最新コスメ科学 解体新書【第5回】

2024/05/03 化粧品

美人ってどんなひと? (1)。

 

美人ってどんなひと? (1) ~心理学的アプローチ~

 

 
 何年か前、化粧品の学会で、ロボット研究者のI先生のお話を伺うことがありました。I先生は、ご自身や芸能人をモデルにしたヒューマノイドロボットを開発し、メディアにも頻繁に登場される有名人ですが、開口一番、ホールを満たす数百人の化粧品研究者の前で、驚きの一言を口にしました。
 「わたし、化粧品会社の方たちとお会いすると、“美人って、何なんですか? ”って聞くんですが、誰も答えられないんです。みなさん、“美人”がどんなものかも分からずに、化粧品作ってるんですか?化粧品業界、大丈夫ですか?」
 ・・・会場はまさに水を打ったような静けさに。I先生から思わぬ質問を受けた会社の方のどぎまぎが目に浮かぶようで、なんだか気の毒です。

 実はこの問題は、百年以上も前から研究が続けられている、注目すべきトピックなのです。ヒトの顔の魅力について、科学的手法を用いて解析したのは、進化論で知られるCharles Robert Darwinの従兄であり、人類学・統計学・気象学などで多大な功績を残したFrancis Galtonでした。彼は、犯罪者に特有の典型的な顔を作り出すために、いくつかの肖像画を重ねて印画紙に焼き付ける実験を行いました。その結果、合成された肖像画は、元のものよりも見栄えが良くなり、それは不規則な特徴が目立たなくなるためであると述べているのです1)

 このかなり先駆的で少し変わった研究は、ほとんど引用されずに忘れ去られていましたが、ある日突然、研究者たちの注目を集めることになりました。そのきっかけとなったのが、“Attractive faces are only average”(魅力的な顔は平均的なものに過ぎない)という論文でした2)。テキサス大学オースチン校のLangloisとRoggmanは、男性と女性の顔を3名ずつデジタル化し、それらを数学的に平均化した画像の魅力度を被験者に評価してもらいました。その結果、ほとんどの場合、合成された顔は個々の顔よりも魅力的であり、より多くの顔が入力されるほど、魅力的になることが明らかになりました。この手法はGaltonが100年前に行ったものと本質的に同じであり、“平均顔説”として広く受け入れられるようになりました。

 その後、美しい顔がどのような条件で形成されるのかについて、さまざまな報告がなされるようになりました。例えば、左右対称の顔の方が魅力的だとか、皮膚にニキビやシミがなく、均一で滑らかな肌が好まれるとか3,4)。特に、皮膚の滑らかさは重要であり、顔のパーツの配置よりも重視されることが報告されています。


 

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執筆者について

野々村 美宗

経歴

山形大学 学術研究院化学・バイオ工学分野 教授 博士(工学)
花王株式会社において化粧料および身体洗浄料の商品開発に従事した後、山形大学に赴任。2017年より現職。専門は物理化学、界面化学、化粧品学。これまでに生体表面における界面現象のダイナミクス、界面活性剤を用いたエマルション・可溶化物・泡製剤の開発、化粧料・食品の触覚/食感センシングについて研究してきた。著書に『教授にきいた・・・ コスメの科学』、『化粧品 医薬部外品 医薬品のための界面化学』(ともにフレグランスジャーナル社) などがある。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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