厚労省「コンピュータ化システム適正管理ガイドライン」の要点(14)

2013/05/13 施設・設備・エンジニアリング

4.新ガイドラインとその解説(第13回の続き)

 新ガイドラインにおける重要な項目について以下に説明を加えた。より詳細な解説については日薬連から発行される解説書を参照して頂きたい。
 
6. 運用管理業務
6.3 保守点検事項の実施
運用責任者は、運用管理基準書及び標準操作手順書(以下「運用管理基準書等」という。)に基づき、次に掲げる業務を行うものとする。
(1) 担当者に保守点検を実施させ、その結果を記録し、保管すること。
(2) 保守点検の記録により保守点検管理が適切に行われていることを確認すること。
 
 コンピュータ化システムにおける保守点検の原則はサプライヤから提供される保守マニアルや点検マニアルなどに基づいて実施することになる。これらの取り組みはシステムごとに、あらかじめSOP(標準操作手順書)に記載しておく。特にPLC等のシステムが組み込まれた機械や装置は日常的に実施する点検項目などもあり、これらを適切に実施しないとシステムに影響を与えることも考えられる。また、定期的に実施する点検や補修があれば、それらを確実に実施しなければ期待通りに機能しないこともある。
 保守点検の頻度については、コンピュータ化システムの種類や規模、あるいは過去の実績等から可能な限り科学的に設定し、それぞれのコンピュータ化システムのSOPに規定する。
 保守点検や設備保全における一般的な考え方としては、設備の故障停止等の有害な性能低下が発生してから修復を行う保全方法である。コンディションベースド・メンテナンス(Condition Based Maintenance:CBM)と呼ばれているが、コンピュータシステムのハードウェアのメンテナンスはこの取り組みが多い。近年では定期的な点検を通じて性能劣化を把握し、早期に復元処置を行う予防保全の考え方を取り入れたタイムベースド・メンテナンス(Time Based Maintenance:TBM)が実施されているケースも増えている。
 一方、ソフトウェアはバリデーションが行われていればトラブルは発生しないはずであるが、基本機能やアプリケーションパッケージそのものに不都合なことがあったりすると、システムトラブルとなる場合もある。また、検証時に全ての異常の組み合わせでテストする事が不可能なケースもあり完璧とは言い切れないのが実情である。
 ソフトウェアの保守についてはJISX 0161:2008 によると是正保守(corrective maintenance)や緊急保守(emergency maintenance)など6つの区分が定義されている。
 保守点検を専門業者に委託する場合も多いが、この場合は保守契約(Service Level Agreement :SLA)を締結して、保守期間、サービス体制、対応窓口、作業内容、対応時間帯等についてあらかじめ定めておくことが必要である。

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執筆者について

荻原 健一

経歴 株式会社シ―・キャスト 代表取締役社長。
1975年(株)横河電機製作所入社。
分散型制御システム(DCS)の開発/ マーケティング担当。その後、石油・化学のSEを経て、医薬品向けシステムエンジニア。「全社Part11プロジェクトリーダ」、医薬システムコンサルティング部長 等。
2006年から(株)野村総合研究所 ヘルスケア事業戦略研究室。上席コンサルタント 等。NRI認定ビジネスアナリスト。
2011年7月より現職 。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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