ドラッグリポジショニング/リプロファイリング(DR)における知財/特許の課題【第5回】

9.医薬品開発における特許取得の目的
 新薬開発に要する経費、時間、人材などは非常に膨大であり、また、成功確率が非常に低く、これらの新薬開発に要するコストやリスクを軽減することは、製薬企業にとって極めて重要な課題となっています。一方、新薬の開発促進は国策上の要求ともなっており、継続的な創薬を通して、早期の新薬開発と安価な医薬の提供が製薬企業に求められています。このような背景において、既に薬学的情報や使用実績を蓄積してきている既承認医薬品をベースにしたDRの手法は、少ない研究開発費と短い開発期間によって新薬開発を可能にすることができる有効な手段の1つとして期待されています。
 しかし、その一方で、新有効成分含有医薬品の場合に比べ、追随する競合製品の参入時期が早いと考えられ、このため、DR開発医薬品について、その市場における競争力を維持し、充分なコスト回収の期間を確保するためには、知財戦略の重要性が非常に大きいといえます。新有効成分含有医薬品の再審査期間は原則として8年(希少疾患用医薬品の場合は10年)ですが、DR開発医薬品の再審査期間は4~10年1,2、通常、4~6年程度と考えられます。従って、DR開発医薬品に係る特許が存在しなければ、新有効成分含有医薬品と比べ、上市後比較的早い時期に後発医薬品の参入が可能になります。また、基本骨格が同じ化学物質を有効成分として含有する医薬品の薬理学的プロファイルは類似している場合が多いことから、同種同効の他の既承認医薬品もDR開発医薬品と同じ追加効能を有する可能性があり、このような医薬品が、早期に、DR開発医薬品の新効能(既承認医薬品の追加効能)に係る市場に参入してくることも考えられます。

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