【第17回】GCP-SOPライティング - GCPで必要なSOPと作成技法 -

2024/03/01 臨床(GCP)

2022年11月から始まったこのシリーズは今回で最終となる。今回は、いままで紹介したことの復習として、全体の総括をしてこのシリーズを終わりにしたい。

 2022年11月から始まったこのシリーズは今回で最終となる。治験依頼者に求められるSOPをGCP省令の条文に従って説明し、続いて、理解しやすく改訂しやすいSOPの作成技法についてお話してきた。今回は、いままで紹介したことの復習として、全体の総括をしてこのシリーズを終わりにしたい。


GCP省令の構成と治験依頼者のSOP
GCP省令は第一章から第六章までの第1条から第59条までで構成される(図1)。GCP省令第1条(趣旨)で「この省令は・・・法第80条の2第1項、第4項及び第5項に規定する厚生労働省令で定める基準を定めるものとする」と記載されており、この法第80条の2第1項というのがGCP省令第二章であり、第4項というのが第四章、そして第5項というのが第三章を意味する。第二章の章名は「治験の準備」であるが、平成15年6月に GCP省令が改正される以前は「治験の依頼」であったものが、平成15年の改正によって医師主導治験がGCP省令に盛り込まれ「治験の準備」という章名に改まって、第三章と共に第二節が追加された。したがって、第二章と第三章の第二節は医師主導治験に関する条文なので、とりあえずここでは置いておいて第一節の治験依頼者の条文だけを見ていこう。

前述のように法第80条の2で述べている基準を、GCP省令で当てはめると、章名で分かるように、第二章は「治験の依頼の基準」、第三章は「治験の管理に関する基準」第四章は「治験の実施の基準」ということになる。製薬企業やバイオベンチャーなどの治験依頼者は医療機関に治験を依頼し、医療機関が治験を実施し、治験依頼者が治験を管理するというのが治験の流れだ。ということは、第二章と第三章は治験依頼者に関する条文であり、第四章は治験審査委員会と実施医療機関と治験責任医師に関する条文というように、GCP省令はプレイヤーごとに章立てができているということを、既にGCPシリーズの「GCP入門」から幾度となく説明している。
 GCP省令第4条(業務手順書等)には「治験の依頼をしようとする者は・・・治験の依頼及び管理に係る業務に関する手順書を作成しなければならない」と記述されている。これを言い換えるならば、GCP省令第二章(治験の準備)と第三章(治験の管理)に関するSOPを、治験依頼者は作成しなければならないということである。


治験依頼者に必要なSOP
 GCP省令第4条と同条ガイダンスで「手順書を作成しておくこと」とか「手順書に定めておくこと」という記述で、治験依頼者に作成を義務付けているSOPが多く記載されているが、これらの他にも第19条(効果安全性評価委員会の設置)では効果安全性評価委員会の審議に関する手順書を作成することが記載されている。さらに、「医薬品の承認申請のために治験の中間報告書を作成する場合の症例報告書を治験責任医師が保証するための手順書を作成しておくこと」というのが、令和2年のGCPガイダンス改正によって記載された。これらも「作成すること」なので、やはり治験依頼者に作成が義務付けられているということになる。このように第4条の条文タイトルは「業務手順書等」であるが、第4条以外にも作成を求めているSOPが書いてある。


 治験依頼者が作成しなければならないSOPを図2にまとめた。あくまでも一例であって、治験依頼者の組織や規模、あるいは実施している治験の数や相や領域等々によって大きく異なる。それぞれのSOPの記載内容の詳細は、今まで紹介してきた本シリーズをお読みいただくとして、ここでは簡単に触れておこう。
 図2では全部で30ほどのSOPを示した。治験依頼者の組織規模が小さかったり、治験の数が少なかったりということであれば、図の最上部の「SOPの作成と管理、組織体制、意思決定手続き、教育訓練、品質マネジメント」の5本のSOPは例えば「総論」として1つにまとめても良いだろう。逆に規模が大きかったり数が多かったりということであれば、「モニタリング」を「治験開始前のモニタリング」、「治験実施中のモニタリング」、「治験の終了又は中断・中止後のモニタリングの3つに分けても良いし、さらに「モニターの要件と指名」を加えて4本のSOPを作成しても良いだろう。


CROに業務委託する治験依頼者のSOP
 治験依頼者は治験の依頼及び管理に係る業務の全部又は一部をCROに委託できる旨がGCP省令第12条(業務の委託)に記載されている。つまりGCP省令第二章と第三章に係る業務をCROに委託できるということだ。第4条(業務手順書等)では、治験依頼者はSOPを作成しなければならないことが求められているが、例えばモニタリング業務をCROへ委託し、モニターがCROのSOPに従ってモニタリング業務を行うのであれば、治験依頼者は自らSOPを作成する必要はない。
 CROに一部の業務だけではなく全部を委託するのであれば、CROが作成したSOPを使えば良いので、治験依頼者は自社ではSOPを一切作成しなくても良いということになる。しかし、全部委託した場合であっても、治験の最終責任は委託者である治験依頼者が負うことが第12条ガイダンスに明記されている。したがって全部委託したCROが治験で使用した全てのSOPの内容を、治験依頼者は確認しておかなければならない。もちろん治験中に改訂されたSOPを含めて全て入手しておく必要がある。


 CROに全部委託しても、治験計画の届出及び規制当局への副作用等の報告についてはCROに委託することはできないとされている。なぜかというと、第1条(趣旨)で「この省令は・・・法第80条の2第1項、第4項及び第5項に規定する厚生労働省令で定める基準を定めるものとする」と記載されていることを冒頭で述べた。すなわち、治験計画の届出は法第80条の2第2項と第3項、規制当局への副作用等の報告は第6項に記載されているので、これらの業務はGCP省令の範囲外ということになる。
 したがって、治験計画の届出及び規制当局への副作用等の報告については治験依頼者が自ら行う旨のSOPを作成しなければならないことになる。しかし、CROが治験計画の届出及び規制当局への副作用等の報告を行っているのが実態である。厳密にいうとCROに委託というよりは、CRO業務を行っている企業に委託するということになるかもしれない。その場合であっても、届け出や報告の内容に関しては治験依頼者として確認する責務を有するので、その手順をSOPに記載する必要がある。

 治験依頼者は治験の依頼と管理に係る業務の全部又は一部をCROに委託しても、治験の全ての最終責任は治験依頼者が負うことを述べた。したがってCROに業務を委託するにあたって、事前にCROを選定し、治験中はCROの業務を管理監督するという手順を定めておく必要がある。CROに限らず、治験薬の運搬業者や薬物濃度測定機関などの治験に関わる全てのベンダーを適切に選定し、管理することが治験を成功に結び付ける重要な要因である。
 また、被験者に健康被害が生じた場合は、CROに委託した業務であっても補償のための必要な措置を講じておかなければならないことから、補償措置に関するSOPも必要とされる。なお、CROには賠償責任はあるが補償責任はない。その他、CROに全部委託しても、治験依頼者として意思決定手続き、治験薬の製造、記録の保存等のSOPが必要になる(図3)。

 

 

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執筆者について

大場 誠一

経歴

株式会社エスアールディ 信頼性保証室 参与
旧GCP施行当時から国内の製薬企業で試験監査室長としてGCPとGLPの監査を担当。その後の欧州系製薬企業では信頼性保証室長としてGCPとGLPの監査の他、GMPとGPMSPの監査に携わる。そして後の米系CRO(開発業務受託機関)ではQA DirectorとしてGCP監査の責任者。現在は国内CROでGCPと臨床研究の監査、さらにGCP教育やSOPライティングの受託業務を専門としている。またGCPに関連した執筆や多くのセミナーでの講演活動、さらにDVDやe-ラーニングを用いたGCP教育に携わるなど、30年以上にわたってGCPに深く関わり続けている。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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コメント

GMP Platform事務局 / 2024/03/06

>柴田 様
ご指摘頂き、誠に有難うございます。図4の件、修正いたしましたのでご覧頂ければ幸いです。 今後ともGMP Platformをよろしくお願い申し上げます。

柴田 健一 / 2024/03/06

大変勉強になる記事を連載いただき、ありがとうございます。 第17回の図につきまして、本文中で触れられた図4がなく図3が2つ掲載されているようです。ご確認いただけますと幸いです。

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