再生医療等製品の品質保証についての雑感【第64回】

第64回:再生医療等製品の製品開発と製造工程開発とQbD (3) 
~ 製造工程開発をはじめる(1) ~


はじめに
 今回より、一連の本題?となる、製造工程開発についてお話しを開始します。ただし、再生医療等製品(細胞加工製品)の場合では、決定された重要品質特性(CQA)より自由に工程を設計できるわけではありませんので、ここまでにお話しをした製品設計におけるCQAの決定経緯に関する理解と併せて、製品開発の各段階を踏まえて、QbDアプローチの考え方をお話しします。


● 製品開発における製造工程開発の位置づけ
 我々は、製品を上市するための活動である「製品開発」の中で、製造工程開発(工程設計)を実施します。製品開発とは、JIS Z8141(生産管理用語)において「顧客のニーズ変化、生産者の技術向上、地球環境への対応などを動機として新たな製品を企画し、その製品化を図る活動」と定義されており、一つの製品の設計段階からその販売が打ち切られるまでの期間である製品寿命(製品のライフサイクル)を通じて実施される、製品設計および生産計画の活動が含まれると認識します。製品設計では、期待する製品の性能を発揮するのに必要な機能とそれらの関連を求め各機能を実現させる構造を決定する「機能設計」を実施し、生産設計では、生産に対する容易性・経済性などを考慮して機能設計の内容を実現する設計を実施します。
 ICH-Q8の製造工程開発は、製造工程の選択、製造工程管理、及び製造工程の最適化(商業生産を想定したロットなど)を行う活動と定義されており、上述の「生産設計」に相当する活動であると認識します。またここでは、製造工程開発を適切に実施するためには、前提として、QTPPとそれに紐づくCQAの決定が要求されます。これは、QTPPとCQAが製品開発における機能設計の結果だからです。
 上記より、一般的な製品開発では、製品設計、機能設計、生産設計がそれぞれ独立しており、製造工程開発生産設計は、機能設計の結果が明確であれば、生産計画の意向、すなわち生産に対する容易性・経済性などの考慮に沿って、ユニークな設計が許容されると考えます。

 余談ですが、本分野でもCMC活動を行う多くの方が、期待する製品の性能を発揮させる製造性(細胞製造性)を考慮せず、先ず大量製造技術や製造設備より検討を開始するのは、このように、製造工程開発では生産に対する容易性・経済性などを一番に考慮することが当たり前だからと考察しています。しかしながら細胞加工製品製造では、この当たり前が通じないことが生じると考えます。それは、製品設計、機能設計、生産設計の各々が独立していない場合です。

 

 

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