【第6回】治験に係るベンダーの要件調査

2024/10/04 臨床(GCP)

今回は要件調査票(チェックリスト)を作成し、訪問調査を行う場合について。

 今回は臨床検査機関と薬物濃度測定機関に対する要件調査票(チェックリスト)を作成し、これらの施設の訪問調査を行う場合について紹介しよう。

臨床検査機関の要件調査
 治験で必要とされる臨床検体の検査を行う場所は3つに分類される。①実施医療機関の検査室で行う場合、②実施医療機関が指定する検査機関で行う場合、そして③治験依頼者が指定した検査機関で行う場合である。通常の診療においては、病院では①が多く、診療所(クリニック)では②が多い。治験においても同様であるが、これに加えて③が多く行われる。この③の場合を中央測定とか集中測定とか呼んでいる。すなわち、実施医療機関による測定機器や試薬などの違いによるデータの偏りを少なくするために、特定の検査機関に検査検体を集中して測定するのであり、そのために治験依頼者が検査機関を選定して特定することが必要となってくる。

 要件調査票の内容、すなわち調査のチェック項目としての基本情報は他のベンダーの要件調査を行うときと変わらずに企業名や所在地、設立年月などを調べるのはもちろんであるが、臨床検査機関はGLP組織を設置していることが、他のベンダーと大きく異なるところであろう(図1)。したがって、規制当局によるGLP適合性調査の状況(GLPの種別、調査年月日、評価結果)について確認しておこう。さらにGLP省令の他、PMDAがGLP調査時に使用する医薬品GLPチェックリストの内容を盛り込んで調査票を作成しておいたほうがよい。
 治験の検体を扱う検査室に適切な基準、すなわちgood practicesが必要であることが、国際的に認識されるようになった。そのためにGCPとGLPを統合させたGCLP(Good Clinical Laboratory Practice)GuidelinesがWHOと英国QA研究会(BARQA)によって2003年に公開された。検査機関を調査するのであればこのGCLPの記載項目をチェックリストに盛り込もう。
 検査機関であるからには臨床検査技師の有資格者はいるはずであり、その数、さらに国家資格だけではなく、業界団体や学会などの認定資格者について確認しておいても良いだろう。特に、計画している治験に関連する資格であれば必須の調査項目とすることが必要である。

 GCP省令第4条ガイダンスで「治験依頼者は、治験に係る検体等の検査機関(実施医療機関の検査室等を含む。)において、検査が適切に実施されて治験に係るデータが信頼できることを保証するため、当該検査機関における精度管理等を保証する記録等を確認すること。」と記載されている。したがって治験依頼者として検査機関の「精度管理を保証する記録」(Lab Certificate)を確認しなければならない(図2)。米国病理医協会(CAP:College of American Pathologists)が行っている評価プログラム(CAPサーベイ)に参加している検査機関は多い。ISO15189は臨床検査室の品質と能力に関する国際規格であり、これも実施医療機関の検査室を含め取得しているところは多い。この他に日本医師会や検査技師会のサーベイに参加している検査機関もある。これらがLab Certificateである。

 

 

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執筆者について

大場 誠一

経歴

株式会社エスアールディ 信頼性保証室 参与
旧GCP施行当時から国内の製薬企業で試験監査室長としてGCPとGLPの監査を担当。その後の欧州系製薬企業では信頼性保証室長としてGCPとGLPの監査の他、GMPとGPMSPの監査に携わる。そして後の米系CRO(開発業務受託機関)ではQA DirectorとしてGCP監査の責任者。現在は国内CROでGCPと臨床研究の監査、さらにGCP教育やSOPライティングの受託業務を専門としている。またGCPに関連した執筆や多くのセミナーでの講演活動、さらにDVDやe-ラーニングを用いたGCP教育に携わるなど、30年以上にわたってGCPに深く関わり続けている。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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