医薬品工場に求められているHSE要件と事例【第3回】

2020/04/10 品質システム

佐野 旭

1、医薬品工場における現状
コロナウイルスが蔓延し始め3月11日WHOがPandemicを発令しました。3月24日から26日に東京都知事、埼玉縣知事、神奈川県知事他と軒並み外出を自粛するよう又、自宅勤務や電車、バスの通勤を控えるよう要請が出ました。これはオーバーシュート(爆発的患者急増)やさらにロックダウン(都市閉鎖)危機が目の前に来たことを受けてコロナウイルスの拡散を強制的にブロックする必要が出てきたことによるものですね。さて、一般社会の人たちはコロナウイルスの特効薬(ワクチン)を開発出来ないでいる製薬会社を白い目で見るようになっていることをお気づきでしょうか?製薬会社基金などというものがあれば感染者数の呼吸器を病院団体へ寄付することを考えている製薬会社(人)はいないのでしょうか。そのような事に関しては他人ごとのように製薬会社の皆さんは事務系の仕事の方は在宅勤務、医薬品工場では自宅生産などということは不可能ですのでやむを得ず生産を継続しておられると思います。もちろん、工場敷地へコロナウイルスを持ち込まないよう事業所入口で体温測定・手の消毒・靴裏の消毒・マスク(GMPマスク?)、車はタイヤの消毒、建物入口では手の洗浄など必要な対策として実施されていると思います。しかし、いずれも不完全な対応対策です。多くの感染者は症状が出ないうちに周りにコロナウイルスをばらまいてしまっています。一方レベルの高い医薬品工場は対策予防レベルを上げて、従業員全員の自宅での接触者、車通勤時の接触者そして自宅出入りの際の消毒、家族の体温測定などの管理と外出禁止対応と行動記録を取らせて報告させるなど少しでもリスクを低減できるようできることはすべてやるという工場もあります。従って、一番リスクの高いのは成り行きで医薬品工場でありながら、機械工場と同じレベルで行政指導に従ってのみ対応をしている会社工場です。
今回は筆者の記事をご参考頂けるよう、タイトルを変更してコロナウイルス関連の記事を書かせていただいております。

2、感染症に対する医薬品工場の立場
製薬会社は特に医薬品工場の感染リスクは極限までゼロに近づけるリスク対応が求められていると言って過言ではありません。なぜならば、感染者が1名でも発生すると工場を閉鎖すべき状況になります。自ら工場のあらゆる場所を消毒せねばなりません。その後、ご存知のようにバリデーションをして、スワブ試験でまたは定量曝露評価など何らかの方法でコロナウイルスの数がゼロであることを立証して、厚労省又は都道府県庁の立ち入り検査に合格しない限り、再生産開始はできないでしょう。 それだけでは無く、社会通念上一番影響が大きいのは社会的責任と風評被害でその会社の信用は丸つぶれでコロナウイルスに感染した人が出た医薬品会社の製品は病院やお客様は購入を控えるでしょう。 さらに財務留保のない会社は銀行から借金が出来なければ倒産リスクが大きくなります。 そこで、医薬品会社はそのビジネスを継続するために感染リスクのリスクアセスメントをして優先順位の高いリスクからリスク低減対策を繰り返し実施してマネジメントシステムを回し、感染リスクを許容できる状態に一刻も早くリスクを極限までゼロに近づける使命があります。 上記から考えると成り行きで医薬品を生産している会社工場は無いと思いますが社会的責任を果たしていない無責任な会社と社会から批判されるかもしれませんね! 

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執筆者について

佐野 旭

経歴

外資系医薬品会社に入社後、建設プロジェクトや設備保全などを担当し、また関連会社においては、医薬品の検査・包装にも携わりました。その後は工場のHSE Managerとして工場長と共にHSE Global Standardの社内への浸透をさせるべく事業所内教育に力を注ぐ傍ら、たびたび海外の事業所へAuditに出かけてHSE Global Standardの重要性を身をもって学びました。
M&Aが始まり7回の会社統合を経験し、そのたびに工場閉鎖が発生し、その環境影響評価と土壌汚染対策を担当しました。
又、会社統合のたびにGlobal Standardが変わり、Global Standardの体質まで学ぶことになりました。
2006年に退職後、コンサルタント会社を設立し、今までの経験を生かしてHSEのアドバイザーとして、企業のHSE導入サポート、企業内教育、HSE Audit、社内教育、講演、講習会、建設プロジェクトサポートなどの仕事をさせて頂いて多くの企業様、学校、行政関係様にお世話になり、現在に至っております。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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