基礎から学ぶeCTD【第8回】

2020/09/25 臨床(GCP)

松井 一

はじめに
 前回は、新医薬品の承認申請資料として提出が義務化された申請電子データで用いられているCDISC標準のうち、SDTM(Study Data Tabulation Model)について解説した。今回は、申請電子データ提出で用いられているCDISC標準のもう一つの仕様であるADaM(Analysis Data Model)とその他の申請電子データ提出資料、および申請電子データ提出対応の留意事項について解説する。

1.  ADaMの基礎
 前回解説したSDTMは、統計解析を行うようにはデザインされていない。そのため臨床試験の統計解析や帳票出力で利用するために開発されたのがADaM標準であり、ADaMデータセットを利用することにより、規制当局の審査官が、統計解析や帳票作成のためのプログラミング作業が大幅に軽減される。

1.1.    ADaMとは
 ADaM は、解析データセットのデータ構造と関連するメタデータを明確に記述する標準である。ADaMでは、臨床試験の目的を科学的に評価出来る事を可能にするために、変数、オブザベーション、解析データセットが必要に応じて導出される。データセットのコンテンツは、解析データセットが、解析における科学的かつ統計学的な根拠に基づき明確なコミュニケーションを提供するという重要な原則の下、試験の科学的、医学的目的に応じて決定される(出典:「CDISC標準の紹介」-医学研究の効率化のために-、 CDISC発行)。

1.2.    ADaMの構成
・ADSL (subject-level analysis dataset)
 被験者背景情報、投与群の状況、ランダム化因子、サブグループ化変数、重要な日付などを含む、1被験者1レコードのデータセット。
・BDS (Basic Data Structure)
 ADaMの基本となるデータ構造で、被験者、解析パラメータ、解析時点毎にシングルまたは複数レコードをもつデータセット構造。
・ADTTE(The Time-to-Event Analysis Dataset)
 BDSに従ったTime-to-event解析用の基本構造。
・ADAE(Adverse Event Analysis Datasets)
 有害事象の一覧情報を事象ごとに1レコードのデータセットで、データ構造はBDS。

1.3.    ADSLの変数
ADSLの必須変数を以下に示す。
・  STUDYID(試験識別ID)
・  USUBJID(試験個別被験者識別ID)
・  SUBJID(被験者識別ID)
・  SITEID(施設識別ID)
・  AGE(年齢)
・  AGEU(年齢単位)
・  SEX(性別)
・  RACE(民族) 
・  ARM(計画された投与群)
・  TRTxxP(投与時期ごとの計画された投与群:xxは時期を示す→01 , 02など数値が入る)
・  TRTSDT(治療開始日)
・  TRTEDT(治療終了日)

1.4.    トレーサビリティ
 ADaMの基本原則として、トレーサビリティがある。ADaM Implementation Guide v1.1では、ADaM datasets and associated metadata must provide traceability to show the source or derivation of a value or a variable (i.e., the data’s lineage or relationship between a value and its predecessor(s)).とあり、ADaMデータセットと関連するメタデータは、元データや派生値・変数とのトレーサビリティを明らかにしなければならない。
 SDTMとADaM分析データセット間のトレーサビリティは、FDAやPMDAの主要な関心事項である。トレーサビリティには、メタデータトレーサビリティとデータポイントトレーサビリティの2つのレベルがある。メタデータトレーサビリティは、メタデータとして使用されるアルゴリズムと派生された生産物(define.xmlファイルなど)を記述することにより、生データから解析データ情報がどのように作成されたかを説明する。一方、データポイントトレーサビリティは、先行レコードに関連したSDTMに由来するレコード、またはこれらの派生レコードである。

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執筆者について

松井 一

経歴 外資系製薬企業にて、20年以上に渡り、R&D情報管理ならびにCSVに従事した。2012年からは、株式会社シーエーシー、CACエクシケアおよびCAC クロアにて、製薬R&Dの情報管理、CSV、および申請業務に関する業務コンサルティング、CRO業務の品質保証や信頼性保証を行った。現在は、シーエーシーにて、デジタルヘルスソリューションのアドバイザーを務めている。
eCTDに関しては、ICH M8にエキスパートとして参加し、eCTD v3.2.2のメインテナンスならびにeCTD v4.0の仕様策定に従事した。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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