医薬原薬の製造【第23回】

2017/02/23 原薬

プラント用マイクロリアクターの限界
 
プラント用マイクロリアクターの問題点は以下の2点です。
1.TypeAの反応を行う場合、どこまで反応系のミクロ化が可能か不明。
2.流路が狭いので、結晶が析出するような反応には使えない。
 
反応系のミクロ化の問題
 
ラボスケールの合成条件を、リアクターをいくつも並べることで条件変更することなくプラントレベルにスケールアップすることができることが、マイクロリアクターのメリットとしてされています。ラボ用のリアクターをいくつも並列に並べるという発想を実現しているメーカーはほとんどありません。日立がラボ用のリアクターを20個並列に並べたパッケージ製品を上市しておりますが、20倍のスケールアップですので、パイロットスケールにも達していません。現実はどのリアクターメーカーも流路を大きくする検討を行い、大型リアクターを開発しています。これは、ラボ用のリアクターを100個や1000個並列につなぐことが技術的に難しいか、あるいは経済的に問題があるからだと思われます。

リアクターの表に示したように、大型リアクターの場合、流路径はラボスケールの10倍以上にもなります。この場合、2液のミキシングを流路0.1mm程度のラボスケールのマイクロリアクターと同じようにできるのかという問題があります。化学工学計算でミキシング効率を求めることができれば良いのでしょうが、ミキシング部位は複雑な構造をしていますので、計算は困難ではないかと思います。結局、2mm以上の大きな流路で2液の撹拌が効率よくできるかどうかリアクターをテストするしかないでしょう。マイクロリアクターはラボの反応条件をそのままプラントスケールに適応ができるという特徴があると言われてはいましたが、結局パイロットやプラントスケールでは、流路径が大きくなりますので、スケールアップ検討は必要であることになります。ただし、パイロットスケール用のリアクターで条件検討をし、プラントスケールにする場合、リアクターを数個重ねることで、パイロットからプラントへのスケールアップを反応条件の変更なしに実施できるというメリットはあるでしょう。
 
結晶の析出の問題
 
BuLiやHexLiを使う反応がTypeAの反応で、マイクロリアクターでうまく反応を実施することができることが分かっています。しかし、連続運転を何時間あるいは何日可能だったのかという報告はほとんどありません。何日もまた何カ月も連続運転する間に、これらの反応系に少量の水が系に入りますと、LiOHが析出してくる可能性があります。LiOHは、水に可溶ですが、「EtOHはわずかに溶ける。Etherには不溶。」という報告があります。アルキルリチウムの反応に良く使われるTHFに対するLiOHの溶解度の文献は見当たらないのですが、LiOHのTHFへの溶解度は上記データから相当に低いと思われます。従って、微量の水の混入は徐々に流路中にLiOHを析出させることになるでしょう。反応初期は問題なくても、極微量の水の混入が徐々に徐々にLiOHを流路に蓄積させ、流路を狭くしていくでしょう。流路が完全にふさがれなくとも、流路の一部が流れを邪魔することになると、圧損が大きくなります。スケールアップは、反応ブロックをいくつも重ねて行いますが、その際、すべての反応槽に均一に圧損が大きくなれば良いですが、特定の反応器で圧損が大きくなると、全体の流量バランスが崩れてきて反応がうまくいかなくなる可能性があります。また、完全に閉塞してしまいますと、洗浄が必要になってきます。流路の狭小化や閉塞が起こった場合、製品品質の問題が発生します。前述しましたように、連続反応は、どれだけ安定に長く運転できるかという問題があります。この点について、マイクロリアクターの開発者はほとんど言及していません。スケールアップしたリアクターでどの程度長期運転が可能かについては、大量の原料が必要になりますので、試験結果がそもそもほとんどないということもありましょう。

流路径の閉塞の問題を解決するために、Lonza社では、マイクロリアクターのシステム全体を超音波で振盪させることを試みています。詳細なデータは公表されていませんが、このようなシステムを考えること自体、流路閉塞の問題は重大であることを示していると思われます。
 
著者は、アルキルリチウムやグリニャール試薬の反応での析出するLiOHやMgOHがプラント用マイクロリアクターの長期運転でどの程度反応系に影響するのかについて、工場の運転の立場からは、大きな関心があります。この問題に対する答えが無い限り、自分が工場責任者であった場合、アルキルリチウムやグリニャール反応にマイクロリアクターを導入する気にはなれないです。

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執筆者について

森川 安理

経歴 アンリ・コンサルティング 代表。
大学修士課程で有機化学を専攻後、1977年旭化成工業(株)入社。スクリーニング化合物の合成、プロセス化学研究に一貫して従事。この間薬学博士号取得。その後、医薬原薬の工場長を10年経験。工場長として、米国、イタリア、豪州、韓国の当局の査察および、制癌剤を中心にする治験薬の受託生産を経験。旭化成ファインケム(株)を2013年2月末退職。2013年3月より現職。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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