厚労省「コンピュータ化システム適正管理ガイドライン」の要点(7)

2012/10/22 施設・設備・エンジニアリング

4.新ガイドラインとその解説(第6回の続き)
 新ガイドラインにおける重要な項目について以下に説明を加えた。より詳細な解説については日薬連から発行される解説書を参照して頂きたい。
 
3. コンピュータ化システムの開発、検証及び運用管理に関する文書の作成
製造販売業者等はコンピュータ化システムの開発、検証及び運用にあたっては、あらかじめ、その基本方針等に関する文書(以下「コンピュータ化システム管理規定」という。)を定めるものとする。
コンピュータ化システム管理規定は、原則として次の事項を記載するものとする。
(1) コンピュータ化システムの開発、検証及び運用管理に関する基本方針
① 目的
② 適用範囲
③ システム台帳の作成
④ 基本的な考え方
・ソフトウェアのカテゴリ分類
・製品品質に対するリスクアセスメント
・供給者アセスメント
・開発、検証及び運用段階で実施すべき項目等
・コンピュータシステムの廃棄に関する事項
(2) 開発業務、検証業務及び運用管理業務における責任体制と役割
(3) 開発業務、検証業務及び運用管理業務で作成すべき文書及びその管理方法
(4) 開発業務、検証業務及び運用管理業務の業務完了の確認及び承認の手続き
 
 「コンピュータ化システムの開発、検証及び運用管理に関する文書の作成」はGAMPガイドでは、バリデーションマスタープランやバリデーションポリシーと呼ばれている。厚生省の旧ガイドラインには本要件は無く、新ガイドラインで新たに登場した要件である。タイトルが長いので「コンピュータ化システム管理規定」と略しているが、日薬連CSV検討会ではさらに短く「CSV管理規定」と表現していた。
 「CSV管理規定」は、企業におけるCSVの取組みの基準となるものであり、この管理規定に基づいてプロジェクトメンバーはCSVを実施することになる。新ガイドラインの多くの要件の中で最も重要な要件となっている。
 「CSV管理規定」作成のポイントは、CSVに関わる誰もが同じように取組める内容であることに尽きる。折角、CSV管理規定を作成しても、取組むのが困難であったり、人によって大きく異なったりするのでは作成した意味が無い。
 例えばCSV管理規程に「品質リスクアセスメントを行うこと」と記載されていても、どのような内容で実施したり、どのように評価すれば良いか規定の中に盛り込まれていなければ、担当者は取組めない。CSV管理規定には、具体的な取組みに対する手順や事例(テンプレート)が含まれていないと運用できない。
 次のポイントはそれらを検討する体制である。まずリーダーは出来るだけ上級管理者がなることが望ましい。役員や部長クラスの人がリーダーとして最後まで責任をもって牽引していかないとうまく継続できないケースも見られる。リーダーが直接作成に加わらなくても、重要な局面ごとに打合せに参画したり、その取組みへの重要性を理解することで、検討メンバーのモチベーションも上がる。また、検討メンバーの選定も重要となる。関係する各部門や工場の代表者が参加し「自分たちが作り上げる」という意識を持って取り組むことが大切である。検討メンバーは、打合せの状況や課題を常に自部門にフィードバックしながら、自部門の意見を吸い上げたうえで検討会に臨むべきである。また、これらの取組みは人も時間も掛かることから、検討メンバーを適切にリードする外部のコンサルタントなど専門家の力も効率的な取組みを進める有効な方法である。

 
 
図1.CSV管理規定の作成ポイント

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執筆者について

荻原 健一

経歴 株式会社シ―・キャスト 代表取締役社長。
1975年(株)横河電機製作所入社。
分散型制御システム(DCS)の開発/ マーケティング担当。その後、石油・化学のSEを経て、医薬品向けシステムエンジニア。「全社Part11プロジェクトリーダ」、医薬システムコンサルティング部長 等。
2006年から(株)野村総合研究所 ヘルスケア事業戦略研究室。上席コンサルタント 等。NRI認定ビジネスアナリスト。
2011年7月より現職 。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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