【第1回】治験に係るベンダーの要件調査

はじめに
 GCPに関するシリーズ第4弾として「治験に係るベンダーの要件調査」と題し、今回から数回の予定で連載が始まる。治験に関わるベンダーを適切に選定し、管理することが治験を成功に結び付ける重要な要因であり、規制当局による適合性調査においてもベンダーを選定した理由と管理方法を確認されることがある1)。ベンダーを調査し選定し業務を委託して管理するという一連のプロセスについて書き進めていこう。

治験に係るその他の施設
 GCP省令やガイダンスの随所に「治験の実施に係るその他の施設」と「治験に係るその他の施設」が記載されている。この両者の違いを見てみよう。

 「治験の実施に係るその他の施設」とは、治験の実施、すなわちGCP省令第四章に係る施設であって実施医療機関以外の施設を指すことから、治験施設支援機関(SMO:Site Management Organization)や臨床検査会社を意味すると考えられる。モニターはこれらの施設を訪問して原資料を直接閲覧し、また治験薬の適切な管理が行われているのを確認することがGCP省令第21条(モニタリングの実施)ガイダンスで求められている。しかしながらモニターが訪問するのは実施医療機関であって、SMOや臨床検査会社を訪問して原資料(カルテ、心電図等)や治験薬の保管状況を確認することはない。
 また「治験に係るその他の施設」の場合は「治験の実施」に限定していないことから、治験の依頼の基準であるGCP省令第二章及び治験の管理の基準である第三章を含むことになる。したがって、治験の依頼と管理に係る施設、すなわち開発業務受託機関(CRO:Contract Research Organization)や治験薬運搬業者などを含めた意味になると考えられる。なお、GCP省令第二章は「治験の依頼に関する基準」がGCP省令施行時の章名であったが、医師主導治験がGCPに組み入れられた平成15年6月のGCP省令改正によって「治験の準備に関する基準」に改められた経緯がある。
 GCP省令の記述からは両者を区別しているように思えるが、この区別に特段の理由があるとは考えられない。したがって、本稿ではGCP省令第四章「治験を行う基準」に係るSMOや臨床検査会社に加え、第二章「治験の準備に関する基準」と第三章「治験の管理に関する基準」に係るCROや治験薬運搬業者なども含めてすべて「その他の施設」として扱うこととする(図1)。
 この「その他の施設」は、治験依頼者が活用するCROや治験薬運搬業者、実施医療機関が活用するSMOや臨床検査会社の他に、治験薬製造施設、資料保管会社あるいは翻訳会社等多種多様なサービスを提供するベンダーのことである。なお、治験依頼者によってはベンダーをService Provider、Supplier、あるいは単に業者などと呼んでいることもある。
 ICH E6(R2)ではVendor(厚労省による日本語訳では「業務受託者」)という言葉が使われているが、ICH E6(R3)案ではVendorという言葉が無くなり、代わってService Provider(同、サービス提供者)という言葉が出てきて、CROはService Providerに含まれるとも書いてある。本稿ではGCP上の「その他の施設」をベンダーと呼ぶことにする。

ベンダーの要件調査の目的と対象
 治験依頼者は治験の依頼と管理に係る業務の全部又は一部を委託することができる(GCP省令第12条)。もちろん業務を委託するには委託先であるベンダーが業務を適切に実施できることが前提となり、そのためには委託する業務を適切に実施できるベンダーであるか否かを、業務委受託契約を締結する前に調査する必要がある。適切なベンダーを選定するための調査を「要件調査、ベンダー調査、Vendor Assessment、Vendor Selection、Capability Assessment」などと呼ぶ。
 GCP省令第12条(業務の委託)ガイダンスでは「当該受託者は開発業務受託機関とも呼ばれる」と記載され、すなわちCROを指しているが、いわゆるCRO以外にも要件調査の対象となるベンダーは、治験薬製造施設、治験薬保管施設、治験薬運搬業者、治験薬割付業者、EDCベンダー、印刷業者、翻訳業者、SMO、臨床検査機関、薬物濃度測定機関、外部倉庫、等々の治験に関わる多種多様な専門業者が考えられる1)

 

 

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