医薬品の原材料管理とサプライヤーオーディット【第3回】

2018/02/23 製造(GMDP)

 
これまでの掲載内容
 ■サプライヤーオーディットの要請と選定評価・承認 (第1回)
  1 はじめに
  2 サプライヤーオーディットの必要性と選定評価
  2-1 GMPの適用領域の広がりと供給業者管理
  2-2 サプライヤーの品質リスクマネジメント (第2回)
  2-3 PIC/S・国内GMPに対応したサプライヤーの選定
  2-4 GDPと品質取り決めの要請
 ■サプライヤー管理における受入試験、サンプリング (第3回)
 ■サプライヤーオーディット
  委託先監査(外部監査)とサプライヤーオーディット(供給者監査)
  委託先、供給者との適正な品質契約システムの構築、オーディットの手順
 ■海外サプライヤーへのオーディット手順と評価法
  □包装容被製造施設、原薬、製剤製造所、原料・中間体、試験施設、委託
   輸送業者等への実施例
 ■リスクに応じたサプライヤー管理
  リスクマネジメントの活用によるサプライヤー管理とリスク低減
 
2-4 GDPと品質取り決めの要請
2)GDPの要請
 (第2回掲載分からのつづき)
 こうして連載記事を書いているうちにも、国内発GDPガイドラインの発出が真近に迫っている。
 近年、医薬品の流通過程において発生する様々な問題に対応するため、「医薬品の適正流通基準」(GDP:Good Distribution Practices)が整備されつつある。GMPは医薬品の製造における製造管理と品質管理基準として周知されるが、GDPはGMPの延長線上にありこれを補完するものとして理解される。こうしたGDPが強く要請される背景には、サプライチェーンの全世界隅々にわたる広範な広がりと相まって、医薬品の品質安全を取り巻く様々な課題があげられる。
 平成29年1月17日、奈良県のある薬局チェーンで、ギリアド・サイエンシズのC型肝炎治療薬「ハーボニー配合錠」の偽造品が見つかったことは記憶に新しい。よもや安全管理や保安、警備体制など安心安全を自認する日本において「偽造医薬品」発生かと、耳を疑った人が多いかも知れない。輸送中の温度逸脱や輸送上のトラブルによる品質変動は、バリデーションの不備などよる有る意味不可抗力的な面があるが、計画的かつ故意的に製品をすり替える行為は犯罪の域にある。米国で販売されている全ての医薬品の10%が偽造医薬品(FDA)、そして世界中の偽造医薬品の売り上げが750億㌦(WHO)/2010年とも言われる中、偽造医薬品が消費者のもとへ渡るのを防ごうとしている製造業者にとって、販売業者や再包装業者がインターネットやグレーマーケットに係わることは非常に厄介(困難)な問題である。
 そのような中、医薬品製造業者は、消費者、商標を守るために、特別な包装、アプリケーション、その他の偽造対策の技術を備え、偽造品に対して素早く効果的な対応が必要になって来ている。
 こうした偽造医薬に限らず、様々な課題への直面がサプライヤー(供給者)管理の難しさを浮き彫りにしている。

 ■米国「21世紀の医薬品GMP(cGMP for the 21st Century Initiative)」
  ✓リスクマネジメント・ツールの使用の重視、ICH Q9-10
 ■新医薬品製造販売承認制度
  ✓アウトソーシング,受託,技術移転の本格化
  ✓低コスト外注先、低コスト原材料購入の増加
  開発・承認・市販・製品終結までの一貫した品質保証対策
 ■グローバル化進展 (開発・製造・流通),開発品の多様化
 ■法規制強化と盲点
 ■ジェネリック品との競合<大きな流れ>,少子高齢化
 ■希薄な社会的ミッション、顧客の軽視、自立性欠如、モラルハザード
 ■中国・インド・アジア一部など、Developing Countryへのアウトソーシング,
  受託,技術移転(我が国の製造販売承認制度以降増大)
  ✓低コスト原材料購入に伴う品質リスク増大
  ✓へパリン、エチレングリコール、メタミドホス、メラミン、・・
 ■偽造医薬品の流通(中国、インド、米国、欧州、日本)
 ■欧米、日本
  ✓原材料購入の世界的広がり(ex. ヘパリン製剤)
  ✓低価格原薬の中国、インドなどへの大幅な拡大
 ■企業の課題
  医薬品の製造原価低減のための粗悪な原材料使用のリスク拡大
 
筆者がこの連載記事を書いている間にも、本年度中の日本版GDPガイドラインの発出が秒読み段階にある。医薬品原薬のGDPに関するガイドラインは、医薬品製造に使用される原材料の品質保証を実践する上からも、非常に有益なガイドラインとなっている(図6、7)。


図6 GDPの要請とサプライヤー管理

 
 原材料の供給者管理をいくら適切に行ったところで、適正な流通過程の管理が担保されない限り、医薬品の品質および完全性は到底維持されないことになる。
(原薬のEU-GDPガイドライン,2015年3月19日発)
医薬品原薬のGDPに関するガイドライン
(諸言)
本ガイドラインはヒト用医薬品のGDP に関するEUガイドライン(2013/C 343/01)に基づいている。
・医薬品の卸売販売は、流通経路全般において重要な業務である。
今日の医薬品の流通経路はますます複雑になり、多くの人々が関与するようになってきた。
 本ガイドラインは、卸売販売業者の業務を支援し、偽造医薬品(falsified medicines)が正規流通経路へ流入するのを防止するための適切な手段を定めるものである。
 本ガイドラインを遵守することにより流通経路の管理が保証されその結果、医薬品の完全性が保持される
目的:高水準の品質保証の維持と医薬品流通過程の完全性を保証するため、また、医薬品卸売販売業許可の画一性を推進し、医薬品取引における障害を更に除くため、以下の医薬品GDP ガイドラインが作成された。
(第1章 品質マネジメント)
1.1. 原則
 卸売販売業者は、その業務に関連する責任、プロセス及びリスクマネジメントの原則を定めた品質システムを維持すること。
すべての流通業務の手順を明確に定義し系統的にレビューすること。流通過程におけるすべての重大なステップ及び重要な変更を正当化し、必要に応じてバリデートすること。
 品質システムは当該組織の経営陣に責任があり、そのリーダーシップと積極的な参画が求められると同時に、職員の関与によって支持されるものであること。
1.2.1 品質を管理するシステムは、当該組織の構成手順プロセス及び資源に関する事項を包含するとともに、輸送される製品が、その品質と完全性を維持し、輸送中/保管中に正規流通経路に留まることを保証するために必要な活動に係る業務を含むこと。
1.2.2 品質システムを文書化し、その有効性を監視すること
品質システムに関連するすべての業務を定義し、文書化すること。
品質マニュアルまたは同等の文書化されたアプローチを確立すること。


図7 GDPがグローバルに求められている理由

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執筆者について

高平 正行

経歴 エイドファーマ 代表
NPO-QAセンター 理事 事務局長
1979年塩野義製薬(株)入社。製薬プラントの立上げ、医薬品製造管理者、合成研究等の製造業務を経て、品質保証部へ転出。信頼性保証本部 品質保証部 次長として、GMP統括管理、GQP品質保証業務(出荷判定、逸脱・品質不良、変更管理、苦情・回収)、国内外にある自社製品関連170箇所製造所のGQP/GMP/QMS/CMCの信頼性保証、医薬品・診断薬・医療機器製造所のGQP/GMP/QMS適合性監査などを約10年間統括する。また、医薬品医療機器総合機構一変・軽微変更、製品管理業務、国内外の医薬品品質保証ガイドライン等のカスタマイズ化にも従事する。
2011年12月より(株)エースジャパン 取締役 製品戦略担当。医薬品の原薬、中間体を中心とした品質保証、製造・試験、製造販売管理全般にわたり経営の視点から携わる。
2016年6月より現職。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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