再生医療系若手技術者のための製造文書作成術【第2回】

2021/05/21 再生医療

 本稿は、これから再生医療に関わる若手技術者の方に向けた、製造文書を書くための具体的・実践的なTipsになっています。初心者の方は勿論ですが、今現在作成に携わっておられる若手の方なら、最後のポイントをチェックしてみるだけでも役に立つように心がけました。
 第2回となる今回は、SOPを使いやすくする具体的なポイントを2点、お伝えします。

【まずはおさらいとSOPの『機能』について】
 最初に、前回のおさらいをさらっと踏まえておきます。
 前回は、SOPを書く前に「これから『誰』に『なに』を伝えるための文書を作るのか、明確に設定しておく」といった前提の話をしました。文書は、相手になにかを伝えるために作るもの。だからこそ、伝わらないと意味がありません。
 と、いうところで、では翻ってそもそもSOPとはどういう文書であるべきなのでしょうか? SOPは製造工程において大変重要な文書ですが、それはこの文書が「製造時の逸脱」を決めてしまうものだからです。逆に言えば、逸脱を決められないSOPは、SOPとは言えません。
 例をあげましょう。「秤量した○gのアスコルビン酸を○mLの緩衝液により次の手順で融解する」という作業があったとします。おそらくここで、○の箇所に適当な数字を入れる方はいないと思います。有効桁数も定めて、適切なアスコルビン酸溶液ができあがるように、明確な値を記載するでしょう。だから、作業時にもしこの数字を読み間違えた作業者がいて、濃度が倍の溶液ができあがったら、それは逸脱です。これははっきりしています。
 では「継代作業後は、およそ70%程度のサブコンフルエントが認められたら、次の継代を行う」は、どうでしょうか。よくある設定ですが、これはコンフルエンシーが80%に至ったらダメなのでしょうか。60%ではどうでしょう? そしてそもそもこの作業、タイムラプスのようなリアルタイムのイメージモニタリングを介していたとしても、培養の作業可能な時間帯に「およそ70%」になってくれるのでしょうか? 50%くらいだと判断した翌日、いきなり90%に至ったりはしないでしょうか?

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執筆者について

鮫島 葉月

経歴 一般社団法人免疫細胞療法実施研究会事務局、株式会社日本
バイオセラピー研究所 事業推進部部長
慶応義塾大学大学院医学研究科(修士)修了後、2008年株式会社セルシードに入社。再生医療に係る臨床用細胞加工物の開発および品質保証を担当し、当時の細胞培養加工施設の運用整備(GMP準拠)に携わる。2012年(株)日本バイオセラピー研究所に入社、再生医療関連法に同社を適応させ、特定細胞加工物の製造許可を取得。新規の製造施設設計と運用構築、文書策定等を行い、年間3000バッチ以上の特定細胞加工物を製造する細胞加工施設の施設管理責任者を担っている。
一般社団法人免疫細胞療法実施研究会においては、研究会事務局として、再生医療等を行おうとする医療機関向けに申請サポートデスクを運営。すでに200以上の計画策定を支援している。
また当該法人にはICTA特定認定再生医療等委員会を設置し、委員会事務局として再生医療等の審査対応を行っている。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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