医薬品のモノづくりの歩み【第32回】

執筆者関連書籍「医薬品製造におけるモノづくりの原点と工場管理の実践

生産性を評価するための製造原価について(4)

 今回は、製造原価にまつわる話で、良く耳にする固定費と変動費について触れたいと思います。
 固定費とは、主として間接費のことですが、短期間では売上高や操業度の増減と関係なく一定に発生する費用で、間接労務費や減価償却費、管理部門の経費などが含まれます。つまり、その年の生産数量の増減に関わらず、年間を通じてほぼ変化しない金額です。例えば、間接部門の従業員数は人事異動がなければほほ一定ですし、設備投資された減価償却費も決められたルールで算出され一定額が間接費に入りますので、そのことから「固定費」とも呼ばれています。一方、「変動費」は、主に直接費のことですが、売上高、つまり年間の生産数量の変動に比例して増減する直接原材料費や製造部門の直接労務費などがあります。
固定費と変動費が会社の収益に与える影響について触れますと、固定費は、直接、企業収益性を左右するもので、低いほど実際の利益が増えることから、原価低減活動の対象となります。一方、変動費は、それが持つ意味を式で表しますと、

(売上高 ― 変動費) ― 固定費 = 利益

となり、売上高から変動費を引いた額が大きければ大きいほど、売上高に関係なく一定の費用が掛かる固定費を賄い、更に利益を生み出す能力が優れていると言えます。変動費も原価率を下げ、収益性を高めるために、収率改善や作業時間短縮など生産性向上に取り組みます。
 固定費と変動費の違いを表1にまとめますと、操業度との関係では固定費は操業度の影響を受けませんが、変動費は操業度に応じて変動します。また、時間あるいは製品1単位当たりの原価は、固定費では、操業度が上がれば安くなり、操業度が下がれば高くなります。一方、変動費は操業度に係らず製品一単位当たりの原価は固定的です。その他、固定費は年間で予算が決められ期間ごとの実績から予算進捗が管理されますので、比較的上層管理者の意思決定が影響します。変動費は製品や作業に関連した標準費用で比較評価されますので、現場管理者が主体となって管理します。

表1 固定費と変動費の比較表

 

 

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