ラボにおけるERESとCSV【第116回】

2024/08/09 施設・設備・エンジニアリング

望月 清

国内におけるデータインテグリティ観察所見を引き続き解説する。

FDA 483におけるデータインテグリティ指摘(86)


7.483における指摘(国内)
前回より引き続き、国内企業に対するFDA 483に記載されたデータインテグリティ観察所見(Observation)の概要を紹介する。

■ RRRR社 2023/3/29
施設:試験受託機関(CRO)

■ Observation 4    
OOSの再テスト手順が不十分である。2022/8/12に実施された定量分析の結果が規格を満たさなかったが、このサンプルを規格を満たすまで4回再テストした。貴社のOOS手順も不十分であり、再テストはX回まで行うことと規定されている。さらに、OOSとなった場合の手順が品質協定に記載されておらず、OOSを異常と記載するのみとなっている。

★解説 OOSにおける再テスト手順
「OOSの再テスト手順が不十分であり、担当者の判断で再テストをX回まで実施できる規定になっていると」との指摘であり、前号のObservation  4 A)と同様の指摘である。OOSとなった場合の手順は下記ガイダンスを参考にするのがよい。

再テストにおけるデータ処理の考え方を以下に示す。

  • ダイナミックデータは電子記録が生データとなるので、電子記録を維持しなければならない
  • プリントアウトだけでは良いとこ取りの再テストを実施していないことを証明するのはむつかしいので、スタティックデータの場合であっても電子記録を維持できるのであればすべての電子記録を維持する
  • OOSとなった初回テストから合格となったテストまでの電子記録をすべて維持する
  • 維持する電子記録には監査証跡を含める
  • データレビュアーは監査証跡を含むすべての電子記録により再テストの正当性を確認し、確認結果を記録する

★解説 FDAのOOSガイダンスの概要
FDAのOOSガイダンスに、OOSの調査を下記フェーズにわけて実施するよう記載されている。

フェーズ I 調査    ラボにおける初期調査
フェーズ II 調査    製造における調査

フェーズ I 調査(ラボにおける初期調査)とは

  • この調査の目的は、OOSとなった原因を確定することである
  • OOSとなった原因を以下のどちらかに切り分ける
    • 測定における異常
    • 製造における異常
  • OOSを理由としてバッチが棄却されたとしても、同一品目の他バッチあるいは他品目にOOS結果が関連していないか調査する必要がある
  • 規制(§ 211.192)は以下を求めている。
    • この調査は記録すること
    • 調査記録には結果とその後の対応を含めること

本ガイダンスの対象はOOS結果であるが、多くの部分はOut Of Trend(OOT)の調査にも役に立つ。

OOS調査は次のように実施すること。

  • 完全に
  • 速やかに
  • 公平に
  • 十分に文書化し
  • 科学的に信頼できるように

ラボにおける初期調査において;

  • ラボデータの正確性を初期評価すること
    • 可能であれば、テスト調製サンプルを廃棄する前に初期評価を行うこと
    • テスト調製サンプルには、混合試料や単一試料を含む
    • テスト調製サンプルがあれば、ラボエラーもしくは機器異常に関する仮定を調査できる
  • 分析におけるエラーが初期評価において見いだせなかった場合
    • OOSフル調査を行うこと (フェーズ II:フルスケールOOS調査)
    • 試験受託機関の場合
      • 初期評価のデータ、所見、周辺資料を製販業者の品質管理部門(QCU)へ伝えること
      • 製販業者のQCUはOOSフル調査を開始すること

 

 

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執筆者について

望月 清

経歴 合同会社エクスプロ・アソシエイツ代表。
1973年山武ハネウエル株式会社(現アズビル)入社。分散型制御システム(DCS)を米国ハネウエル社と分担開発。2002年よりPart 11およびコンピュータ化システムバリデーションのコンサルテーションを大手製薬会社にご提供。2009年より微生物迅速測定装置の啓蒙普及に従事。2014年5月より現職。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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