、製造工程や輸送時での破損を避け、機械的な強度を高めることを目的に用いられる4)。
崩壊剤は、錠剤が水に濡れ、もとの一次粒子までに崩壊・分散させ、体内の消化管内での吸収を促進させる役割をもつ添加剤である5)。
滑沢剤は3つの働きを持っており6)、1つ目は粉体圧密時の摩擦低下、2つ目は粉体の流動性改善、3つ目が打錠時における臼および杵への付着防止である。
2.標準処方7)
錠剤の硬度と崩壊は2大特性といわれていて、これらの性質は相反するものであるが、製剤の製造、流通過程での衝撃に対する抵抗性、あるいは生体に投与された場合に消化管内で速やかに崩壊し、薬物が溶解されることを要求される。そこで、硬度と崩壊の良いバランスが必要となる。
図1薬物の崩壊性、成形性を考慮した標準処方
図1は、平井真一郎著、「<イントロダクション>固形製剤における処方設計の重要性」
薬剤学,68(4)275-280P(2008)、の図3 薬物の結合性、崩壊性を考慮した標準処方(277P)を転載した。
図1に示すように、成形性と崩壊性(溶出性)の組合せとして4つの型に薬物の性質を分類しておけば、性質に応じて標準処方が適用できる。すなわち、成形性も崩壊性も比較的良好である場合には、最も単純な処方で錠剤をつくることができる。また、薬物の含有率が小さい場合にも薬物の性質によらず単純な基本処方で錠剤化が可能である。成形性が良くない薬物では、成形性を改善するために結合剤の増量、または新たに結合剤を添加した処方が用いられる。この場合、湿式造粒法では結晶セルロースのような結合剤を混合時に添加するとよい。造粒時に加えられる結合剤は、一般的に水溶性であることから結合剤を増やすと崩壊性が悪くなるためである。一方、成形性は良好であるが、崩壊性に問題がある薬物では、単純な基本処方に崩壊を促進する目的で、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウムといったスーパー崩壊剤などが加えられた崩壊性を考慮した処方が用いられる。また、成形性も崩壊性も共に、良くない薬物については、結合剤を増量、または新たな結合剤を添加し、さらに、スーパー崩壊剤などが加えられた処方が用いられる。
このように、薬物の性質によって大きく4つの処方型に分けることによって、処方化検討は合理化され、検討期間は大幅に短縮される。この標準処方は製造法と密接に結びついており、製造法が異なれば当然標準処方は異なる。
2ページ中 1ページ目
コメント
/
/
/
この記事へのコメントはありません。
コメント