再生医療系若手技術者のための製造文書作成術【第3回】
「文は短く、研いで、削りだす」
本稿は、これから再生医療に関わる若手技術者の方に向けた、製造文書を書くための具体的・実践的なTipsになっています。初心者の方は勿論ですが、今現在作成に携わっておられる若手の方なら、最後のポイントをチェックしてみるだけでも役に立つように心がけました。
第3回となる今回は、引き続きSOPを使いやすくするポイントとして「文を短くするコツ」をお伝えします。
【SOPの目的に沿った「文」とは】
いきなり「文を短くするコツ」とお伝えしましたが、そもそも何故文を短くする必要があるのか? ここを最初に押さえておきます。
SOPの役割として、作業を標準化する=「製造時の逸脱」を決めてしまうことは、前回述べました。この役割において、1つの作業指示が長いと、作業に逸脱がなかったか確認するのが困難になりがちです。たとえば、
「○○溶液の入った○○mL溶液ボトルから、○○mLのピペットを用いて、泡立てないようにゆっくりと○○mL吸引し、培養フラスコ全面にいきわたるよう流しかける」
このような作業指示ですと、逸脱する可能性のある箇所(確認すべき箇所)は、下線を引いた6か所あることになります。
通常、作業が手順通りに行われたかどうかの確認は、作業者と確認者がペアで行うか、補助システムで補完して行うことになります。確認者が読み上げるにしても、作業指示が画面で表示されるにしても、上記指示は、作業者がぱっと1度で把握するには困難なことが、お分かりかいただけるかと思います。したがってせっかくSOPを作成しても、到底このままMBR(マスターバッチレコード)に反映する、という使用はできないわけです。
上記の使用目的に沿うなら、SOPの記載はできるだけシンプルに、短くしておくに越したことはありません。また、文が短ければ修正する際にも楽です。一部分を変えただけなのに、日本語の前後のつながりが悪くなってしまい、書き直すといった手間は、文が長いとまま生じてしまいます。
このあたりの書き方はプログラムコードを書くコツに似ているかもしれません。冗長なコードはバグのもと、きれいなコードに、余分な文字はないものです。小学生の教科書にあるようなコードは、明瞭であるという点において、とても優れています。
特に今後は、開発時の作業SOPから自動培養装置へ工程を橋渡しする、といった使用場面も考えられますから、「SOP記載=プログラムコード」くらいの簡潔さを想定しておけば、間違いはないでしょう。そもそも、記載が長くて困ることはあっても、短くて困ることは、まずないのですから。
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