医療機器の生物学的安全性 よもやま話【第55回】

2024/07/19 医療機器

今回は、有機材料の生分解性検索について述べたいと思います。

有機材料の生分解性検索

 体内で分解する無機材料の多くは、溶解の結果元素イオンとして放出され、タンパク質などに結合するなり、フリーで存在するなりして、体内に分布したり、排泄されたりします。生分解性を検索するには、この元素をターゲットとして検索していくことがアプローチになります。
 一方で、有機材料の場合、まずは体内でどのように分解され、どのような物質が放出されるのかを特定しなければならないという点で、かなりハードルが上がります。
 一般的な有機材料の分解では、加水分解、酸化による分解、そして、酵素による分解などが考えられるかと思いますが、どれかひとつの分解様式とは限らず、最初は加水分解だけであったものが、分解が進行すると酵素による分解が生じるというような動的な変化も想定しておくべきです。もっとも酵素による分解のことも、加水分解のこともありますので、どのような酵素が作用するのかも押さえておくとよいかと思います。
 そして、つぎに検討すべきは、分解された結果、どのような物質が生じるかです。医用材料はポリマーであることが多いと思いますので、まずは加水分解により細粒化し、その中からオリゴマーやモノマーが放出されることになろうかと思います。その際には同時に、ポリマー中に存在していた添加材や、ポリマー合成時の低分子の未反応物が放出されるかもしれません。そして、モノマーとなった場合に、どのように代謝されたり、排泄されたりするのかも検索しておくべきでしょう。

 生分解性の医療機器を開発される際、まず材料を選定した段階で、これらを検索していただくことをお勧めします。材料の開発や選定段階においては、どうしても性能に関する研究開発に重点が置かれるかと思います。物理的な特性である引っ張り強度や曲げ強度から、生体細胞や組織との親和性など、医療機器としての性能面での研究は活発にされるのですが、上述したような分解産物に関する研究はなおざりになりがちです。想定される最終分解産物はおそらくこのような物質であるということはわかっていても、本当にそうであるか、オリゴマーは、添加物などは、となってくると、意外にそこまで着目していなかったというケースに多く遭遇します。
 どうしても開発時は、性能評価に重点が置かれますので無理もないかと思います。ただ、開発研究時においても、生物学的安全性という視点で十分な検討をしていただかないと、製品設計を過ぎた段階でそう言えば生物学的安全性評価があったよなということで、考え始めることになってしまいます。そうすると、分解産物の測定が思いのほか困難であることがわかったり、思いもよらなかった分解産物が生じることが判明したりして、開発を見直さざるを得ないことになりかねかいからです。

 

 

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執筆者について

勝田 真一

経歴 一般財団法人日本食品分析センター 理事
1986年財団に入所し、医療機器、医薬品、食品、化粧品及び生活関連物資等の生物学的安全性評価に従事。1997年佐々木研究所研究生として毒性病理学及び発癌病理学研究に携わる。1999年東京農工大学農学部獣医学科産学共同研究員として生殖内分泌学研究。日本毒性病理学会評議員、ISO/TC194国内委員会、ISO/TC194 WG10 Technical ExpertやJIS関連の委員などを歴任。財団では薬事安全性部門を主管し、GMPやGLP対応を主導。情報システム部門担当を歴任。大阪彩都研究所長を経て現在北海道千歳研究所長。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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