【第9回】Pharma4.0 スマートファクトリーへの挑戦 Challenge to the Pharma4.0

アナリティクスを用いた課題解決

本コラムでは、Pharma4.0スマートファクトリーに向けた医薬品製造業の課題に対する当社の各種取り組みをご紹介します。大きな基盤づくりの方法論から、各種課題解決ツールまで、幅広くご紹介しますのでご期待ください。

第9回目は、「アナリティクスを用いた課題解決」と題し、データ活用や方向性、経営的意義を述べた後、トレンド異常(OOT)、規格逸脱(OOS)に対する対応策を、事例を交えご紹介します。

進まない「積極的な」データ活用
品質の良し悪しが人命を左右してしまう医薬品は、当局の厳しい規制と管理の下で製造され、人々に提供されています。例えば、規制上求められる記録文書は、紙でのマニュアル記録は非常に煩わしく、電子記録に移行することで正確に記録され、かつ効率的にルールを守ることができます。このような、望ましい状況も投資力のある大手企業に限られ、中堅中小企業まで含めた業界全体に関しては下記のような調査結果があります。
1)生産管理用ソフトウェアの利用率:49%          (バイオビア調べ)
2)医薬品製造データの活用率:30%             (Bigfinite調べ)
3)CMO等、委託業者との共同業務のソフトウェア利用率:25% (バイオビア調べ)

つまり、我々が口にする薬は人手によるマニュアル管理の部分が多く存在しており、製薬業界においてはIT化やデジタル化は引き続き重要な課題となっています。
データに視点を移すと「データは21世紀の石油」と言われるほど、その重要性はますます高くなってきていますが、医薬品製造においては収集したデータを積極的に活用できていないと言えましょう。製造の記録を正確に保存するというモチベーションは、何か事故があった時の証拠や証憑のためというGMPに根差した部分が多いと考えられます。

薬価の抑制が進み、その上に新薬開発の難しさが重なり、これまで大きく問題にならなった製造コストについても削減の声が上がり始めています。市場から求められる必要量を安定的かつ高品質で供給することが使命である医薬品メーカーは、これまで以上に製造データを積極的に活用することで、薬を必要としている人々の期待に応えていく責任があります。
ここからは、具体的にIoT等で収集された製造データ(プロセスデータ、品質データなど)を如何に有効活用していくかについてご紹介します。
 

1.各工程のデータ活用の目的や方向性
医薬品の製造は各工程に分かれ、それぞれデータを活用する主な目的も異なっています。
下図は、原薬工程、製剤工程、包装工程におけるデータ活用に求められるものを整理しました。

図 医薬品製造の各工程のデータの活用の方向性

医薬品製造の一般論として整理しているため、読者の会社に当てはまらない部分がある点は予めご了承ください。
例えば、多品種で比較的ロットも小さい場合おいては、洗浄工程による製造コストへの影響があります。品質維持は絶対であり洗浄の手を抜くことはできないため、必然的に洗浄回数が増加し、直接的コスト増の他、切り替え時の生産停止の影響も考えられます。これらの課題解決の一助にデータを活用することで、通常運転のみならず適切な洗浄にも寄与し、コストと品質の最適バランスがとれるようになると考えられます。

2.医薬品製造におけるデータ活用の経営的意義
繰り返しになりますが、医薬品を供給するということは社会的責任も大きく、それ故に品質問題が発生すると社会的制裁を受け企業に与えるダメージは計り知れません。
考えられる経営インパクトとしては、
1) 安定供給のリスク
2) 製品の回収と破棄
3) 社会的信頼の失墜
4) 社内の対応工数、コストの増加
5) 規制当局のチェックの厳格化
などが挙げられます。積極的にデータを活用することでこれらを防ぎ、医薬品の製造における社会的意義と経営的意義を両立させることができると考えられます。
ここでは、製造KPIの事例を紹介させていただきます。納期遵守率、サイクルタイム、設備稼働率、OOS・OOT発生率等の指標があります。これらの指標は、時系列的な変化を検証することで要因と結果を確認ができ、組織のナレッジとなります。
また、改善のために関連するアクティビティを定義して、現場の関係者が数値と実際の現場を見て、自律的・継続的に当該事象を改善する行動がとれるよう、必要な権限が与えられていることが効果を挙げる要因になります。

図 財務KPIとSCMオペレーションKPIとアクティビティの関連

 

 

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