医薬品開発における非臨床試験から一言【第4回】

2020/04/10 非臨床(GLP)

国内試験とは試験環境が全て日本国内、一部あるいは全てを海外で実施した場合を海外試験と位置付けて説明します。日本固有の法規制である信頼性基準は、原則として日本申請において国内試験と海外試験を区別せず、承認申請資料(CTD;Common Technical Document)の中で同等に扱われます。ただし、承認審査の過程では資料の扱いが異なっていると感じられます。

日本で承認申請を行うと、根拠資料の適合性書面調査が実施されます。PMDAに書面調査を申し込む時は、まず根拠資料の一覧を提出します。この時、信頼性基準、GLP基準、GCP基準などのいずれであっても同じ一覧資料を作成し、一様な表記で示します。資料の詳細には内容と物理的な量を記載します。この記載が、国内試験と海外試験で異なっていることが多いようです。つまり、海外試験では報告書を提示できますが、生データは実施施設の保管管理になるため、PMDAに持ち込めません。そうなりますと、結果的に海外試験は報告書等の提出資料の範囲内で調査されます。

従って、国内試験と海外試験が混在していますと、国内試験は生データが書面調査を受け、一方の海外試験では生データの書面調査を受けません。ただし、正確な資料一覧の作成を行う必要があります。海外の試験実施施設に保管されている資料の一覧作成には手間がかかります。さて、国内試験と海外試験の混在で注意したいのは、資料の質を同等に保つことであり、特に資料の完成度を高めたいものです。そのため、試験の計画書と報告書の整合性を十分に確認してCTDを作成することが大切です。

日米欧を中心としたグローバルの規制では、非臨床試験をGLP試験と非GLP試験に2分類して考え、GLP準拠の考え方はほぼ統一されています。一方、非GLP試験は、実施した施設の考え方(SOP;Standard Operating Procedures)に依存しています。当然ですが、欧米規制に「信頼性基準」がないため、日本固有として欧米に理解されても、科学的に理解を得ることは難しいと思います。ただし、欧米の非GLP試験でも承認申請用資料は、欧米の規制当局が求める管理された試験資料になっています。一方の日本の信頼性基準は、欧米からGLPに近い基準と捉えられています。信頼性基準では、試験資料のQC(Quality Control)に加えてQA(Quality Assurance)を行うことが基本となり、資料の保存も含めた完成度が求められます。つまり試験の科学性に加えて資料の完備に重きが置かれています。

海外施設にとって、信頼性基準への対応は難しい課題となります。日本対応のためだけに試験の根拠資料の一覧を作成し、提出資料に関するPMDAの照会事項に対応します。海外試験の資料は開発国の規制に従って完成されていて、QCは行われており、GLPならQAが実施されています。日本国内での承認申請において、申請担当者はこれらの資料を信頼性基準に外挿していくことになります。

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執筆者について

内藤 真策

経歴

兵庫県出身。元(株)大塚製薬工場 研究開発部員。
医薬品開発における薬物動態からの安全性評価を専門とし、光学活性体の薬物動態、mRNA変動による肝臓の酵素誘導、薬物相互作用などの分野に注力してきた。京都大学で学位取得。現在は信頼性の基準について議論。
製薬協基礎研究部会では長年に渡り副部会長を務め、薬物動態分野のレギュラトリーサイエンスを牽引した。徳島大学客員教授、薬物動態談話会常任幹事、日本薬物動態学会および日本毒性学会の評議員を務めている。
論文は英文97報、総説3報を執筆し、共著では「ファーマコゲノミクスの進歩と創薬科学への応用」、「代謝物の安全性評価における投与量設定と投与経路選定」、「探索段階を含む非臨床と臨床段階での非GLP 試験の効率的実施事例」など10編を数える。薬剤師、趣味は写真撮影・ドライブ。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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