医薬原薬の製造【第4回】

2014/08/04 原薬

 今回は溶媒回収の課題について、技術的側面をのべたいと思います。溶媒の回収技術については、英語の本ですが大変良い本があります。この本は、Amazon.comでも販売されております。溶媒の回収技術がほとんどすべて網羅されておりますので、参考にしていただきたいと思います。
Ian Smallwood, Solvent Recovery Handboook, Blackwell science, 2002.
 
 さて、溶媒の回収で最も大きな問題は、水分です。反応工程では、溶媒中の水分を嫌う場合が頻繁に発生します。グリニャール試薬、アルキルリチウム、など有機金属試薬を使う反応、NaH、LiAlH4,DIBALなどを使う反応など、多くの水分を嫌う反応があります。これらの反応では、溶媒は無水でなければいけません。実験室では、無水溶媒は、モレキュラーシーブスを溶媒にいれて脱水して得られます。また、最近は無水溶媒を金属タンクに入れたものが販売されており、これを使うことが多くなっています。多くの無水溶媒の水分規格が30-50ppmとなっているのですが、この根拠についてまず考察してみます。
 
 無水反応での目的物の濃度を5w/v%とします。生産性を考えると10w/v%は欲しいのですが、最低限ここまでの濃度は欲しいというラインで5w/v%という数字を使います。また生成物のMW(分子量)は、400程度と仮定します。無水反応は通常プロセスの初期に使われますので、もう少しMWは低いことが多いとは思いますが、400程度として計算を進めます。そうすると、目的物のモル濃度は、5X1000/100/400=0.125モル/L=125mmol/Lとなります。一方このときの水のモル濃度を求めてみます。市販の無水溶媒の規格50ppmで計算してみます。1L中には50mgの水ですから、50/18=2.78mmol/Lとなります。この計算ですと、水に不安定な分子が生成物と等モル使われると仮定すると、2.78/125X100=およそ2モル%の試薬が分解することになります。この程度の分子が水で分解しても問題はないということでしょう。50ppmの水分でも、使用する原料の2%が分解するということですから、水の規格はかなり厳しくしなければいけないということが分かります。
 
 さて、溶媒は通常、蒸留によって回収・精製されます。しかし、蒸留精製のみによって、THF,エタノールなど親水性の高い溶媒の水分を50ppm以下まで下げることは通常困難です。モレキュラーシーブによる脱水が必須となってきます。では、蒸留でそこまで脱水するのが、困難なのか?簡単に、脱水できる溶媒はどのようなものなのか?ここで考察したいと思います。これには、蒸留の理論について知っておく必要があります。そこで蒸留の基礎を基礎編とし今回述べ、溶媒回収の実際を応用編として次回述べていこうと思います。

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執筆者について

森川 安理

経歴 アンリ・コンサルティング 代表。
大学修士課程で有機化学を専攻後、1977年旭化成工業(株)入社。スクリーニング化合物の合成、プロセス化学研究に一貫して従事。この間薬学博士号取得。その後、医薬原薬の工場長を10年経験。工場長として、米国、イタリア、豪州、韓国の当局の査察および、制癌剤を中心にする治験薬の受託生産を経験。旭化成ファインケム(株)を2013年2月末退職。2013年3月より現職。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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