ラボにおけるERESとCSV【第118回】
FDA 483におけるデータインテグリティ指摘(88)
7.483における指摘(国内)
前回より引き続き、国内企業に対するFDA 483に記載されたデータインテグリティ観察所見(Observation)の概要を紹介する。
■ TTTT社 2023/5/19
施設:製剤工場
■ Observation 1
処方、原材料テスト仕様、製品テスト仕様、テスト結果、ロットコード、および有効期限の入力と維持に使用されているERPソフトウェアがバリデートされていない。また、このERPは製品の分析証明書(COA)作成にも使用されている。このERPソフトウェアは2021/10/15にベリファイされたが、貴社特有の用途や要求を満たすことが評価されていない。したがってこのベリフィケーションはバリデーションの要件を満たしていない。
★解説:
ERP(Enterprise Resource Planning:企業資源計画、統合基幹業務システム)により処方、原材料テスト仕様、製品テスト仕様、テスト結果、ロットコード、および有効期限の入力と維持、製品の分析証明書(COA)作成を行っている。このERPソフトウェアは2021/10/15にベリファイされたが、貴社特有の用途や要求を満たすことが評価されていないとのことである。これは、設定によらず実現される基本機能は検証されているが、設定により実現される「処方、原材料テスト仕様、製品テスト仕様、テスト結果、ロットコード、および有効期限の入力と維持、製品の分析証明書(COA)作成」などの機能は検証されていないということであろうと思われる。
標準製品開発において基本機能を供給者が適切に検証した記録があれば、その記録の確認を実施したことをもって設定によらず実現される基本機能の検証とすることでよい。一方、「処方、原材料テスト仕様、製品テスト仕様、テスト結果、ロットコード、および有効期限の入力と維持、製品の分析証明書(COA)作成」などの機能はユーザーごとに特有であり、ユーザーごとの様々な設定の組み合わせにより実現されるものであり、標準製品の開発段階で検証できるものではない。
市販標準ソフトウェアはユーザー個々にプログラム開発は行わないが、各ユーザー固有の設定として以下の3種類がある。
使用時のパラメータともよばれ、実使用時にオペレータが設定もしくは投入するパラメータである。
目的とする機能が実現されるようソフトウェアの構成を決める設定であり、ユーザーごとのシステム構築段階において設定しバリデートする。構成設定を行ったシステムはソフトウェアカテゴリ4(Cat 4)となる。
各ユーザーのシステムに固定的に設定しておく以下のようなパラメータであり、その変更は権限者のみに限定しておく。
・セキュリティ設定 ・権限設定 ・ネットワーク設定
・警報機能設定 ・入出力機能設定 など
ユーザー固有の固定設定により実現される機能をバリデートした後は、一般オペレータは固定設定を変更してはいけない。
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