医薬品のモノづくりの歩み【第35回】
執筆者関連書籍「医薬品製造におけるモノづくりの原点と工場管理の実践」
医薬品の「モノづくり」と小集団活動(1)
今回から、また連載の内容が変わりまして、「モノづくり」と小集団活動について話をしていきたいと思います。
小集団活動とは、読者の皆さんもご承知のように、現場で起こる様々な問題や課題に対して、その共通する職場や関係する部門の仲間が一緒になって解決に向けて取り組む活動のことで、生産現場から誕生したいわば「モノづくり」の原点と言えるものです。
小集団活動の中には、その進め方が類似していることから、取り上げるテーマによって、いろいろな名称が付けられています。例えば、図1のように、品質のテーマを取り上げた活動はQCサークル活動と呼ばれます。また、設備の安定稼働の課題を取り上げた活動はTPM活動、原価低減や業務効率化を取り上げた活動は改善活動、更に、安全衛生のテーマの場合はKYT活動と呼ばれていますが、いずれも小人数のグループに分かれて活動していくことから小集団活動として捉えることができます。
では、この小集団活動の生い立ちを,日本の多くの企業で古くから取り組まれてきたQCサークル活動が、日本で生まれた経緯を紐解くことによって振り返ってみましょう。1)2)
第二次世界大戦後、日本経済が復興に向かう中、日本製の製品は故障や不良品が多く、‶安かろう悪かろう″の粗悪品と呼ばれる時期がありました。その後、日本からの依頼により、米国のデミング博士が講演するために来日して、管理図や抜き取り検査など統計的手法による品質管理の概念を導入し、その基盤を確立しました。更に、全社的品質管理(Total QC)の考え方が日本に入り、国内の品質管理の指導者によってQCサークルが生み出されました。その活動によって不良品の低減と再発防止が進み、品質が向上するきっかけになりました。その後、貿易の自由化や経済の発展につれて、経営から現場に至るまで組織で問題解決に取り組む全社的なTotal QCを導入する企業が増えていきました。その結果、日本製品の品質が飛躍的に向上して世界的な評価を受けるようになり、日本の品質管理や「モノづくり」そのものに関心が向けられるようになっていきました。このように、日本製品の品質向上に大きく貢献した日本のQCサークル活動は、その他にも、品質第一への現場力(問題解決能力)の向上、顧客満足の向上、QCD改善手段の創出のみならず、従業員の「モノづくり」へのやりがいと一体感の醸成にも大きく寄与することになります。言うまでもなく、医薬品の品質の維持向上においても、GMP管理と共に大きな役割と成果をもたらしてきました。
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