厚労省「コンピュータ化システム適正管理ガイドライン」の要点(12)
4.新ガイドラインとその解説(第11回の続き)
新ガイドラインにおける重要な項目について以下に説明を加えた。より詳細な解説については日薬連から発行される解説書を参照して頂きたい。
5. 検証業務5.4 運転時適格性評価(OQ)検証責任者は、コンピュータ化システムが運転時において、機能仕様等に示された機能及び性能を発揮することを確認するため運転時適格性評価を実施する。5.4.1 運転時適格性評価の計画に関する文書の作成検証責任者は、運転時適格性評価の計画に関する文書(以下「運転時適格性評価計画書」という。)を作成するものとする。運転時適格性評価計画書には、原則として次の事項を記載するものとする。(1) 運転時適格性評価の対象となる文書名(2) システムの運転環境における機能の確認方法(3) 運転時適格性評価における判定基準(4) スケジュール(5) 責任者及び担当者の氏名5.4.2 運転時適格性評価の実施(1) 検証担当者は、運転時適格性評価計画書に基づいて評価を実施し、その結果を記録するものとする。(2) 検証責任者は、運転時適格性評価の結果の適否を判定するものとする。5.4.3 運転時適格性評価の報告に関する文書の作成検証責任者は、運転時適格性評価の報告に関する文書(以下「運転時適格性評価報告書」という。)を作成するものとする。運転時適格性評価報告書には、原則として次の事項を記載するものとする。(1) 運転時適格性評価の対象となる文書名(2) 評価結果と是正措置(3) 責任者及び担当者の氏名5.5 性能適格性評価(PQ)検証責任者は、コンピュータ化システムが稼働時において、要求仕様等どおりに機能し、性能を発揮して運転できることを確認するため性能適格性評価を実施する。5.5.1 性能適格性評価の計画に関する文書の作成検証責任者は、性能適格性評価の計画に関する文書(以下「性能適格性評価計画書」という。)を作成するものとする。性能適格性評価計画書には、原則として次の事項を記載するものとする。(1) 性能適格性評価の対象となる文書名(2) システムの稼働時における機能及び性能の確認方法(3) 性能適格性評価における判定基準(4) スケジュール(5) 責任者及び担当者の氏名5.5.2 性能適格性評価の実施(1) 検証担当者は、性能適格性評価計画書に基づいて、性能適格性評価を実施し、その結果を記録するものとする。(2) 検証責任者は、性能適格性評価の結果の適否を判定するものとする。5.5.3 性能適格性評価の報告に関する文書の作成検証責任者は、性能適格性評価の報告に関する文書(以下「性能適格性評価報告書」という。)を作成するものとする。性能適格性評価報告書には、原則として次の事項を記載するものとする。(1) 性能適格性評価の対象となる文書名(2) 評価結果と是正措置(3) 責任者及び担当者の氏名
OQとPQの取組みはCSVに限らず構造設備等の適格性評価においても企業で少しずつ異なる場合もある。下記はある製薬企業におけるOQ、PQ、PVの考え方である。
OQについては、OQ-1とOQ-2の2段階で実施し、OQの前半は空運転、水運転を基本とした検証、後半で初めてプラセボによる検証としている。このように明らかに2段階と規定してない場合でも、初めは空運転、水運転でテストを行い、その後プラセボで実施すというケースは少なくない。
一方、日米欧でGMPのハーモナイズを検討しているICHでは、原薬GMPガイドライン(ICH-Q7)においてOQ、PQを下記のように定義している。
-運転時適格性評価(OQ):据付け又は改良した装置又はシステムが予期した運転範囲で意図したように作動することを確認し文書化すること。-性能適格性評価(PQ):設備及びそれに付随する補助装置及びシステムが、承認された製造方法及び規格に基づき、効果的かつ再現性よく機能できることを確認し文書化すること。
このICHの定義から考えるとOQは「予期した運転範囲で意図したように作動すること」がポイントである。つまり、要求仕様やこれを受けて作成した設計仕様等に基づいて個々の仕様が期待通りに正しく作動すること、あるいはその能力が発揮できることを検証するということになる。
この場合、上限値、下限値でも設計通りに動作するかを一つ一つ確認していくというテストが行われることになる。OQではそのシステムや設備で正しい製品ができるということを求めているわけではなく、要求や設計仕様の範囲で正しい動作が満足出来るかを検証する取組みである。
一方、POの定義で重要な点は「承認された製造方法及び規格に基づき、効果的かつ再現性よく機能できること」である。個々の仕様の検証は既にOQでクリアされているので、PQにおいては、承認された製造方法及び規格に基づいて、そのシステムや設備として正しい動作や機能が実現できるかを検証することになる。OQまではシステムや設備の個別の仕様に着目して検証して来たのに対して、PQではむしろ業務プロセスの視点から正しく業務が行えるかという検証が中心となる。このことからも、OQまでは供給者がイニシアチブを取って実施するケースが多く見られるが、PQはユーザ主体の取り組みが行われる所以である。
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