再生医療等製品の品質保証についての雑感【第63回】
第63回:再生医療等製品の製品開発と製造工程開発とQbD (2)
~ CQAの同等性/同質性評価の考え方 ~
はじめに
前回、CQA決定の手順において、例えば間葉系幹細胞(MSC)では、目的細胞の有効性に関わるCQAはCMAと近似で、どのような由来の組織から、どのような特性の細胞を単離できるかが重要であるとお話ししました。それらに関する情報は、国立医薬品食品衛生研究所 佐藤陽治先生らが、論文あるいは指針・ガイドラインなどで基本方針を展開しています。本稿では、それらの中より、同等性/同質性評価ガイドライン関連とシングルセルRNA解析に関わる論文について、軽くお話しをします。
● 同等性/同質性評価ガイドラインについて
同等性/同質性評価については、令和6年3月29日に厚労省より発出した、「ヒト細胞加工製品の製造工程の変更に伴う同等性/同質性評価に関する指針」をもとに考察を進めます。もちろん参照はEMAのComparability considerationsのQ&AあるいはFDAのPotency Assuranceガイダンスでも良いですが、基本方針は同じで、規制要件は本コラムの議論でないため割愛します。
細胞加工製品の目的細胞の品質は網羅的な解析を提示することは困難です。細胞加工製品の製造工程変更に係る同等性/同質性の担保には、(A) 技術的かつ科学的に合理性のある比較、(B) 蓄積してきた経験(知識管理)による適切な情報/データ、あるいは、(C) 非臨床や臨床試験を含む品質に関する追加の検証のいずれかが要求されます。製品開発者としては、(A)単独でできるように開発を実施することが望ましいですが、(B)の併用が不可避な事例も考慮できると認識します。(C)は、開発期間的にも、費用的にも、できる限り避けたいですね。
指針の基本的考え方では、製造所を変更した際やスケールアップをした際や、補助試薬(ancillary materials)の変更に関しては、知識管理により、変更前後の細胞特性の同等性/同質性を論ずることは、限界はあると考えますが、可能と推測しています。(もちろん、ケース・バイ・ケースの前提です。)
一方で、製造の出発原料としての細胞株やセル・バンクの変更時には、(製造工程を含む)品質特性が、有効性と安全性を有すること、またはそれらを担保する品質特性が説明できて、はじめて議論できるものと記しています。当たり前の話しですが、アウトプット(CQA)が間違いなくQTPPを満たすことを明確にしていなければ、インプットの議論も、プロセスの議論も無意味であるということです。指針本文には、これに関連して、詳細な説明と考え方が記されていますが、本質はプロセスアプローチの原則のままです。また細胞加工製品の製造工程変更において、ここで付加されるべき議論は、培地等の培養プロセスに影響を及ぼす原料等の変更も同様と考えます。理由として、培地等は特定細胞の選択的馴化あるいはヘテロを許容するなどの工程特性を有する可能性があるため、これらの変更は、細胞株を変更するのと同等のリスクがあると考えるからです。指針はこれらの変更がより論理的に実施される必要性を示しています。以上が基本的考え方における議論ですが、指針では、重要な本質が明確に示されていると認識します。
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