【第4回】今、求められるQA部門の体制の構築について

前回に引き続きQA部門の存在について。
3 製造所、QA人員の確保の考え方
1や2で示したように製造やQC部門のみならずQA部門においても適切な人員を確保しなければならないことは認識いただけたかと思う。
ただ、具体的にどの程度、確保したら良いのか、ということになろう。
ここで令和4年1月31日に厚生労働省医薬・生活衛生局(現・医薬局)監視指導・麻薬対策課から示された「医薬品の製造業者における製造・品質管理体制について」という通知をご紹介させていただく。
この通知の冒頭では「(改正)GMP省令でGMP業務を適切に実施する人員を確保しなければならないとされているが、昨今の品質問題の原因として、その人員配置がされていなかったことが挙げられているため、日薬連から「製造所における人員確保の考え方」が示された。」という内容が記載されている。
また、日薬連では「製造所における人員確保の考え方」を参考に“現在の人員確保状況の確認”、“必要人員の見直し”、“(足りない場合、特に)継続的な人員確保等に向けた計画的対応”などを傘下の企業に依頼するとされている。
すなわち、この考え方をベースにしながら人員の確保状況を常に把握し、差分がある場合、対応することや、将来的に人員が足りない状況にならないよう管理していくことを求めていると考える。
ここで、QA部門の人員確保の考え方について上記通知の中身に触れていきたいと思う。
医薬品製造所における人員確保の考え方としては、人員1人当たりの参考年間品目数、ロット数の記載と総人員数に対する品質部門、その中でもQA部門の参考比率が示されている。
まず、人員1人当たりの参考年間品目数、ロット数であるが、QA部門として品目数は、一人当たり“18品目未満”、ロット数は、“331ロット未満”となっている。
また、参考比率であるが総人員数に対してQA部門は“5%以上”とされている。
これからするとQA部門だけの考え方であるが、例えば、総勢100名が所在する製造所において、QA部門には5名以上が配置されており、また、その製造所で90品目(5人×18品目)未満かつその品目の製造が年間1655ロット(5人×331ロット)未満であれば、この考え方に沿っているとなる。
ただし、この考え方を示す文書の中には「この考え方を参照し、自製造所の状況(…)も踏まえ、自製造所の人員が確保されているかどうかの確認をお願いいたします。また、その際には、考え方に示されている数値等を満たしていることのみをもって人員が確保されていると判断されることがないよう、ご注意願います(…業務停止処分を受けた製造業者の中に、考え方に示された数値等を満たしていた製造所もありました)。」と記載がある。
すなわち、この考え方に単に合っているから、自社は大丈夫だ、と安易に判断しないようにということを示している。
一方で、「考え方に示された数値等を満たさない場合でも、自製造所での状況を踏まえ、業務が適切に実施されていることが説明されれば、人員が確保されていないと判断されるものではございません。」という記載もあり、この考え方より人員が少なくても、当然許容される場合もあるということも示している。
医薬品製造所といっても様々である。
当然、製造所人員・規模、シフト(日中のみ、夜勤あり、三交替など)、製造販売業者数(多くなればなるほどルール・やりとり等が増加)、品目の種類(原薬か製剤か、剤形などの違い、生物由来品、無菌医薬品かなど)や数、製造や品質管理各工程の複雑さ(例、無菌であれば最終滅菌か無菌操作かなど)、外部委託の状況(原料等製造を含む。多いほど、外部委託行者として管理対象が多くなる。)、設備の状況(老朽化等が激しいほど管理業務量が増える。)、自動化の程度(製造・品質管理や文書・各種イベントの自動化・コンピュータ管理化など)などの違いから、QA部門も含めた製造所の必要な人員は一概に示すことは難しい。
そのため、この考え方を参考に、製造所は自らの状況を確認すること、状況把握やそれに伴う適切な人員の確保が出来ているか、もし出来ていない場合は、人員を確保するなどの一連の活動を継続することが勧められている。
この人員確保の考え方を参考とし、製造所の何がリスクで、何が他の製造所などよりリスクが低いのかを踏まえて自身の製造所において総数がどの程度必要なのか、製造部門、QC部門そしてQA部門に対してどのような人員配置していくのかを考えていただきたい。
そして、このような人員配置については、改正GMP省令でいうところのマネジメントレビューのインプット及びアウトプット事項になる。
マネジメントレビューにおいて、この通知も参考にしながらその時点における製造所の人員配置と業務運営状況をインプットし、責任役員含めて製造所として現状の人員配置が業務に対して妥当か、妥当でなければ喫緊でどうすべきか、将来的にはどうしていくべきかをアウトプットし、マネジメントレビューの記録に記録していただきたい。
当然、GMP調査等で調査当局はこの記録を確認し、そして記録に記載されている内容が現状を踏まえて喫緊及び将来を踏まえた対応内容が妥当でなければ指摘をされることも想定されるため、注意いただきたい。
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