後悔しない設備投資のための経済性評価【第3回】

2015/12/10 施設・設備・エンジニアリング

1. はじめに
 第2回の「経済性評価手法の紹介」では、投資回収期間法、正味現在価値法、内部収益率法を取り上げた。それらの特徴を、表-1に示す。
 いずれの経済性評価指標を使用するかは、投資プロジェクトの性格にもよる。たとえば、稼動期間が長期にわたる設備への投資の場合、資金の時間的な価値を考慮する、純現在価値、あるいは、内部収益率を用いるべきである。
 
純現在価値と内部収益率は、類似した評価手法であり、その使い分けに一般的なルールがあるわけではないが、新規のプロジェクト案件では内部収益率を、既存の設備やシステムのリプレース、改造などの投資案件では純現在価値を評価指標として使用することが多い。これは、新規の投資案件では、投資の検討を進めるかどうかを判断するにあたり、どの程度の収益性があるかをつかんでおくことが重要であり、そのための指標としては純現在価値よりも内部収益率のほうが適しているためである。一方、既存設備改造など、リスクが少ない投資案件では、割引率の決定が企業内で比較的容易にできるため、純現在価値で評価を行うことが多い。
 ただし、複数の代替案の比較を行う場合、内部収益率では投資規模の大小差異を考慮できないため、比較的小規模な投資案を採用する傾向があると考えられる。また、純現在価値の場合、評価期間、投資タイミング等が異なる代替案の比較には向かないといえる。これらのことから、実際には両者を併用し、多面的に評価を行うことが良いといえる。

表-1 経済性評価手法の比較
資本回収期間 PP 純現在価値 NPV 内部収益率 IRR
評価基準 投資額を収入の累積が上回る時期 現在価値で評価した投資期間全体の収支金額 現在価値で評価した投資期間全体の収益率
検討年数 不要 必要 必要
割引率 不要 必要 不要
キャッシュフローの考慮 全期間のキャッシュ
フローを考慮しない
全期間のキャッシュ
フローを考慮
全期間のキャッシュ
フローを考慮
資金の
時間価値
評価せず 評価する 評価する
備考 簡易に計算が可能だが時間価値を考慮していない。国内では、広く使われている。 キャッシュフローと資金の時間的価値を考慮した比較を簡便に実現できる。評価期間、投資タイミング等が同じ代替案の比較に向いている。 検討年数が異なる代替案の比較、および年間利益が期間により変動する場合でも利用可能。割引率を事前に決定する必要がない。

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執筆者について

石井 信明

経歴 文教大学 情報学部 教授。
1959年神奈川県横浜市に生まれる。1984年東京工業大学大学院(経営工学専攻)修了後、日揮株式会社入社。システムエンジニアリング部門にて、主にエネルギー分野、医薬品分野の企業化計画、設備計画、生産系情報システムの企画・設計・導入、プロジェクトマネジメントを担当。その間、米国パデュー大学IE学部客員研究員。2005年より文教大学情報学部に勤務。プロジェクトマネジメント学会理事、情報システム学会理事。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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