はじめまして+製薬業界と品質システムとコンピュータ【第2回】

先月は自己紹介と今後の寄稿内容について長々と述べてしまいましたので、今月からは、皆さんの実業務に沿った、少しでもお役に立つ情報を提供していきます。
これから2回は、コンピュータ化システムバリデーション対応(以下、CSV対応)を、IT屋の目線で解説します。『CSV対応とは何ぞや』から、『対応に臨む際のポイントは?』までをお伝えし、少しでもコンピュータを使った業務改善の可能性を感じて頂ければと考えていますので、お付き合いください。

先ずは導入編ということで、今回は『そもそも、CSV対応って何?』という部分から、迫っていきたいと思います。

今回は、初級編(初心者向け)になります
そもそも、CSV対応が何者なのかを知っておかないと、対応のしようもありません。なので、理解を深める為にも先ず、こういった略語は日本語に意訳してみましょう。
CSVの本名は【Computerized System Validation】となり、日本語訳は【コンピュータ化システム適正管理】となります。厚労省から2012年に出されたガイドラインですね。文字の切り方としては【コンピュータ化システム】と【適正管理】となり、更にこれを判り易くすると、『業務の仕組み(システム)をコンピュータで置き換える(コンピュータ化)場合の、適正管理』となるかと。少し判り易くなりましたか?
ようは、“業務でコンピュータを使うなら、適正に管理しなさいよ”ということですね。

流石に砕けすぎですね。

こう聞くと、『“業務でコンピュータを使う”なんて今の社会では当たり前なことに対し、厚労省がわざわざガイドライン作っている?』と驚かれる方もいるかもしれませんが、これには、『医薬品製造は、定められた手順に従い、決められた品質を必ず確保しないといけない』という絶対の目的に対し、『便利だからコンピュータは使ってるけど、どのように動いていて/動いているから問題はない、とは専門家じゃないのではっきり言えません(多分大丈夫でしょ?)』ではダメだ、ということです。そんなことで、医薬品の品質に責任が取れるんですか、と。
ですので、CSV対応を行うということは、『自分たちが利用するコンピュータの特性を把握して、医薬品の品質に問題が無いことを確認した上で、コンピュータを便利に活用する』ことになります。使う道具は理解して使いましょうね、ということですね。
ソフトウェア会社が作ったから大丈夫、ではなく、自分達で評価し問題無いことを確認したから大丈夫、という状況で使いましょうと言っているわけです。
当たり前のことの様で、意外と盲点でもあります。コンピュータは正常に動いて当たり前ですが、それはどう動くかを理解しているかどうかにかかってくるからです。コンピュータも、あくまで道具の一つ。使い方や特性を間違えてしまうと、正常に動かないどころか、意図しない動きで人様を混乱させてしまうこともあります。

判らないからこその、【ガイドライン』です
我々のようなコンピュータソフトウェア(以下、ソフトウェア)を開発している企業の人間であれば、自分たちが作ったソフトウェアの特性(癖)を理解し、問題ないことを評価することは可能です。では、皆さんのようなソフトウェア開発が本業ではない方々が、自分たちが使うソフトウェアを理解し評価するには、どのようにすればよいのでしょう。
このような課題を解決するために、今から9年前に出されたのがこのCSV対応ガイドラインとなります。CSV対応の手引書ですね。因みに、ガイドラインであってルールではないので、『このガイドラインに示した管理方法は標準的な例を示したものであり、これに代わる方法で、それが同等又はそれ以上の目的を達成できるものである場合には、その方法を用いても差し支えない。』と書かれています。
厚労省からのガイドラインにしては文章量も少ないので、全部読んで理解することをお勧めしますが、今日は簡単解説に終始したいので、特に重要と考える2点だけ、抜粋して解説します。

製品品質に対するリスクアセスメント
CSV対応の根幹が【医薬品品質の維持担保】である以上、この考えが一番重要になると考えます。これは、ガイドライン内に【作成すべき文書】の一つとして挙げられています。『今回検討するコンピュータ化システムが、製品品質に対してどれほどのリスクを及ぼすか』を徹底的に評価することを指します。リスクを洗い出し、評価し、製品品質に影響は(極力)及ぼさないことを事前に評価し、文書化しておくことが必須となっています。下記の図は、これから導入するコンピュータの特性と業務の特性からリスクを発見し、頻度と影響からマトリクスに落とし込み、抑えるべきリスクを視覚化する手法になります。
 
とはいえ、品質への影響度と言っても、どのようなものがリスクとしてあるのか、想定が難しいのも事実です。そんな時は、ソフトウェア開発企業を頼ってください。
皆さんが持たれている、品質に関する業務の知識と、ソフトウェア開発企業が持つソフトウェア自体の特性に関する知識をクロスさせることで、気を付けるべきリスクが炙り出されてくるはずです。
 

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