厚労省「コンピュータ化システム適正管理ガイドライン」の要点(19)

2013/10/28 施設・設備・エンジニアリング

 本連載では厚労省から平成22 年10 月に発出されたコンピュータ化システム適正管理ガイドライン(以下、ガイドライン)をできるだけ分かりやすく解説してきた。ガイドラインの解説は前号で完了となったが、今回と次回の2回に渡って新ガイドラインと同時に発出された「医薬品・医薬部外品製造販売業者等におけるコンピュータ化システム適正管理ガイドラインに関する質疑応答集(Q&A)」の中から、特に重要なものについて解説を加える。
 
「医薬品・医薬部外品製造販売業者等におけるコンピュータ化システム適正管理ガイドラインに関する質疑応答集(Q&A)」についての解説(1)
 
問2
「1.2 コンピュータ化システムの取り扱い」でこのガイドライン施行日以前に開発、運用が開始されているシステムであって「コンピュータ使用医薬品等製造所適正ガイドライン」に示された方法又はそれに代わる方法で開発、検証が行われていないシステムについては、当該システムの適格性を確認する必要があるとされているが、どのような方法で実施すべきか。
 
回答2
適格性を確認する方法として、当該システムの開発時の仕様書などの文書類や記録類に遡って、その適格性を検証する方法や、現在の使用目的に適合した要求仕様やそれに準じる文書との適格性を確認する方法等が考えられるが、適格性の確認にあたっては、現在の運用における記録類の照査や定期的レビューの結果を利用してもよい。
なお、使用目的に適合した要求仕様やそれに準じる文書とは、例えば、当該のコンピュータ化システムに関する「標準操作手順書」や、そのコンピュータ化システムが適用される製造プロセスに関する製造指図書等が考えられる。これらの文書に基づいて適格性を検証する場合は、この両文書を合わせて要件を確認するなど、検証項目に漏れのない様な配慮も必要である。
 
解説
 「Retrospective validation」(回顧的バリデーション)に関するQ&A であり、新ガイドラインの大きな特徴となっている要件である。本要件はPIC/S ガイダンスとの整合性のために盛り込まれた経緯がある。PIC/S ガイダンスでは次のように要求している。
 
16.製薬企業は,バリデーションの目的に対しては不十分にしか文書化されていない既存のコンピュータ化システムの継続的な使用を,正当なものと証明することが求められる。
この中のある部分は履歴的な確証に基づくかもしれないが,しかし、多くの部分は,再定義(re-defining), バリデーション文書の作成,アプリケーションを予測的にバリデートすることおよびGMP に関連したライフサイクル管理を導入することである。
 
16.1 非常に多くの既存のシステム(legacy systems)は,満足かつ信頼性高く動作しているかもしれないが,しかしながら,それらをバリデーション要件から除外するものではない。取られるべきアプローチは,バリデーションと再適格性確認試験(requalification)の確証を提供するために,そのシステムの回顧的な文書化と情報を提供することである。
GxPs は,もう何年もの間,コンピュータ化システムのバリデーションを要求してきた。それゆえ,予測的バリデーションの確証が不足していることは、多くの規制当局によってGxPs からの深刻な逸脱と見られることに注意すべきである。
 
 規制当局は予測的バリデーションの実施を求めていることから、回顧的バリデーションに関する指針は発行されていない。このため回顧的バリデーションの取り組みに対する指針らしきものがほとんど無いのが実情である。唯一、GAMP Forum がGAMP GPG(Good Practice Guide:実践規範ガイド)の一環としてISPE の機関紙に投稿した記事がある。「The Validation of Legacy Systems」を参照することをお勧めする。(ISPE の出版物からの引用は困難なため省略)

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執筆者について

荻原 健一

経歴 株式会社シ―・キャスト 代表取締役社長。
1975年(株)横河電機製作所入社。
分散型制御システム(DCS)の開発/ マーケティング担当。その後、石油・化学のSEを経て、医薬品向けシステムエンジニア。「全社Part11プロジェクトリーダ」、医薬システムコンサルティング部長 等。
2006年から(株)野村総合研究所 ヘルスケア事業戦略研究室。上席コンサルタント 等。NRI認定ビジネスアナリスト。
2011年7月より現職 。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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