ゼロベースからの化粧品の品質管理【第50回】
―GMPの基礎となる5S活動・洗浄作業・殺菌作業の見直し―
化粧品業界におけるGMP(Good Manufacturing Practice)の適切な運用は、製品の安全と品質を確保するために欠かせません。今回は、化粧品GMPの基盤となる5S活動、清掃作業および殺菌作業における留意点と課題について整理し、改善すべきポイントについて考えてみたいと思います。
化粧品GMPの実施においては、ISO22716の要求事項への対応が基本となりますが、最近ではISO9001との違いも理解しながら、双方の管理体制を融合した効率的な運用が求められています。このGMPの運用において一般衛生管理の徹底は最重要項目の一つです。衛生管理の中で交差汚染や二次汚染の防止は安全な製品づくりの基本となっています。原料や材料が工場に搬入される段階から出荷までの各工程で衛生管理が必要とされており、交差汚染防止策に関しては、原料および材料の保管方法の適正化や従業員の手洗い、器具や製造装置の洗浄と消毒の徹底による対応が求められています。
しかし、実際の製造現場を見てみると、こうした洗浄や消毒作業がルーチンワーク化しており課題となっています。多くの現場では、手順が決められているものの、「作業をこなすだけ」となっており、効果の追求が疎かになりがちです。生産活動では効率性が重視されており、洗浄・消毒作業の質の維持が求められているものの、従来の洗浄、殺菌作業を手順通りに単にこなしているだけでは大きな事故を起こしかねません。
衛生状態を維持するためには、ルーチンの作業を単なる義務として捉えるのではなく、実際の効果を意識した取り組みが必要です。そこで、今回は清掃や殺菌作業に関して改善点の洗い出しをすると共に、5S活動(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)を通じて、常に清潔な作業環境を保ち、効率的な洗浄作業・殺菌方法を考えてみたいと思います。その結果、交差汚染や二次汚染のリスクの低減に繋げて頂きたいと思います。
1.効率的な洗浄方法
製造所の監査を行う際、洗浄に関する手順書や使用される洗浄剤を確認しますが、これらの文書が整備されているからといって、実際の現場での作業が問題ないとは言えません。さまざまな汚れに対して、使用する洗浄剤の種類や濃度、液温、洗浄後の付着物や洗剤残りの確認が徹底されていることが必要です。
乳化製品の処方設計では、界面活性剤の選定においてHLBや有機概念図、相図の活用が行われますが、洗浄剤の選定は必ずしもロジカルではないと感じます。また、現場では手順書に基づ洗浄作業が十分に徹底されていないのが現状です。
易溶性の「塩類」は水やお湯で容易に除去できますが、高分子などの「難溶性物質」は他の物質との相互作用により性質が変わることがあります。また、化粧品には油脂類などの「油性物質」が多く含まれ、スクラブ剤などの「不要物」が存在する場合もあります。したがって、適切な洗浄剤とさまざまな洗浄器具の使用が不可欠です。
洗浄作業の基本は物理的洗浄ですが、力任せではなく、化学的な洗浄剤の使用(種類、温度、濃度)と、科学的な洗浄メカニズムに基づくアプローチが必要です。しかし、実際の作業現場では、QC活動がなければルーチン的な作業にとどまっているのが現状ではないでしょうか?
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