医薬品工場に求められているHSE要件と事例【第57回】

国際化に対応する医薬品会社に必要なHSEとは?
「試験室におけるCMR物質のOperation Risk」


1.製薬企業のあるべき姿

製薬企業の国際化が進む中、企業の多様化を配慮した製薬工場の各種取り組みが求められるようになってきました。日本国内外にて製薬工場で働く日本人も外国人も夫々の工場で日々働いています。GMPは医薬品の品質を守り、患者様を守っています。一方、HSEは工場や試験室で働いている従業員の皆さんを守るべく、グローバルスタンダードの安全や健康被害リスクを低減するマネジメントシステムで運用されています。近年、この健康被害のリスク低減は国際法によって企業のトップに「サプライチェーンを巻き込んで従業員を守りなさい」という意味の人権尊重方針のコミットメントを作成し、公開するよう求めています。つまり、化学物質のOperationによる健康被害リスクを未然に防止せねばなりません。

日本の文化に大きな影響を受けている企業は世界のグローバルスタンダードを持つ大手製薬企業の化学物質取扱いを比較してみると歴史的な大きな差異があることがわかります。それはGHS(Global Harmonized Symbol)が世界レベルのリスクを低減する事に貢献している事と同様にSDSを化学物質の製造会社で発行する義務が求められています。その技術的内容や根拠を見てみると欧米と日本の製造会社に大きな差異があることに気がつきます。さて、国内法でも化学物質のリスクアセスメントとラベル表示について改正法が施行されましたが、これは適合して無ければコンプライエンス違反となります。重要なのは日本の歴史的文化はこの際、法改正に適応のみする努力をし、本来の目的である人の健康被害リスクを低減する事により、製薬企業で働く従業員(工場、試験室、他)のみなさまの健康被害を未然防止する事に着目して、法改正の趣旨目的の裏書きを読み込まねばなりません。

例えば、CMR物質のリスクアセスメントポイントは以下の通りです。

  • リスクアセスメントのための情報収集として、GHS、OEL、Mie(Minimum Ignition Energy)、Kst(爆発規模)を入手する
  • 社内に定性リスクアセスメント規定がある
  • 事業所取扱い化学物質の全てがリストアップされている。
  • 上記の中にCMR物質が分類されている(C,M,R夫々に)
  • 上記に従って、化学物質曝露定性リスクアセスメントが実施されている
  • CMR物質運用取扱い室は専用試験室として封じ込め構造となっている
  • 上記により、床壁天井の気密性が確保
  • 専用空調系統となっていて、オールフレッシュの吸排気がセット
  • 室内は陰圧 10 Pa 以上差圧
  • 出入り口:エアーロックシステム
  • 出入り口前にCMR物質取扱い室の標識
  • 出入り口ドアーは施錠(薬事法の劇薬であっても、CMR物質SDSの要求に従う)
  • 入退出SOPにより、入室許可制度にによる、許可登録者のみ入室が可能

欧米に遅れをとっている事例は文化のみではありません。先ずは何事も自覚することが重要です。国内法をなんとか守れば良いという文化は陳腐化している事に気づき、国際的なレベルで仕事が出来る企業になって、グローバルスタンダードの構築を図ることがこれからの日本国内でもビジネスの継続には欠くことが出来ません。

 

 

執筆者について

経歴 ※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

連載記事

コメント

コメント

投稿者名必須

投稿者名を入力してください

コメント必須

コメントを入力してください

セミナー

eラーニング

書籍

CM Plusサービス一覧

※CM Plusホームページにリンクされます

関連サイト

※関連サイトにリンクされます