製薬事業所のペストコントロール【第5回】
査察・監査への対応
ー査察・監査に於ける指摘事例
海外当局による査察(GMP調査)や取引先による監査(GMP/GDP)での指摘は、製薬事業所にとっては悩ましい指摘であると同時に、構築すべきペストコントロールプログラムの在り方のヒントを示してくれる。前回に続き、これまでの主な指摘例を事例解説しながら、ペストコントロールプログラムの在り方を考えていきたい。
ケース④ 昆虫捕獲設備のメンテナンス不良を起点に指摘を受けた事例
査察官の指摘:清浄区域に隣接する区域に配置した電撃殺虫器の昆虫類捕獲ゼロを根拠にペストコントロールプログラムが適正であることを工場側は主張しているが、当該の電撃殺虫器が故障していることから、主張の根拠が成立していない。
製造所内に昆虫類の調査・捕獲目的で配置しているトラップ類の保守、或いは適切な機材選定に関連する指摘である。これは査察官がサイトツアー時に、ドライバー状の金属棒を用いて電撃殺虫機が機能しているかどうかをテストした結果、当該区域に設置された電撃殺虫器の内の数台の故障が判明したことを起点に、受けた指摘である。
※電撃殺虫機とは、昆虫類が好む近紫外光源でおびき寄せ、電流が流れる電撃格子におびき寄せた昆虫類を接触させて電撃のショックで殺虫する装置である。コンビニエンスストアの外やゴルフ場などで見かけられた方もいるであろう。この装置は全体が金属製であるため、滅菌が必要となる粘着機材を用いた捕虫装置よりも妥当であるとの判断で、製剤事業所内で採用している企業がいくつか存在した。
電撃殺虫器は上述の滅菌上のメリットはあるものの、電撃格子に通電していること(故障していないこと)を検証するには、ドライバーのような金属棒を使って電撃格子に接触させるテストを日常的に実施する必要があり、そうしないといつから故障していたのかも分からない特性を持つ装置である。この事例では査察官が指摘するまで故障に気付かず、「昆虫類捕獲ゼロ」の根拠が崩壊した。ペストコントロールプログラムに於いて採用する装置は、そのの特性をよく理解した上で採用し、検証プログラムを検討する必要があることを物語っている。
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