ゼロベースからの化粧品の品質管理【第49回】

2024/10/25 化粧品

今回は、前回の延長としてISO9001:2015と融合された医薬品添加剤のGMP管理体制について。

 

―IPEC-PQG GMPガイド:2022に基づく品質保証について―

 化粧品GMPに関して、実際の運用面から留意事項についてお話させて頂いています。
 前回はEUで要求されているEFfCI GMP認証制度についてご説明いたしました。化粧品の品質管理においては、原料供給者の選定と管理が極めて重要です。製品の品質に直接影響を与える原料については、単に受け入れ検査を行うだけでなく、どのような管理体制で製造されているかを把握する必要があります。また、最近ではISO9001とGMPの融合の動きがあり、EFfCI GMPはISO9001:2015とGMPが融合された要求事項であることから、両規格を満足する要求事項を理解する面からも参考となります。
 今回は、前回の延長としてISO9001:2015と融合された医薬品添加剤のGMP管理体制についてお話させて頂きます。

1.医薬品の添加剤の製造者に関するIPEC-PQG GMPガイド:2022
 医薬品においてはGMP省令改正が令和3年4月28日に改正されており、製品の品質に直接影響を及ぼす原料に対して、原薬の供給者に加えて添加剤を含めた供給者管理に範囲が拡大されています。これにより、医薬品製造業者は医薬品添加剤の供給者との間で供給者契約及び品質契約等を締結し、それを維持管理することが必須となっています。
 一方、化粧品原料供給者について法的制約はありませんが、前回紹介したようにEU圏内ではEFfCI GMPへの適合が求められています。このEFfCI GMPはIPEC-PQG GMPを参照に制定されている背景があることから、IPEC-PQG GMPガイドを見ておくことは化粧品原料の製造所においても有効です。
 IPEC-PQG GMPは、医薬品添加剤の製造に適用する品質マネジメントシステムの包括的原則を示したものです。医薬品添加剤の製造業者は、医薬品添加剤の品質を保証するために必要な品質マネジメントのプロセスを明確に持つことが求められています。最新のIPEC-PQG GMPガイド:2022では、GMPの基本原則は改定前と同じですが、ISO 9001:2015の要求事項に合わせて改訂されたものです。
 このガイドは 2 つの部分に分かれて公開されています。
 パート1には、医薬品添加剤の適正製造基準(GMP)が示されています。
 パート2には、医薬品添加剤の適正製造基準(GMP)と一般的な例を示す注記が示されてています。
 

2.GMPにおける責任と権限
 ISO22716では『責任と権限』は次のように要求されています。
 3.3.1.1. 組織は会社の上級経営者に支えられているか?
 3.2.1.3. 製造部門と品質部門はそれぞれ独立した関係となっているか?

 これに対して、IPEC-PQG GMPガイド:2022では次の通り、具体的に示されています。

(IPEC-PQG GMPガイド:2022)
 責任と権限はトップマネジメントによって明確に定義され、組織内で伝達される必要があります。
 また、製造部門から独立した品質部門は、次の責任を負う必要があります。
●品質に重要な活動が定義どおりに特定され、実施されていることを確認する。
●品質に重要な材料およびサービスのサプライヤーを承認する。
●原材料、包装部品、中間体、および完成した賦形剤を、現在承認されている仕様に従って承認または拒否する。
●製造記録の照査が行われていることを確認する。
●照査として工程で不適合または逸脱が発生した場合、または特定された場合は、それらが十分に調査され、文書化されていることを確認する。
●是正措置および予防措置が実施され、有効であることを確認する。
●品質に影響を与える可能性のある重要な変更のレビューおよび承認に関与する。
●製造指示からの逸脱、テストまたは測定の失敗、および苦情に関する調査結果のレビューおよび承認。
●製造物が別の会社によって製造、加工、包装、または契約に基づいて保管されている場合、製造物の承認または拒否の責任を負う。
●品質管理システムの内部監査プログラムを計画・推進する。
●外部委託したサービスの供給者が、このガイドの関連セクションに準拠していることを確認します。

 医薬品添加剤製造業者は、適切な管理(定期的な監査、訓練、文書化など)が実施され、文書化されている場合、品質部門の活動の一部を他の担当者に委任できます。

 

 

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執筆者について

鈴木 欽也

経歴

1980年に㈱資生堂に入社。掛川工場で処方開発・生産技術開発を担当。ネイルエナメルのゲル化剤、色材の開発や調色に関するコンピューターカラーマッチングシステムを開発。他に高圧乳化、凍結乾燥、パーマ剤、ヘアカラー等の特殊技術開発にも従事。
その後、本社生産技術部で海外事業戦略、海外工場建設、生産技術移転、海外薬事対応の業務を担当した後、再び掛川工場でファンデーションやマスカラ生産の移管業務を担当、本社で海外原料・資材・製品調達の業務を担当した後、中国北京工場の取締役工場長として、工場建設とシャンプー、リンスの現地生産化や化粧品の工業会の業務に尽力。
帰国後、掛川工場技術部長、大阪工場技術部長を歴任、FDAの査察受け入れやEU原薬登録を実施。
また、㈱コスモビュティー執行役員 品質管理部長としてベトナム工場、中国工場を建設。現在、㈱ディー・エイチ・シーさいたま岩槻工場の工場長でメーキャップ製品の工場改修・立上げを実施した。2017年から中小企業診断士として、鋳造業、サービス業、建築業等の事業計画作成支援や企業の5S活動支援を実施している。
品質管理に関しては、米国OTC製品の化粧品業界で日本国内初のFDA査察を受け入れ、指摘事項ゼロ件での対応、ヒアルロン酸のヨーロッパ原薬登録・米国FDA登録、ヒアルロン酸の原薬工場棟の増設を責任者として推進した経験を持つ。
公害防止管理者(水質1種、大気1種)、中小企業診断士(埼玉県正会員)、FR技能士、ターンアラウンドマネージャー(事業再生、(一社)金融検定協会認定)、健康経営EXアドバイザー、ISO9001審査員補、2022年5月から(株)エコノス・ジャパン代表取締役

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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