新しいGMP教育訓練像を求めて【第8回】

はじめに
 短期間の非正規社員(派遣社員)の存在は、製薬業界においてその存在は大きなものである。日本国内の若年労働者数の減少は、各企業で正規社員を増加させ、優秀な職員を確保しようとする傾向を生み出している。しかし、正規社員化を進めるにあたっては、生産変動に対応させて、迅速な人員の組替えのシステムを同時に構築する必要性がある。それがうまく機能しなければ、組織の硬直化を招くことになる。
 短期間非正規社員(以下、「短期間派遣社員」と表記する)の雇用は、この組織硬直化への対応手段として用いられると推測される。そのため、この先10年ほどの期間では、全社員に対する短期間の非正規社員の比率は、減ることはなく、むしろ増加する可能性をもっている。
 この問題を検討するにあたって、GMP教育に関わる論点をより明確にするために、この稿で取扱う短期間派遣社員の内容を明確にしたい。短期間」の範囲は、雇用期間が1~3ケ月間程度をこの稿の前提としている。ここでの「派遣社員」とは、派遣元の会社と「一般労働者派遣」を結んだ者である。つまり、派遣社員希望者が派遣元の会社に登録をしておき、派遣先企業で就労が決定した時点で、登録した派遣会社と雇用契約を結んで派遣先企業で働く形態であり、「登録型派遣」ともよばれている。
 派遣先の企業は、派遣される者を指定することが出来ない。また派遣社員は、雇用関係は派遣元の会社と結んではいるが、指示命令等は派遣先の企業にある。
 製薬工場で短期間の派遣社員を受け入れるのは、一時的な業務量増加への“人手を手当する”であり、かなり生産が忙しい状況がその背景にある。しかし、GMPに関わる業務に就労してもらうためには、GMP教育訓練を受け、その適格性が認定されていることが必要である。このような前提の下で短期間派遣社員のGMP教育訓練を考える時、次のような幾つかの大きな問題がある。
 (1) 被派遣者は、GMPの知識を持たないと考えるのが適切である
 (2) 製薬会社は、派遣会社に対して派遣者を指定することができない
 (3) 雇用期間が短いため、GMP教育訓練(特に“教育(知識)”)の時間が少なくなる
 (4) 雇用期間が短いため、被派遣者はGMP教育訓練を受けている間も、次の就職先
   を考える必要があり、 ”心ここに在らず” の状態である。
 
 上記の意味する所は、(1)は「相手は初心者」であり、(2)は「人を選べない」であり、(3)「基礎教育時間の確保が困難」であり、そして(4)は筆者が多くの短期間派遣社員と話した体験からの結論である。この状況で「短期間派遣社員の業務や学習への意欲をどの様に確保するか」である。この問題の根底をなす事項は「雇用期間の短さ」である。
 これらの問題の根源は社会的な就労システムの中にあり、製薬工場内のGMP教育訓練のシステムの範疇では改善が望めない。更にいえば、長期雇用の前提の上に構築されているGMP教育訓練の矛盾と、派遣労働契約ゆえに派遣者を製薬企業側で雇用できないという雇用者に対する足かせが、この問題に重くのしかかっている。

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