医薬品のモノづくりの歩み【第2回】
「モノづくり」の定義と基本要素
世界に誇る日本の「モノづくり」は、医薬品製造も例外ではありませんが、その製薬企業に今、企業文化としてクオリティカルチャーの醸成が求められています。
クオリティカルチャーは、元々、欧米で提唱され、その後日本に入ってきましたが、それは概念を示したもので、内容が抽象的であったため、具体的にどのように取り組めばよいか戸惑いがありました。また、⽇本と欧⽶では、歴史、社会構造、国⺠性や⽂化等の背景が異なり、当初は、欧⽶の取組みをそのまま適⽤するのは難しいと捉えられていたようです。その後、国内企業の相次ぐ品質の不祥事の発生も相まって、現在では、業界の信頼回復のため、様々な研究会等で議論され、製薬協のGMP部会を始め、各社がその考え方や具体的な取り組み事例を紹介しています。1)
クオリティカルチャーについて、ここで解説することは控えますが、その基本的な考え方は、「企業文化として、経営層と従業員が一体となり、品質を優先すると言う意識を持ち、安心して服用できる医薬品を安定的に供給するために、従業員の品質優先の自発的な行動と実効性のある組織やシステム、制度により構築される価値観、行動規範」とされています。1)
では、国内医薬品製造でクオリティカルチャーが求められるようになった背景も踏まえ、「モノづくり」の根幹について改めて考えてみたいと思います。
医薬品も原料から形あるものに作り出される点では、間違いなく自動車や化学製品、衣料などと同じ「モノづくり」の領域にあると言えます。
ここで、「モノづくり」とは、単に匠の技や職人の技術を捉えるのではなく、モノを生み出すことに携わっている人は、誰もが身を置いている領域のことを指します。そして、「モノづくり」に携わる人に共通して言えることは、意識を高め、知識を深め、技術を磨いて、更により良いモノを生み出すよう知恵を絞って努力していることです。その精神は、人を育て、脈々と次の世代に引き継がれていきます。
この意識と精神が宿ることは、正に世界に誇る日本の「モノづくり」の文化そのものであると言えます。
では、「モノづくり」の対象の一つである医薬品の場合はどうでしょう。
医薬品は、高価なものではありますが、人や動物の病気の診断、治療、予防などに使用し、命や健康に直接かかわるもので、他の商品に置き換えることはできません。また、医薬品の製造を担う製薬会社は、患者に必要な時に必要な医薬品を届ける社会的使命と責任をもっています。
更に、人や動物の命と健康(身体構造と機能)に影響を与えるもので、外からはその品質が見れないため、GMP基準に則った厳しい管理下で製造を行うことが求められます。
従って、医薬品の製造に携わる方の「モノづくり」とは、図1に示したように、GMP基準を遵守して適正な品質の医薬品を、いつでも必要な量を安定して供給すると共に、医薬品の製造にロスやムダを発生しないよう生産性を高めることで、顧客(ステークホルダー)からの信頼を得ることに努めていることと言えます。
これは、医薬品製造会社がそれぞれ独自のコーポレートキャッチフレーズを掲げても、医薬品製造の「モノづくり」共通の精神であり、普遍的なものであると考えます。
言うまでもありませんが、製造を担う工場では、安定した操業を継続するために、安全衛生と環境保全に心掛けることも大切なことです。(図1)
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