ゼロベースからの化粧品の品質管理【第6回】

2021/02/19 化粧品

 前回は、形骸化しがちな化粧品GMPの体制について、体制を整えるツボ、5Sの活動経験を元にお話しました。今回は、化粧品GMPの手順書を作る具体的なプロセスのお話をするにあたってISO9001の認証を取得している企業ではISO9001と共通の手順書類を活用されていますので、このケースで気になっている点について説明をします。

 先ず、ISO9001はISO9001:2015に改定され要求事項や用語も大きく改定されていますのでISO22716が制定された当時とは大きく様変わりしています。その為、この要求事項に従い、各社の実態に合わせてリスク認識を行い、その対応を図る前提で手順書類が改訂されていれば問題ありません。しかしながら、従来多く見られたようにISO9001の要求事項に捉われて要求事項の順番で、要求事項の項目を列挙したシステムを整えるだけに止まっているケースでは、手順書も化粧品GMPで求めるリスクに対応した具体的行動に結びつかないため要注意です。特に、ISO9001の認証の継続だけに注力されている企業では、化粧品GMPに関しては、例えばお取引先等の外部から査察が行われたとしても手順書レベルまでは行われないことから、レベルも様々で、雛形そのままの場合もあり、本来求めるものとは異なっているもの、大きく異なっているケースがあり要注意です。

1.ISO9001と化粧品GMPとの要求事項の基礎的な違い
①.システムの要求の考え方
 それぞれのシステムが求める究極の仕組みは、お客さま満足につながる製品、サービスの提供です。ここで難しいのは、極端な言い方をすればISO9001は品質がそこそこでもお客さまが満足する品質水準ならば問題なく、GMPは衛生的で、高い品質であることが前提になっているため体制を構築するにあたってアプローチのプロセスが異なります。
 また、ISO9001は経営的要素が全面に出されており、環境分析を行うことも明記されています。勿論、化粧品GMPの体制構築、製品の市場出荷判定においても法規、安全性情報等の動向と適切に行うことが求められていますので、要求が抜けている訳ではありません。しかしながら、ISO9001では外部情報ソースを明記する必要があり、具体的な行動に結び付く意味ではISO9001の方がこの事項に関しては具体的かもしれません。
 簡単にISO9001と化粧品GMPとの要求事項の違いについて見てみますと、
・ISO9001:システムが整っていること。品質保証のレベルまでは要求されていない。
 課題に対してPDCAを回す。課題の認識がキーポイントである。
・化粧品GMP:製品の品質保証を保証できるシステムレベルであること。
逸脱に対してPDCAを回す。構造設備の要求事項も含む品質リスクに対してシステムを構築し、品質保証を確保する。
②.適用範囲
・ISO9001:経営的視点で、トップマネジメントで運用。設計から販売までの全プロセスが対象。
・化粧品GMP:原材料・仕掛品の受け入れから製品の出荷までのプロセスが対象。設計、物流は対象外。法規面ではGQP、GVPによりお客さまが使用されるまでの間の品質保証する体制が必須となっている。

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執筆者について

鈴木 欽也

経歴

1980年に㈱資生堂に入社。掛川工場で処方開発・生産技術開発を担当。ネイルエナメルのゲル化剤、色材の開発や調色に関するコンピューターカラーマッチングシステムを開発。他に高圧乳化、凍結乾燥、パーマ剤、ヘアカラー等の特殊技術開発にも従事。
その後、本社生産技術部で海外事業戦略、海外工場建設、生産技術移転、海外薬事対応の業務を担当した後、再び掛川工場でファンデーションやマスカラ生産の移管業務を担当、本社で海外原料・資材・製品調達の業務を担当した後、中国北京工場の取締役工場長として、工場建設とシャンプー、リンスの現地生産化や化粧品の工業会の業務に尽力。
帰国後、掛川工場技術部長、大阪工場技術部長を歴任、FDAの査察受け入れやEU原薬登録を実施。
また、㈱コスモビュティー執行役員 品質管理部長としてベトナム工場、中国工場を建設。現在、㈱ディー・エイチ・シーさいたま岩槻工場の工場長でメーキャップ製品の工場改修・立上げを実施した。2017年から中小企業診断士として、鋳造業、サービス業、建築業等の事業計画作成支援や企業の5S活動支援を実施している。
品質管理に関しては、米国OTC製品の化粧品業界で日本国内初のFDA査察を受け入れ、指摘事項ゼロ件での対応、ヒアルロン酸のヨーロッパ原薬登録・米国FDA登録、ヒアルロン酸の原薬工場棟の増設を責任者として推進した経験を持つ。
公害防止管理者(水質1種、大気1種)、中小企業診断士(埼玉県正会員)、FR技能士、ターンアラウンドマネージャー(事業再生、(一社)金融検定協会認定)、健康経営EXアドバイザー、ISO9001審査員補、2022年5月から(株)エコノス・ジャパン代表取締役

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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