【第3回】治験に係るベンダーの要件調査

 ベンダーの要件調査で使用する要件調査票(質問書、チェックリスト)に記載する一般的な項目について前回紹介した。今回はベンダーごとの要件調査票の記載内容について紹介しよう。

要件調査票の基本情報
 どんな業種(業態)のベンダーであっても、社名や所在地あるいは事業内容や社員数を聞いておく必要があろう(図1)。エクセルでもワードでもなんでも良いのだが、調査票は表形式で作ったほうが、作りやすいし回答もしやすい。図1に示した内容程度であればわざわざ問い合わせるまでもなくホームページや会社案内パンフレットで分かることではあるが、最新情報を知る必要もあることから、やはり調査票を作って、ベンダーに送って情報を書き入れてもらった方が良い。
 この基本情報は全てのベンダーに共通することであり、この基本情報の記入表の次から以下に示すベンダーごとの調査票が付くことになる。

開発業務受託機関の調査票
 開発業務受託機関(CRO:Contract Research Organization)の調査票を図2に示した。上述のようにエクセルやワードで表形式によって作成するのが、随所に自由記載の欄を設けたほうが良い。聞きたいことがCROには十分伝わらないこともあるし、聞きたいこと以上にCROにとっては答えたいこともある。そのための自由記載欄である。
 基本情報の部分は図1とほぼ同じであるが、「離職率(定着率)」という言葉が出てくる。すなわち1年間に離職した人の割合を指す数値であり、例えば100人の社員が在籍していて、1年間に10人が離職するのであれば離職率は10%ということになる。モニタリングなどの長期間にわたる業務を委託した場合に、担当モニターが離職によって頻繁に交代するようでは業務の引継ぎが十分に行われるか心配になると同時に、担当施設(実施医療機関)にも迷惑をかけることになるかもしれない。そのためにも離職率はできるだけ低い方が委託する治験依頼者としては嬉しい。
 離職率は業種によって異なるが、産業分類で見ると、多くの治験依頼者である製造業では10%程度であり、サービス業(他に分類されないもの)であるCROでは20%程度と公開されている。ちなみに治験を実施する医療機関は医療・福祉に分類されるが、これは製造業とサービス業(他に分類されないもの)の中間である15%程度というのが2022年の統計だそうだ1)。筆者の実感としては、製薬企業であってもCROであっても、内資企業では離職率は低く、外資系では高く、また首都圏では高く、地方では低いという傾向にあるように思う。

 図2の基本情報に「GCP組織」と書いてある。GLPではGLP組織、あるいはGMPではGMP組織という言葉が頻繁に使われているが、GCPの領域では「GCP組織」という言葉を耳にすることはほとんどない。しかしPMDAが適合性調査に用いる「新医薬品GCP 実地調査・適合性書面調査チェックリスト(治験依頼者用)」を見ると、開発担当部門、安全性情報部門、監査部門という言葉が使われており、すなわちこれらがGCP組織ということになろう。CROではモニタリング部門やメディカルライティング部門あるいは統計解析部門や資料保管部門などを置くことがある。どのような部門が設置されているのか、そしてそれぞれの職員数を調査項目にする。
 BCP/DRPは、Business Continuity Plan(事業継続計画)とDisaster Recovery Plan(災害復旧計画)のことであり、2011年の東北大震災をきっかけに多くの企業で策定されてきたが、製薬企業やCRO、特に外資系企業ではこれ以前に既に作成されていた。治験の対象になるのは医療機関であり患者さんなので、たとえ自然災害であってもCROの業務が滞ることは避けたい。このあたりの計画の有無を問うことは必要であろう。

 受託実績を調査することは必要不可欠である。例えば第Ⅱ相臨床試験のモニタリングと総括報告書の作成を委託したいにもかかわらず、これらの受託実績がないようでは委託を躊躇するどころか、委託を避けたほうが良いだろう。
 ベンチャー企業ではフルサービス、すなわちGCP省令第12条でいうところの、治験の依頼と管理に係る業務の全部を委託することが多い。さらにモニタリングやデータマネジメントなどの通常のCROへの委託業務の他に、治験依頼者として必要なSOPの作成支援やいわゆる社内IRBの支援などを委託することもあり、このような業務の受託実績のあるCROであるかを調査してもよいだろう。

 

 

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