医薬品の原材料管理とサプライヤーオーディット【第1回】

※本文中、『1 はじめに』の内容を更新いたしました(2017.12.11)

1 はじめに
 アメリカにGMPが誕生し、日本では昭和49年(1974年)からGMP通知が発出されGMPの実施が図られて約40年以上を経過し、グローバルなGMP基準であるPIC/S GMPが世界に普及することなどにより、安全で安心な医薬品を作り出す規範としてすべての製造所がこれを遵守して製品を製造していることになっている。また世界のGMPレベルは各国当局による査察が年々より厳しくなりつつある中、その重要性の理解の深まりにより確実に上がってきていることは事実である。
 しかしこのような中、日常発生している異物/不純物の混入や品質変動はもちろんのこと、ヘパリン事件(粗製ヘパリン中に別原料が混入/海外)、外資系N社データ改竄や、K&K研究所の二重記録等による秘匿、Y原薬製造業者が無届けで中国製原薬を混入(登録原簿(MF)と製造実態が異なる事実など、故意的なものも含めると、サプライヤー側の原因に起因した品質不良や品質逸脱の事例は枚挙にいとまがないと言って良い。こうした事例は、難しい面はあるものの適切なサプライヤー管理(以下、供給者管理と同じ))をGMPと同じ考え方で行っていたら、或いは減らすことが出来たのかも知れない。
 現在、サプライヤーの管理対象が、GMP管理以外の原料/資材の製造業者のみならず、製造機器、製造支援設備、コンピューターなどのハードソフト供給業者から、製品を流通させる代理店、仲介業者、貿易業、流通業者など、医薬品製造にまで広範な領域にまで拡大している(図1)。このようなサプライチェーンの広がりは、原材料管理が医薬品の恒常的な品質保証や安定供給を確保するうえでの重要事項として認識されている一つの理由でもある。
 一方、一つの医薬品を作るまでには、国内外にある何百もの製造業者や取引業者が関係する。そのため、全業者を一律なレベルで評価・管理することは経営資源的にも大変難しい面がある。また品質契約の締結や要求した改善要求や試験に応じない場合、特に海外の製造拠点のあるメーカーや少量取引の場合には、オーディットを拒否されるケース(製造所見学は許可されたが、現場に立ち入らせない)など、サプライヤー管理を行っていく上でPIC/S や原薬GMPの規制遵守と現実との様々のギャップに苦しめられる場合も多い。
 今回、「医薬品原材料管理とサプライヤーオーディット」と題して、リスク管理をベースとした適切な供給者管理の在り方について事例を交えながら、順次検証することとした。

 

■サプライヤーオーディットの要請と選定評価・承認 (第1回)
  GMPの適用領域の広がりと供給業者管理
  □供給者が製造する製品の品質リスクマネジメント
  □PIC/S・国内GMPに対応したサプライヤーの選定
   製造義業者、供給業者、代理店、仲介・貿易業者、流通業者、
   再包装業者、再表示業者等との品質取り決め、GDPの要請と輸送業者の
   選定
■受入試験の実施とサンプリングの手法 
  受入試験及びサンプリング、サンプリングの原則及び職員
  出発物質及び包装材料のサンプリング
■サプライヤーオーディットのポイント
  サプライヤーオーディットとは
  委託先監査(外部監査)とサプライヤーオーディット(供給者監査)の違い
  サプライヤーオーディットのタイミング
  委託先、供給者との適正な品質契約システムの構築、オーディットの手順
■海外サプライヤーへのオーディット手順と評価法
  包装容器製造施設、原薬、製剤製造所、原料・中間体、試験施設、
  委託輸送業者等への実施例
■リスクに応じたサプライヤー管理
  リスクマネジメントの活用によるサプライヤー管理


図1:原材料等供給業者の管理(概略図)


  サプライヤー管理が使用者側の最重要事項として認識され、原材料等の受入に関しその製造管理や品質管理を、供給業者、MF管理人や代理店などの納入業者任せにしている部分がないか、もう一度原点から見直しをして頂ければ幸いである。

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