医薬原薬の製造【第3回】

2014/06/30 原薬

はじめに
 
 今回は、工業的レベルで原薬を製造する場合の、溶媒回収について述べます。
 
 原薬の製造では、反応・抽出・再結晶等の工程で溶媒が使用されています。有機反応は、無溶媒の反応がベストと言われております。溶媒を使わず、A+B→C(目的物)収率100%、副生成物はなし。こんな反応がベストです。しかし、溶媒を使わないと、たとえ、上記の理想的な反応が可能であっても、反応槽は小さなものとなり、反応熱の除去を行うことが困難になります。溶媒で、反応系を希釈して、熱除去を円滑に進めることが多くの場合必要となってきます。最近、水中や、エマルジョン中で有機溶媒を使わずに有機反応を行う試みもされておりますが、まだまだ普及しているとは言えませんし、後処理で結局溶媒を使うことになってしまうことが多いようです。
 
 有機反応の収率は一般に100%とはなりません。未反応物や副生成物が残ってきますので、それを除く工程が必要となります。この精製の手段が、抽出・再結晶です。抽出では、水と有機溶媒の相分離により、水に溶けやすいものを除去することができますし、再結晶では、結晶化により不純物を除去することができます。上述の通り、水中や、エマルジョン中で有機反応を行う試みは、まだまだ工業化のレベルまで達しておりません。工業化レベルでは、有機溶媒を使った反応、抽出、再結晶が原薬の生産には不可欠と言えると思います。
 
 さて、環境負荷を減らすという、グリーンケミストリーの考え方が最近注目されています。この観点からは、溶媒は蒸留回収して再利用することが望まれます。治験薬など少量の原薬の生産の場合、生産ロット数が少ないため溶媒回収はほとんど行われておりません。しかし、プラントで大量に原薬を生産する場合、溶媒は必ず回収されます。原薬の生産現場では、溶媒の回収は日常的に実施されております。
 
 新薬スクリーニング物質の合成担当者や、プロセス化学の担当者は、溶媒の回収について、考える機会は非常に少ないと思います。そこで、原薬製造の立場から、これから数回に渡り、溶媒の回収について考えていきたいと思います。今回は、溶媒の変動費について考察し、この結果を踏まえてどんな場合に溶媒は回収利用されるかについて考察したいと思います。

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執筆者について

森川 安理

経歴 アンリ・コンサルティング 代表。
大学修士課程で有機化学を専攻後、1977年旭化成工業(株)入社。スクリーニング化合物の合成、プロセス化学研究に一貫して従事。この間薬学博士号取得。その後、医薬原薬の工場長を10年経験。工場長として、米国、イタリア、豪州、韓国の当局の査察および、制癌剤を中心にする治験薬の受託生産を経験。旭化成ファインケム(株)を2013年2月末退職。2013年3月より現職。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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