ゼロベースからの化粧品の品質管理【第40回】

2024/01/26 化粧品

微生物汚染対策として、殺菌剤・殺菌装置の具体的な運用方法について。

 

―『現場における殺菌剤・殺菌装置』について―


 化粧品GMPにおいて、品質保証の向上を実際の運用面から考察します。今回は、微生物汚染対策として、殺菌剤・殺菌装置の具体的な運用方法に焦点を当てて考えてみたいと思います。
 先ず、化粧品GMPでは、微生物対策のレベルで高い清潔さが要求されます。このためには、“微生物を付着させない”、“増やさない”、“撃退する”という原則があり、現場の清掃・清浄・殺菌作業が微生物の侵入を防ぐ作業が確実に行われている必要があります。
 第一ステップとして、微生物を付着させないためには、製造現場の環境整備、作業者の衣服や手洗い・消毒、外部からの原料や資材の持ち込みに対する微生物対策が重要です。次に、微生物を増やさないためには、設備や装置の乾燥保存、原料の低温保存が重要です。そして、最後に微生物を撃退するためには、洗浄作業、熱湯殺菌、殺菌剤の適切な使用が不可欠です。
 そして、運用を確実にするためには、理想的にはリアルタイムでのモニタリングが求められますが、実際の状況ではリアルタイムでのモニタリングは難しいことから各手順が確実に実施されることが必要です。しかし、その徹底状況はバラつきがあるのが実情です。
 そこで、今回は製造現場で発生している状況を整理し、殺菌剤の有効な使用方法や効果的な殺菌装置についても整理したいと思います。

1.手順書やSOPに関する微生物対策における実際の課題
① 手順の不明確さによる問題
手順が十分に具体的でないため、作業者ごとに手順が異なることがあります。例えば、"85℃以上の熱湯で殺菌する"という表現では、ホールドすべき時間、温度低下の可能性、流水使用するかどうかなどについての詳細情報が不足しています。
② 誤った手順の使用(妥当性未検証)
手順書には殺菌剤の種類や対象微生物、認められる殺菌効果に関する検証が不足しています。例えば、"75%のアルコールで拭き上げる"という表現では、アルコールの微生物に対する即効性や即座の拭き上げの目的が不明確です。
③ 手順の妥当性は確認済みだが、作業者が把握していない
新人の教育や既存の作業者に対する教育が定期的に行われていないケースがあり、作業者の情報の理解が進んでいるのか疑問を感じます。
④ 物理的な制約による手順の実行の難しさ
手順書にある記載が、物理的な要因により実行が難しい場合があります。例えば、「殺菌処理を行った器具は微生物汚染が起きないように保管する」という指示の場合には、全く微生物汚染がない状態が実現可能かどうか疑問です。
⑤ 作業者による手順書の不正変更と確認の不足
作業者が自主的に手順書を変更したりする可能性や正しい手順で作業が行われているかどうかの確認が欠如しているケースがあります。例えば、教育実施の記録や手順順守の評価手順が不足している場合には注意が必要です。
⑥ 手順の効果検証の不足
使用している洗剤や殺菌剤が、全ての生産品目や使用している原料に対して有効であるかどうか、また、使用時の濃度が適切であるかについて効果検証が行われていないケースがあります。使用する洗剤や殺菌剤が手順書に明記されていたとしても注意が必要です。その場合には、手順が同じ方法で行われていた前提にはなりますが、過去の実績から問題が発生していないことを根拠として懐古的バリデーションの書類を根拠しておくことも一案です。
 

 上記の詳細まで監査等では確認することが難しいとは思いますが、微生物汚染の発生は決して珍しいものではありません。従って、本来は監査でも踏み込んで議論すべき事項ではないかと思います。少なくとも微生物汚染が発生した場合には、手順全体において不備があったことを認識し、それぞれの手順の改善が必要です。手順の不備をすり抜けて問題が発生した事実を認識し、全ての抜け道に対する改善を図ることが重要です。

2.ハザード分析による洗浄や消毒に関するアプローチ
 微生物汚染対策として、接液箇所に対して異物の除去、洗浄、消毒が実施されます。これらの手順が妥当であるかどうかを確認する方法として、目視検査のほか、処理した部分に対して洗い流し水のpH、導電率の測定や洗剤や殺菌剤の残留濃度の測定を行います。また、有効性を確認する手段として、拭き取り検査、ATP測定、残留TOC測定も挙げられます。
 一方、これらの清浄・消毒手順が適正に行われなかった場合に対して、製品への影響を評価し、明確にする必要があります。同時に、手順書やSOP(標準作業手順書)を明確にし、遵守状況をモニタリングし、その結果に対するレビュー体制を整備することが必要です。
 また、接液する装置や治具に関しては、清掃・清浄、消毒、保守が容易にできる設計であることが必要です。更に、プロセスの影響を受けないこと、不浸透性や腐食性のない材質であることや有害な溶出物が発生しない材質であることが求められています。

 

 

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執筆者について

鈴木 欽也

経歴

1980年に㈱資生堂に入社。掛川工場で処方開発・生産技術開発を担当。ネイルエナメルのゲル化剤、色材の開発や調色に関するコンピューターカラーマッチングシステムを開発。他に高圧乳化、凍結乾燥、パーマ剤、ヘアカラー等の特殊技術開発にも従事。
その後、本社生産技術部で海外事業戦略、海外工場建設、生産技術移転、海外薬事対応の業務を担当した後、再び掛川工場でファンデーションやマスカラ生産の移管業務を担当、本社で海外原料・資材・製品調達の業務を担当した後、中国北京工場の取締役工場長として、工場建設とシャンプー、リンスの現地生産化や化粧品の工業会の業務に尽力。
帰国後、掛川工場技術部長、大阪工場技術部長を歴任、FDAの査察受け入れやEU原薬登録を実施。
また、㈱コスモビュティー執行役員 品質管理部長としてベトナム工場、中国工場を建設。現在、㈱ディー・エイチ・シーさいたま岩槻工場の工場長でメーキャップ製品の工場改修・立上げを実施した。2017年から中小企業診断士として、鋳造業、サービス業、建築業等の事業計画作成支援や企業の5S活動支援を実施している。
品質管理に関しては、米国OTC製品の化粧品業界で日本国内初のFDA査察を受け入れ、指摘事項ゼロ件での対応、ヒアルロン酸のヨーロッパ原薬登録・米国FDA登録、ヒアルロン酸の原薬工場棟の増設を責任者として推進した経験を持つ。
公害防止管理者(水質1種、大気1種)、中小企業診断士(埼玉県正会員)、FR技能士、ターンアラウンドマネージャー(事業再生、(一社)金融検定協会認定)、健康経営EXアドバイザー、ISO9001審査員補、2022年5月から(株)エコノス・ジャパン代表取締役

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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