「打錠とは」【第1回】
はじめに
高い品質の錠剤をつくるには、賦形剤の選択、原薬と賦形剤との比率、そして混合、造粒、打錠などのプロセス条件を最適化することが課題である1)。製造プロセスにおいては、造粒工程でどのくらいの造粒度(造粒状態)とするかで、錠剤品質はある程度まで決まってしまうが、さらに、その造粒物をどのくらいの滑沢度(滑沢剤の混合状態)で滑沢剤混合するか、そして、その打錠用顆粒をどのような打錠条件で打錠するかで最終的な錠剤品質が決まる2)。また、錠剤化においては、原薬の特性に基づいて、処方および製造方法を選定する必要がある。MCS(Manufacturing Classification System)は、原薬の特性に基づいて、適切な製法を選択するための考え方に基づいた製造方法の分類システムで近年注目されている3)。MCSとは、原薬の平均粒子径および分布、粒子形状、見掛け密度、流動性、製剤中の含量、吸湿性、安定性などの要素に基づいて、適切な製造方法を選択する分類システムである。Class1:直打打錠、Class2:乾式造粒、Class3:湿式造粒、Class4:その他の技術。Class1が最も簡素な製造方法で、Class1からClass3に進むにつれ、製造工程数が増えて複雑になり、通常は製造コストが高くなる。逆に、原薬の好ましくない物理的特性に関しては、Class1からClass3へ進むにつれ、各工程の対応能力が高まる。
本連載の「打錠とは」において、【第1回】では、錠剤の製造法、打錠を円滑に進めるための要素、打錠工程で錠剤物性に影響する因子について、【第2回】は、錠剤に用いられる添加剤とその目的、標準処方と直接打錠法および湿式打錠法での賦形剤の選択について、【第3回】は、打錠障害(キャッピング、スティッキング)とその対策および打錠シミュレーター(圧縮成形プロファイル)について、そして【第4回】では、打錠工程におけるトラブルとその対策および打錠工程のスケールアップとしての総圧縮時間(動圧縮時間、圧縮停滞時間)、そしてトラブル事例紹介について解説する。
1.打錠とは
打錠は、金型を用いて粉粒体を圧縮することによって、成形物を製することで、一般的に錠剤は、ロータリー打錠機によって生産される。
ロータリー打錠機は、「充填工程」「秤量工程」「圧縮工程」「排出工程」の4つの工程の基本サイクルで連続的に行なわれる4)。「充填工程」は、打錠用粉粒体を臼内へ充填する工程で、「圧縮工程」は、充填された粉粒体を臼内で上杵と下杵によって圧縮する工程、そして、「排出工程」は、その圧縮された粉粒体、錠剤を取り出す工程である。充填、秤量工程では、攪拌フィーダ内で、臼内に充填される粉粒体の重量を充填レールの高さ位置を上下させることによって調整する。圧縮工程では、予圧と本圧の上下ロールによって充填された粉粒体を圧縮する。そして排出工程では、押し上げレールと製品の取り出しダンパを配置し、錠剤を排出する5)。
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