ちょっとだけ査察官の立場から見た海外当局によるGMP査察

2012/08/27 品質システム

はじめに
 
 ご縁があってGMPの翻訳や通訳に関わる機会があり、GMPが頭にはいっている通訳になりたい、と思いつつこれまで査察通訳の仕事をしてきました。通訳を務めた査察官と仲良くなり、査察官は査察をどうとらえているかを教えていただくことも多々あります。そういうわけで、皆さんが専門的な知識について書かれている中、私の記事は「ちょっとだけ査察官の立場から見た査察」というタイトルになりました。
 
 
査察官にとっての査察
 
 査察官は、慣れない外国で、何日もホテル暮らしをしながら、限られた日数の中で決められた査察項目をこなさなければならないという大きなストレスを抱えています。しかも一国に滞在中に査察する企業はたいてい何社にもわたります。ですから、査察がスムーズに行くかどうかは、査察官にとって重大な課題になります。停滞せずに進行するとそれだけで、査察官は初めて訪れる企業を相手に仕事をする緊張と先の展望はどうなるだろう、という思いから解放され、その先の展開が好ましくなる場合が多いようです。それを踏まえ、私は自分を「コミュニケーション・ファシリテーター」(コミュニケーションを助ける人)と思って査察通訳をしています。通訳の際には言葉をそのまま訳すのではなく、何をきかれているか、何と答えているか、その核の部分を訳し、査察という目的に向けた両者の円滑なコミュニケーションがとれるようにします。また、できるだけ企業にとってよい形で査察が進むように配慮しつつ、査察官とはニュートラルな立場の通訳として友好的な関係を築くように心がけ、通訳という「橋」を介して、査察官と査察される企業の間に良好な関係が築けるようお手伝いをします。査察官のストレスが軽減するように配慮し、楽しく、リラックスして仕事ができるようにしてあげると、査察の結果が好ましい場合が多いように思います。査察官も人間ですから、楽しく仕事ができ、企業側の方々を理解して、人間的な関係が築けると、指摘されなくてもいい些末なことまで指摘されずにすむというのが私の実感です。
 

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執筆者について

山口 晶子

経歴 (有) ティ・ティ・ティ ステュディオ 代表取締役
外資系製薬会社での通訳・翻訳を経験後、フリーランスを経て1998年にTTT Studio Ltd. Tokyo を設立。
医薬分野の通訳・翻訳で30年以上の経験を持ち、FDA査察をはじめ、模擬査察、企業査察で豊富な通訳経験を持つ。
翻訳では、CGMP 全文の日本語訳のほか、バリデーション文書、臨床試験報告書、CMC、DMF関連文書の翻訳など多数実績あり。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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