【第2回】GCP-SOPライティング - GCPで必要なSOPと作成技法 -

2022/12/02 臨床(GCP)

今回はメディカルライティングと教育訓練のSOPに記載すべき手順について。

GCP省令第4条
 GCP省令第4条(業務手順書等)第1項では治験の依頼をしようとする者は・・・手順書を作成しなければならないとしてSOPの作成を義務付けていること、さらに同条ガイダンスでも「手順書を作成しておくこと」や「手順書に定めておくこと」という記載で、やはり治験依頼者に作成を義務付けているSOPがあることも前回紹介した。
 第4条によれば、治験実施計画書や治験薬概要書や総括報告書などの作成に関する、いわゆるメディカルライティングのSOPを治験依頼者は作成しなければならない。さらに、実施医療機関と治験責任医師を選定するためのSOPや、モニタリングと監査の実施に係るSOPや品質マネジメントに関するSOPを作成する必要もある。治験の依頼前に各業務を確定して担当者を割り当てることも第4条で求めており、そのための教育訓練が必要である。今回はメディカルライティングと教育訓練のSOPに記載すべき手順について見てみたい。

メディカルライティングに係るSOP
 治験実施計画書、治験薬概要書、そして総括報告書の作成に関するSOPを作成することが第4条で求められている。そして治験実施計画書についてはさらに第7条(治験実施計画書)と同条ガイダンスで記載すべき事項が記述されている。治験実施計画書に通常含まれているべき具体的事項については、中央薬事審議会答申、いわゆる答申GCPの10を参照することとされている。答申GCPについては前々回のシリーズである「GCP入門【第3回】」で概説しているのでお読みいただきたい。
 治験実施計画書の作成にあたっては監査証跡を念頭に置く必要がある。監査証跡とは事実経過の再現を可能とする文書をいい、いつ誰が案を作成し、いつ誰が点検し、いつ誰が修正し、いつ誰が最終化(出荷判定)したかという、事実経過の再現が可能となるような記録を保存しておく必要がある。これは治験実施計画書に限らず全ての文書記録にいえることであり、医薬品医療機器等法施行規則第43条(申請資料の信頼性の基準)に記載された正確性、完全性・網羅性、保存性でも求められているところだ。
 治験実施計画書には、作成や改訂した日付及び版表示を記載することになっており、さらに治験実施計画書番号を記載することが一般的である。これらの版や治験実施計画書番号の付け方、すなわちどのような番号付けをするのかをSOPで定めておく。版表示は整数だけでも良いし、軽微な変更の場合は小数点以下一桁や二桁の数字を繋げることもある。治験実施計画書番号も同様に、試験順の整数だけの場合もあるし、フェーズや剤型などの略語を繋げる場合もある。いずれにしろ治験依頼者ごとに決めればよいことであって、GCPはもちろんのこと業界での統一した番号付けの方法はない。

 治験薬概要書については第8条(治験薬概要書)と同条ガイダンスで記載すべき事項が記述されており、治験薬概要書に通常含まれているべき具体的事項については、やはり答申GCPを参照するが、治験薬概要書の場合は答申GCPの11である。なお、治験薬概要書とは、治験の実施に必要な治験薬に関する非臨床試験及び臨床試験の成績を編集したものであり、治験責任医師やその他の治験に関与する者が治験実施計画書の項目の根拠を理解するための情報のことである。
 治験薬概要書の内容に関しては、そのデータを提供した専門部門、例えばGLPや薬理などの研究部門等の承認を得ておかなければならないということが、ICH-GCPと答申GCPに記載されているが、GCP省令にはこの記載はない。ICH-GCPを適用範囲に含むSOPであれば、この手順を記載すべきであろう。
 新たな情報が得られた場合には「手順書に従って治験薬概要書を改訂すること」が定められている。すなわち治験薬概要書を改訂する手順をSOPに記述しておかなければならないということである。さらに「手順書に従って少なくとも年に1回治験薬概要書を見直し、必要に応じて改訂すること」も求められている。年に1度見直すということをSOPに記述し、必要であれば改訂するのはもちろん、必要がなければ改訂しなくてもよいのだが、見直したということを記録する手順も記載しておこう。

 総括報告書については第25条(総括報告書)と同条ガイダンスにおいて作成することを求めているが、治験実施計画書や治験薬概要書のように、総括報告書に記載すべき事項についてはGCPには記述されていない。しかし、総括報告書の構成及び内容については、ICH E3を基にした「治験の総括報告書の構成と内容に関するガイドライン」(平成8年5月1日薬審第335号厚生省薬務局審査課長通知)に従ったものであることが求められている。なお、総括報告書は治験の結果を取りまとめた文書のことであるが、結果とはいっても治験を終了した場合に作成するだけではなく、中止したときも作成することとされている。ICH-GCPでは、治験が中断された場合には要約したデータを用いたり、いくつかの章を削除したりという簡略化された報告書が適切であることが記載されている。そして、総括報告書には監査証明書を添付しておかなければならない。
 

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執筆者について

大場 誠一

経歴

株式会社エスアールディ 信頼性保証室 参与
旧GCP施行当時から国内の製薬企業で試験監査室長としてGCPとGLPの監査を担当。その後の欧州系製薬企業では信頼性保証室長としてGCPとGLPの監査の他、GMPとGPMSPの監査に携わる。そして後の米系CRO(開発業務受託機関)ではQA DirectorとしてGCP監査の責任者。現在は国内CROでGCPと臨床研究の監査、さらにGCP教育やSOPライティングの受託業務を専門としている。またGCPに関連した執筆や多くのセミナーでの講演活動、さらにDVDやe-ラーニングを用いたGCP教育に携わるなど、30年以上にわたってGCPに深く関わり続けている。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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