厚労省「コンピュータ化システム適正管理ガイドライン」の要点(11)

2013/02/12 施設・設備・エンジニアリング

4.新ガイドラインとその解説(第10回の続き)
 新ガイドラインにおける重要な項目について以下に説明を加えた。より詳細な解説については日薬連から発行される解説書を参照して頂きたい。
 
5. 検証業務
5.1 バリデーションの全体計画に関する文書の作成
検証責任者は、コンピュータ化システム管理規定に基づき、システムの検証を行う場合には、実施するバリデーションの全体計画に関する文書(以下「バリデーション計画書」という。)を作成するものとする。なお、バリデーション計画書は「4.3システムアセスメント」により実施した評価結果等に基づき作成する。なお、検証業務は開発業務と併行して行われることもあるため、バリデーション計画書は開発段階の適切な時期に作成する。
また、「6.6変更の管理」においてバリデーションが必要となった場合は、変更の状況にあわせて適宜バリデーション計画書を作成すること。バリデーション計画書には、原則として次の事項を記載するものとする。また、必要な場合には詳細なリスクアセスメント、供給者監査等の計画についても記載すること。
(1) 目的
(2) システム概要
(3) 責任体制と役割 ① 組織 ② 検証責任者
(4) 適用される法規制及び適用する規定等
(5) バリデーション方針
 ① バリデーションの範囲及びバリデーションとして実施すべき項目等
(6) スケジュール
(7) バリデーション実施時の変更・逸脱の管理に関する手順
 
 旧ガイドラインはコンピュータのシステムエンジニアがシステム開発の概念に基づいて作成したことから、もともと「バリデーション」の概念が薄く、据付時適格性評価(IQ)、運転時適格性評価(OQ)、性能適格性評価(PQ)の表現や明確な要件が記載されていなかった。
 このような背景もあり旧ガイドラインでは「検証業務」は独立しておらず、開発業務における「設置・運用テスト」の一環として組み込まれていた。
 新ガイドラインの改訂のハイライトとも言える「検証業務」は旧ガイドラインから大幅に改定され、明確でなかった適格性評価の取組みを明らかにした。 検証業務はバリデーション計画書と報告書に挟まれる形で、設計時適格性評価(DQ)、据付時適格性評価(IQ)、運転時適格性評価(OQ)及び性能適格性評価(PQ)から構成されている。(図1)
 また、新ガイドラインにおける検証業務で注意が必要な点は、GAMP5との関係である。新ガイドラインはGAMP5との整合性に配慮しながら作成されているが、検証業務に関してはあえてGAMP5ではなくGAMP4の考え方を踏襲している。GAMP5では適格性評価(Qualification)の考え方はなく「テスト」という取組みに変わっている。しかし、欧米でもまだGAMP4からGAMP5への移行は十分に進んでおらず、検証業務での「テスト」の内容が明らかになっていないことから、新ガイドラインでは実績のある適格性評価としている。
 なお、バリデーション計画書の作成にあたってはDQの前に作成されることから、かなり早い段階であることに注意が必要である。
 
 


(図.1)新旧ガイドラインにおける検証業務の考え方

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執筆者について

荻原 健一

経歴 株式会社シ―・キャスト 代表取締役社長。
1975年(株)横河電機製作所入社。
分散型制御システム(DCS)の開発/ マーケティング担当。その後、石油・化学のSEを経て、医薬品向けシステムエンジニア。「全社Part11プロジェクトリーダ」、医薬システムコンサルティング部長 等。
2006年から(株)野村総合研究所 ヘルスケア事業戦略研究室。上席コンサルタント 等。NRI認定ビジネスアナリスト。
2011年7月より現職 。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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