医薬品開発における非臨床試験から一言【第2回】

2020/02/14 非臨床(GLP)

医薬品の開発においてデータの信頼性を保証することは、新薬の価値を明確にする基準として重要です。つまり、新薬の価値を適正に示すデータとは何か、これは承認申請に求められる必要条件となります。ここでは、信頼性の基準に沿った、『日本流の効率的な非臨床試験の考え方』を示したいと思います。ただし、非臨床試験に限らず、あらゆる試験は、「得られた結果」に本質的な信頼性があるのは当然であり、効率的な試験の実施とは、科学的に考えていかに無駄を省くか、必要十分な信頼性を考えることになります。

私は、試験の質が3つの要素から成り立っており、正確性、再現性、見読性が必要と考えています。研究現場ではいずれも当然であり、正確な実験、再現性のあるデータ、そして歴然とした結果を示すことが、有効で価値の大きい成果といえます。逆に考えると、これらの3要素を満たさない試験では、幾度繰り返しても、益々、真実が見えてこないかもしれません。試験の質とは研究の基本であり、試験の中でいかに素晴らしい発見をするか、明確な結果を示すことができるかが価値の創造と考えられます。

漠然と正確に実験を行うだけでは、「医薬品開発に求められる正確性」の基準に到達したとはいえません。試験を行うには、使用する機器と、実験操作の標準操作手順書(SOP)を整備することから始まります。機器は、点検・整備・使用法などの標準的な手順を定めて使用する。さらに定期的な点検とメンテナンスを行い、使用前点検により正常な状態を確認し、使用後は正常に終了したことを確認する。いずれも記録を残すことが肝要です。このような手順を守ることで、機器の使用者あるいは使用のタイミングによる結果の変動が小さくなります。

日本固有の法的規制である信頼性の基準に沿った試験の正確性は、試験を行った部門で試験資料の品質管理をすることで保証されます。これを「QC;Quality Control」と呼び、原則として、試験の実施者とその他の者が2度にわたって全ての生データと集計結果をチェックし、次に報告書に正確に反映されていることを確認し、点検記録を残します。しかし、QCでデータの正確性のみをチェックすることは、「間違いが生じないように管理する」QCの本質ではありません。試験の質をコントロールすることが重要で、QCにより実験の質の底上げを目指したいものです。

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執筆者について

内藤 真策

経歴

兵庫県出身。元(株)大塚製薬工場 研究開発部員。
医薬品開発における薬物動態からの安全性評価を専門とし、光学活性体の薬物動態、mRNA変動による肝臓の酵素誘導、薬物相互作用などの分野に注力してきた。京都大学で学位取得。現在は信頼性の基準について議論。
製薬協基礎研究部会では長年に渡り副部会長を務め、薬物動態分野のレギュラトリーサイエンスを牽引した。徳島大学客員教授、薬物動態談話会常任幹事、日本薬物動態学会および日本毒性学会の評議員を務めている。
論文は英文97報、総説3報を執筆し、共著では「ファーマコゲノミクスの進歩と創薬科学への応用」、「代謝物の安全性評価における投与量設定と投与経路選定」、「探索段階を含む非臨床と臨床段階での非GLP 試験の効率的実施事例」など10編を数える。薬剤師、趣味は写真撮影・ドライブ。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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