ドマさんの徒然なるままに【第70話】夏だ、サザンだ、GMPだ!
第70話:夏だ、サザンだ、GMPだ!
久々にヒットソングメドレーのお時間です*1。書いておきながら正直に言います。中身は薄いです。サブタイトルにも何の意味もありません。暑い日々でボーッとする頭を休めて貰おうと思って書きました*2。でも、(個人の感想であって)効果があるかどうかは???です*3。
さて、今回は、本「ドマさんの徒然なるままに」の前身にあたる、PTJ ONLINEでの「GMDPおじさんのつぶやき」を掲載していただいた時代に、筆者が過去に在籍していた会社の部下から「ドマさんの好きなサザンでお願いします。」と要望されていたことを思い出し書きました(ごめん、言われてから6年近く経過している)。ということで、私の好きなサザンオールスターズの楽曲(桑田佳祐の作詞・作曲を含む)に乗せて、品質保証部門のお仕事(以下、QA)に携わる者の心情を綴りたいと思います*4。QA担当の読者にあっては、共感する内容のものがあるかもしれません。古い楽曲が多いことは、筆者が認知症気味で新しい楽曲が覚えられないということでご容赦ください*5。それではスタート!
♪ 勝手にシンドイバッド(bad)
実はGMPをよく分かってもいないのに、なぜか治験薬のQA長を仰せつかり、あたふた。今にして思えば、特命と称して私を指名したCMC所長も各部長も治験薬のGMPを理解できていなかった。特命であり、対象が開発品で海外企業との導入・導出・共同開発ということからすべてが社外秘で他社の知人にも相談できず。GMPもよく分かっていなかったことから、その“しんどさ”も、よほどの不備でもなければ、その“不始末さ(bad)”も気づかないことが幸いした。それでも成長し続けるという“しぶとさ”と“しつこさ”だけは身についたような・・・。そんな“しぶとさ”と“しつこさ”が、現在の筆者を育んだように思える。
♪ 真夏の過失
あれは、2001年の8月第一週のことである。米国導出先から2日間の監査があった。と言っても、前項で述べた治験薬QAの特命を仰せつかって1年にも満たないい頃である。監査1日目の書面調査時、変更管理の話題に。原薬担当者が質問の意味を理解できず、ピントのズレた回答を繰り返し、とうとうオーディターを怒らせた。元々が原薬屋であった筆者、仲介のつもりで、技術的解釈を説明したところ、それがオーディターを逆なでしてしまった。時間が遅くなっていたこともあり、当日はその時点で終了し、翌日に持ち越しとなった。
♪ QAも濡れる街角
前項の続きの話である。導出先による監査であり、ある意味ではお客様である。1日目の監査終了後にはディナーを設定していた。ただ、予想外の展開からディナーはドタキャン。お帰りのタクシーを呼び、玄関でタクシー待ち。オーディターから「お前、ちょっと来い!」と呼ばれる。そこで一喝。「あなたの言っていることは科学的にはそうかもしれないが、あなたはQAであって、技術者ではない。QAならば、GMPの立場でGMPとしての変更管理の話をしろ! あなたはQAとして失格だ!」と叱責された。自分の未熟さもあり何も反論できず。46歳のオヤジ、涙に濡れる*6。
♪ ミス?ブランニュー・ヒデー
筆者が治験薬のQAを仰せつかる以前から、CMC研究所の建物の地下に治験原薬保管庫(常温・冷蔵)が設置されていた。治験原薬製造部門から出荷判定された治験原薬を治験製剤製造部門に渡すまでの間、また海外導出先や共同開発先に出荷するまでの間、さらには多めに製造した余剰量の保管管理のための保管庫に当たるが、CMC全体の企画と管理という意味合いもあって管理部門が保管担当であった。が、1997年に治験薬GMPが規制要件となったことに伴い、温度および出納の管理のために治験薬QAが担当することになった。やることとしては、自動温度記録計のログの定期チェックと出納だけなのであるが、なぜか連休(年末年始、GW、お盆休み)の初日目に温度異常のアラートが出る。このアラート、守衛室に直結しているため、アラートが出ると守衛室から自宅に電話がかかる手順(まだ携帯は一般的に普及していなかった)としていた。しかも、なぜか未明であることが多かった。アラームのリセットは手動のため仕方なく、守衛には「アラームは切ってください。私は電車が動く時間になってから行きます。」と返答していた。後日の調査で判明したが、CMC研究所自体が工場敷地内にあり、連休になるとほとんどの工場の設備が電源を落とすことから、その影響で高圧電流の一部が変圧することによる、ある意味では“誤作動(温度記録から実際の温度には影響なし)”によるものであった。当然、修理したが、朝っぱら(夜明け前?)に起こされたら堪らない。「引き継ぎの際に、そんな話は聞いてないよー!?」と思った次第でございます。
♪ 思い過ごしも指摘のうち
海外導出が一気に増えたことに伴い、Due Diligence監査を筆頭に、海外企業による監査を数多く受ける羽目になった。また、最初の転職は受託製造業者であったため、国内外を問わず、委託先から嫌と言うほどの監査を受けた。進行のパターンは似たり寄ったりなので、相手のオーディターのレベルに合せて対応していたのが実情である(すいません、でも事実です)。ただ、現実には“落とし穴”が潜んでいる。お相手となるオーディターではない。自社の中にある。コレコレは前回の指摘に基づいて改善したことを確認してあるし、当然維持しているはず。と思いきや、前回の確認以降、ほったらかしになっていたり。SOPで取り決めていたチェック回数が実施されていなかったり。QAとしては、マジメにやっていると思っていたのに、現場では必ずしもそうでなかったりすることがある。「飼い犬に手を噛まれる」とまでは言わないが、自身の「思い過ごし」に反省すること頻り(しきり)。CAPAの真髄は一過性であってはいけない。改善は当然のこととして、その改善状態が以後継続されていなければならず、QAとしてその維持を監視し続けなければないないことを思い知らされた。
♪ C調説明に御用心
どこの世界にも調子の良い奴はいる。そんな奴が査察や監査で現場説明や書面調査の応対をする際には、査察官・監査者とのヤリトリに注意を払わなければならない。間違いのない事実を言ってくれている場合は良いが、調子に乗って、「うちではそんなことまでやってないぞー。」といったことまで言ってたりする。応対が進んで話題が細部に入り込んでから矛盾が生じれば、むしろ誤解の元となってしまう。QAとしては、査察官や監査者の質問以上に、身内の説明者の言葉に注意を払うことになる。技術的説明ということもあり、途中介入もできない。特に、海外からの来訪であれば英語でのヤリトリとなる。通訳はいるものの、日本人にありがちな、意味のない相づちとして「Yes, Yes」といった行為。誤解を生むからやめろよ! QAは身内の言動にも注意を払ってるんだよ! 行政による査察は言うに及ばず、民間企業による監査やQP監査だって、うちのGMPのレベルがチェックされているんだからね。それを強く意識して欲しいんですよ。今だから言うが、あんたのせいで、どれだけハラハラさせられたことか!
♪ 気分しだいで指摘しないで
前項と真逆の話である。査察官や監査者も人間、個性がある。異常に固い相手もやりづらいが、中には、あたかも日本観光にでも来たのかと思えるほど、いい加減な者もいる。GMP遵守のチェックと言うより、どう見ても「それって、お宅の好み or 感覚でしょ!」って言いたくなるような質問をし、もっと悪くは、自分の好みを押し付けて来るような奴である。「●●についてのガイドラインがあったはずだ。」と言い張るが、その当該ガイドラインを示すことが出来ない奴。言葉に詰まって「それは、うちのポリシーだ!」として、規制要件を超えた自社要望を求める奴。といった具合である。さすがにその場では口に出せないが、心の中では「お前なー、何しに日本に来たんだよ!」と叫んでいる。「こりゃダメだ!?」と思ったことも少なからずある。ラップアップ終了後ではあったが、「息子にフィギャを頼まれているんだが、どこに行けば買える?」との質問。「お前、ズーッとそればかり考えてたんじゃね?」と思えた瞬間であった。
♪ 愛のつもりの言霊 〜Intentional Spiritual Message〜
QAという立場上、オーディターとして委託先や供給先の監査も数多く経験させていただいた。海外はともかくとして、本邦の委託先・供給先は、コチラがお客様という感覚なのだろうか、一般的には腰が低い。ある意味、指摘の中身も吟味せず、「はい、直します。」という、あまりにも素直に返答なされる。コチラとしては、上から目線で指摘しているつもりもなく、ましてや嫌がらせする気など毛頭ない。少しでも改善・向上を期待して指摘を告げているつもりである。しかも、背景や事情も考慮した上で、「例えば」として改善方法の提案までしている時もある。別に押し付けるつもりはないが、せめてもの思いやりである。逆の受ける立場も数多く経験していることから、指摘された際の気持ちも重々理解できる。QAという立場、「何もなくて当たり前、何かあればお前のせい」とされる。しかも、製造や試験検査そのものについては、それぞれの担当者にシッカリとやって貰わねばならず、そのための説得力も求められる。でも、そんな辛さを知っているからこその指摘だと理解してくれる者は数少ない。あなたに告げている指摘の先には、使用者である患者さんへの想いがあり、そのための製品品質に込めた愛なんじゃないでしょうか。Quality Cultureって、実はこんな指摘せざるを得ない時の想い、受けた際の想いの中から育まれるんじゃないですかねー。格好つけすぎかな? こんなこと書いても、どれだけ同意してくれるんかなー!?
♪ TooNAMI
GMPにランクは無いと思っている。行政サイドでブラックリストがあるかどうかは知らないが*7、それはあくまで“GMPブラック”という意味だと思っている。逆に言えば、普通に運営している製造所であれば、GMPとして問題は無く、回収も含めて製品への品質的影響は無い、良い会社だと思う。悪く言えば、“並み”のレベルかもしれないが、それで十分だと思っている。すべてが“並み”で良い。むしろ“並み”に自信を持って欲しい。筆者の話がウソだと思うならば、自己点検で自社が“並み”かどうかチェックしてみては? 「うちは、すべて“並み”です。」と言い切れるレベルの維持って、案外難しいはずです。
♪ 監査VICTORY
監査受けで一番気になるのは、当然指摘である。その数もあるが、内容によっては、そう簡単に改善対応できないものもある。1に組織絡み、2に設備に関するものであろうか。前者はGMP関連部署だけで済まず、会社全体の組織再編に至る場合もある。後者は次年度予算に組み込まざるを得ないことが多い。逆に言えば、こういった手のかかるものではない指摘、しかも明らかに当方の思いがけない不備レベルであれば、むしろ教えてもらったことに感謝したい気持ちになる(指摘ゼロは現状がベストだとの思い込みを誘発するので、筆者は指摘ゼロが必ずしも良いとは思っていない)。そんな時、心の中ではガッツポース。監査は勝負事ではないので、勝ち・負けは無いが、厄介な指摘もなく無事に終了した際には、対応したQAとして“Victory宣言”をしたい。せめて、自分自身へは「Good Job!」と言ってあげたい。そのくらい許して欲しい。先述のように、QAって、責められるばかりで褒められることが殆ど無い業務なんですから。
さて、いかがでしたでしょうか。以上、サザンオールスターズ、もとい、サンザン・シテキ・オールスターズでした。ちなみに、本話での内容、書き物として多少の修飾はしていますが、すべて実話です。
サザンを要望したTさん、こんなもんで宜しいでしょうか? レベルが段々下がってるってか!? すいません。
では、また。See you next time on the WEB.
【徒然後記】
サザンオールスターズ
サザンオールスターズの「勝手にシンドバッド」がヒットしたのは、大学院修士課程2年の1978年の夏であった。青山学院大学の学生バンドで、桑田佳祐は1歳年下に当たるが、最初に聞いた時には、「ハチャメチャで、なんて曲だ!?」という感想であった。そもそもタイトル自体、私くらいの年齢であれば何となくわかるが、沢田研二の「勝手にしやがれ」とピンクレディの「渚のシンドバット」の合体で、特に意味があるとは思えない。当時は“一発屋”と思いきや、その後もヒット曲を出し続け、今や日本を代表するバンドとなった。今冬には9年振り16枚目のオリジナル・アルバムがリリースされるとか。自分と同年代ということもあるが、アラセブンティになっても頑張っている姿は素晴らしい。私も、もう少し「ドマさん」で頑張ってみようと思う。
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*1:筆者の記憶が正しければ、前回のヒットソングメドレーの話は、第2話「オーディター・ラプソディ」として取り上げた「クイーン特集」以来の2度目かと思います。
*2:(天の声)お前の頭は、いつも休んでいるじゃろーに。
(筆者) あんたに言われたくないわ。
*4:筆者、QAとしては四半世紀(25年)になります。今思えば、色々なことがありました。
*5:音楽って、10代・20代だと数回聞いただけで歌詞を覚えていたりするのが、年齢とともに低下し、50歳を過ぎたあたりからは、複数回聞いているはずなのに何となく聞いたことがあるという記憶しか残らないんですよね。不思議です。
*6:この後どうなったかは、第30話「グッジョブ!」の中で触れています。
*7:米国FDAには“ブラックリスト”があるといった話は聞くが、現実はどうなんでしょうかね? Warning Lettersを複数回発行されている製造所であれば、別にリストアップしなくとも、「ここヤベーぞ!」って分かりますけどね。
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