最新コスメ科学 解体新書【第11回】

コスメと手触り①

 私事ですが、日本油化学会から「工業技術賞」という賞を頂きました。しっとり・さらさら・べたべたなど、ヒトが感じる多彩な手触りを評価する装置を開発したこと、そしてそれが化粧品とその原料を開発するために役に立った、ということがその受賞理由でした[1]。9月に行われた受賞講演には一緒にシステムを開発した研究者や研究室の学生、研究仲間たちが集まってくださって、楽しいひと時となりました。

 しかし、化粧品と手触りが何でつながるんだろう??? と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか? ヒトを清潔に、健康に、そして美しくするのが化粧品だとすれば、皮膚や毛髪をケアする成分や光学特性に優れた顔料を探索したり、それを組み合わせた製剤を開発することこそが化粧品研究なのではないか、ということです。

 実は、ヒトがモノに触れた時に感じる触覚は、多くの化粧品メーカーで長年研究が進められており、資生堂・花王・メナードなどのわが国の化粧品業界をリードする各企業から研究成果がつぎつぎに報告されているのです[2-4]。

 これらの企業はなぜ触覚に関する研究を進めてきたのでしょうか? この疑問に答えるためには化粧品の価値はどのようにして認識されるのか、ということを考える必要があります。ヒトはスキンケアやヘアケアをした時にどのようにしてその効果を実感するのか、考えてみましょう。まず、鏡を通して皮膚や毛髪を見て、そして指で触れるのではないでしょうか? ヒトは視覚・触覚・聴覚・嗅覚・味覚からなる五感を通して情報を獲得し、自分のおかれた環境や自身の状況を認知します。特に自分の体の状態を認知し、身体性を確認する上で触覚によって獲得される情報は極めて重要や役割を果たしているのです[5]。つまり、ケアの効果やよさが実感される化粧品を開発するためには、ヒトが自分の皮膚や髪の毛に触れた時に感じる触覚をセンシングし、これをコントロールすることができることが求められているのです。

 

 

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