ゼロベースからの化粧品の品質管理【第50回】

2024/11/22 化粧品

今回は、化粧品GMPの基盤となる5S活動、清掃作業および殺菌作業について。

 

―GMPの基礎となる5S活動・洗浄作業・殺菌作業の見直し―

 化粧品業界におけるGMP(Good Manufacturing Practice)の適切な運用は、製品の安全と品質を確保するために欠かせません。今回は、化粧品GMPの基盤となる5S活動、清掃作業および殺菌作業における留意点と課題について整理し、改善すべきポイントについて考えてみたいと思います。
 化粧品GMPの実施においては、ISO22716の要求事項への対応が基本となりますが、最近ではISO9001との違いも理解しながら、双方の管理体制を融合した効率的な運用が求められています。このGMPの運用において一般衛生管理の徹底は最重要項目の一つです。衛生管理の中で交差汚染や二次汚染の防止は安全な製品づくりの基本となっています。原料や材料が工場に搬入される段階から出荷までの各工程で衛生管理が必要とされており、交差汚染防止策に関しては、原料および材料の保管方法の適正化や従業員の手洗い、器具や製造装置の洗浄と消毒の徹底による対応が求められています。
 しかし、実際の製造現場を見てみると、こうした洗浄や消毒作業がルーチンワーク化しており課題となっています。多くの現場では、手順が決められているものの、「作業をこなすだけ」となっており、効果の追求が疎かになりがちです。生産活動では効率性が重視されており、洗浄・消毒作業の質の維持が求められているものの、従来の洗浄、殺菌作業を手順通りに単にこなしているだけでは大きな事故を起こしかねません。
 衛生状態を維持するためには、ルーチンの作業を単なる義務として捉えるのではなく、実際の効果を意識した取り組みが必要です。そこで、今回は清掃や殺菌作業に関して改善点の洗い出しをすると共に、5S活動(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)を通じて、常に清潔な作業環境を保ち、効率的な洗浄作業・殺菌方法を考えてみたいと思います。その結果、交差汚染や二次汚染のリスクの低減に繋げて頂きたいと思います。

1.効率的な洗浄方法
 製造所の監査を行う際、洗浄に関する手順書や使用される洗浄剤を確認しますが、これらの文書が整備されているからといって、実際の現場での作業が問題ないとは言えません。さまざまな汚れに対して、使用する洗浄剤の種類や濃度、液温、洗浄後の付着物や洗剤残りの確認が徹底されていることが必要です。
 乳化製品の処方設計では、界面活性剤の選定においてHLBや有機概念図、相図の活用が行われますが、洗浄剤の選定は必ずしもロジカルではないと感じます。また、現場では手順書に基づ洗浄作業が十分に徹底されていないのが現状です。
 易溶性の「塩類」は水やお湯で容易に除去できますが、高分子などの「難溶性物質」は他の物質との相互作用により性質が変わることがあります。また、化粧品には油脂類などの「油性物質」が多く含まれ、スクラブ剤などの「不要物」が存在する場合もあります。したがって、適切な洗浄剤とさまざまな洗浄器具の使用が不可欠です。
 洗浄作業の基本は物理的洗浄ですが、力任せではなく、化学的な洗浄剤の使用(種類、温度、濃度)と、科学的な洗浄メカニズムに基づくアプローチが必要です。しかし、実際の作業現場では、QC活動がなければルーチン的な作業にとどまっているのが現状ではないでしょうか?

<洗浄の基本>
① 洗浄は汚れを対象面から除去する。そのためには「分離」、「溶解」、「分解」によって除去します。
② 「分離」させるためには物理的に剥がす、例えばブラシやスクレバー、高圧水等を使用します。
a) 埃等が付着:吸引機で吸い取る、或いは、イオナイザー等で電気的に中和した後に吸引する等を行います。付着力に比べて強い力が必要です。その場合には、帯電したものを中和することも行いますが、そもそもの静電気の帯電状況を下げるためには作業環境の湿度をコントロールすることも重要な方策です。
b) 弱電気・分子間力で付着:水等で濡らして拭き取る。必要以上に強い力で擦ったり、洗浄剤をむやみ使ったりすることは時間やコスト面で無駄になるだけでなく、洗剤を使うリスクにも配慮が必要になります。
c) 固まった固着した状態:スクレバー等で剥ぎ取る、高圧洗浄機等の高圧水で剥ぎ取る。この状態以降の付着状態では、化学的な処理との組み合わせが必衰になります。弱アルカリ洗剤や中性洗剤の使用による処置が必須となります。この場合、大きな除去力を加えると対象表面を傷めたり、傷つけたりし、結果的に微生物汚染のリスクを高める状態になったりしますので注意が必要です。
③ 「分離」を化学的に行う場合には、界面活性剤を使うことになります。その場合には、先ず界面活性剤が上手く吸着し、浸透、それから汚れを分離、界面活性剤により乳化、分散した後に、洗浄液中に分散され、すすぎにより洗い流されます。
④ 「溶解」は結晶をバラバラにし、水やアルコール、低分子炭化水素に溶解します。有機溶剤、酸、弱アルカリ剤を使用します。装置や用具の金属や樹脂・パッキンへの影響を考慮する必要があります。
⑤ 「分離」分子を分解して性質を変えて剥がします。酸化剤や強アルカリ剤を使用します。労働安全面、使用環境、使用後の処理について配慮が必要です。装置や用具は、直接使用するもの以外にも飛散、回収、廃液に関する設備類の材質や仕様についても配慮が必要になります。

 

 

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執筆者について

鈴木 欽也

経歴

1980年に㈱資生堂に入社。掛川工場で処方開発・生産技術開発を担当。ネイルエナメルのゲル化剤、色材の開発や調色に関するコンピューターカラーマッチングシステムを開発。他に高圧乳化、凍結乾燥、パーマ剤、ヘアカラー等の特殊技術開発にも従事。
その後、本社生産技術部で海外事業戦略、海外工場建設、生産技術移転、海外薬事対応の業務を担当した後、再び掛川工場でファンデーションやマスカラ生産の移管業務を担当、本社で海外原料・資材・製品調達の業務を担当した後、中国北京工場の取締役工場長として、工場建設とシャンプー、リンスの現地生産化や化粧品の工業会の業務に尽力。
帰国後、掛川工場技術部長、大阪工場技術部長を歴任、FDAの査察受け入れやEU原薬登録を実施。
また、㈱コスモビュティー執行役員 品質管理部長としてベトナム工場、中国工場を建設。現在、㈱ディー・エイチ・シーさいたま岩槻工場の工場長でメーキャップ製品の工場改修・立上げを実施した。2017年から中小企業診断士として、鋳造業、サービス業、建築業等の事業計画作成支援や企業の5S活動支援を実施している。
品質管理に関しては、米国OTC製品の化粧品業界で日本国内初のFDA査察を受け入れ、指摘事項ゼロ件での対応、ヒアルロン酸のヨーロッパ原薬登録・米国FDA登録、ヒアルロン酸の原薬工場棟の増設を責任者として推進した経験を持つ。
公害防止管理者(水質1種、大気1種)、中小企業診断士(埼玉県正会員)、FR技能士、ターンアラウンドマネージャー(事業再生、(一社)金融検定協会認定)、健康経営EXアドバイザー、ISO9001審査員補、2022年5月から(株)エコノス・ジャパン代表取締役

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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