【第10回】GCP-SOPライティング - GCPで必要なSOPと作成技法 -

2023/08/04 臨床(GCP)

今回は、メディカルライティングの1つである総括報告書の作成手順、記録の保存と資料保管施設に関する手順について記載する。

 今回は、メディカルライティングの1つである総括報告書の作成手順、記録の保存と資料保管施設に関する手順について記載する。そして、これらに用いられる言葉の微妙な違いと、PMDAの調査で確認されることの意味合いについて触れてみよう。


総括報告書の作成の手順
 総括報告書とは「治験の結果等を取りまとめた文書」のことであると、GCP省令第25条(総括報告書)で記載されている。一方で、省令として発出される前の旧GCPでは、総括報告書の定義として「治験の終了後、治験の目的、方法及び成績等をまとめた治験に関する報告書」と記載されていた。このように治験の結果とか治験の終了後と記載されているにもかかわらず、第25条では「治験を終了し、又は中止したとき」に総括報告書を手順書に従って作成することになっている。まず、「手順書に従って作成」ということなので、作成するための手順書を作らなければならないということであり、そして作成するタイミングとしては治験の終了時又は中止時ということになる。
 総括報告書の構成及び内容については、「治験の総括報告書の構成と内容に関するガイドライン」(平成8年5月1日付け薬審第335号厚生省薬務局審査課長通知)に従うこととされている。さらに作成手順としては、いつ誰がどのようなデータを基にしてまとめるのかはもちろん必要であるが、作成経緯をしっかり残しておかなければならない。つまり、いつ誰が総括報告書の案を作成し、その案をいつ誰が点検し、いつ誰が修正し、そして最終的に案をいつ誰が承認したのかという事実経過を残す手順が必要である。
 治験が終了したときはもちろん「結果等を取りまとめた」総括報告書を書くことができるのだが、中止したときにも総括報告書を書かなければならない。治験の終了に近づいたときに中止したならばある程度の結果を取りまとめることはできるが、開始してすぐ中止したときは何をどう書くのだろうか。総括報告書の構成及び内容のガイドライン、言い換えればICH E3ということになるのだが、これによれば、中断された試験のような場合は要約したデータを用いたり、いくつかの章を削除したりして簡略化された報告書でも良い旨の記載がある。


記録の保存等の手順
 GCP省令第4条(業務手順書等)の解説、すなわちガイダンスでは「記録の保存等」の業務について手順書を作成することが求められている。「記録の保存」に「等」が令和2年8月のガイダンス改正で追記されたのだ。GCP省令には記録の保存に関する条文が4か所あり、第26条と第26条の12の条文見出しは「記録の保存等」であり、第34条と第41条は「記録の保存」となっている。すなわち、治験依頼者と医師主導治験の「自ら治験を実施する者」は、治験が終了したら実施医療機関の長とIRB(治験審査委員会)の設置者に終了した旨を通知しなければならないと書かれており、記録を保存するだけではなく、通知するということが加わるので「保存等」ということなのだ。
 したがって治験依頼者の記録の保存のSOPには、治験で発生した記録をGCP省令で定められた期間保存する手順だけではなく、治験終了後に記録の保存の必要がなくなったことを実施医療機関の長と治験審査委員会に通知する手順の記載が必要となる。通知する際の文書(レター)のひな型を様式として作成しておこう。

 GCP 省令第26条で「次に掲げる治験に関する記録(文書及びデータを含む。)を・・・」と書いてある。条文見出しでは「記録」と言っているのだが、条文の中では「記録、文書、データ」の 3 つを並列に並べている。データは事実や情報などの無形のものであり、これを有形にしたものが記録と文書である。この「記録」と「文書」の違いを簡単に言うと、「文書」は何かを行う時のもととなるものであって、その結果が「記録」ということになる。例 をあげるならば、治験実施計画書に従って行った結果(データ)を症例報告書に記載するので、この場合は治験実施計画書が「文書」であり、データを記載した症例報告書が「記録」ということになる。「文書」を変えれば改訂であるが、「記録」を変えれば改ざんとなる。しかしSOPでこれらを厳密に分けて記述する必要はないかもしれない。
 GCP省令で求めている「保存」という言葉は、単に段ボール箱に入れて積んでおくということでは、もちろんない。紛失や散逸がないようにということは当然であるが、保存されている文書や記録を、規制当局の求めに応じてすぐに提示できるようにリスト化して保存しておかなければならない。そのために記録文書にバーコードシールを貼って検索が容易になるように工夫している治験依頼者もいる1)

 GCP省令には記録の保存に関する条文が 4 か所あることを述べた。治験終了後に通知することを除いて記載されていることはほぼ同様であり、治験終了後の記録文書の「保存」期間について記載されている。一方で治験薬や治験使用薬に関する条文は多くあるが、いずれも治験終了後ではなく治験実施中における治験薬の「保管」に関する記述だ。これらのことから分かるように、保存と保管という言葉は記録文書と治験薬とで使い分けていているということではなく、治験終了後は「保存」であり治験実施中は「保管」という言葉で使い分けているのだ。しかし前述の文書と記録と同様、SOPでは保存と保管を厳密に分けて記述する必要はないだろう。

 

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執筆者について

大場 誠一

経歴

株式会社エスアールディ 信頼性保証室 参与
旧GCP施行当時から国内の製薬企業で試験監査室長としてGCPとGLPの監査を担当。その後の欧州系製薬企業では信頼性保証室長としてGCPとGLPの監査の他、GMPとGPMSPの監査に携わる。そして後の米系CRO(開発業務受託機関)ではQA DirectorとしてGCP監査の責任者。現在は国内CROでGCPと臨床研究の監査、さらにGCP教育やSOPライティングの受託業務を専門としている。またGCPに関連した執筆や多くのセミナーでの講演活動、さらにDVDやe-ラーニングを用いたGCP教育に携わるなど、30年以上にわたってGCPに深く関わり続けている。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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