医薬品工場に求められているHSE要件と事例【第53回】

国際化に対応する医薬品会社に必要なHSEとは?
「M&Aで日本の製薬工場が事前準備必要な留意事項」


1.製薬企業のあるべき姿

製薬企業の国際化が進む中、企業の多様化を配慮した製薬工場の各種取り組みが求められるようになってきました。日本国内外にて製薬工場で働く日本人も外国人も夫々の工場でGMPやHSEの専門技術スキルを習得することでその職務を発揮することが出来るようになります。さて、ここで必要となるのが企業のM&A対応とその準備では無いでしょうか。最近、日本政府(厚労省)から後発薬の製薬企業に不足医薬品の数量不足の問題を新聞紙上で発表されていました。その対策案として生産能力不足と人材不足に手を入れる事が明言されていました。そして、製薬企業に会社業務整理や会社統合を検討するよう要請がされていました。国の要請であれば企業はなんとかしたいと思うところではありますが、現実は会社の存続と安定経営で売り上げと利益を守りたいと考えるのは当然のことです。日本の製薬企業の立場では会社を如何に末永く売り上げを計上し、安定したビジネスの継続を図りたいと考えるところだと想像します。

さて、一方的であれ同意の上であれ会社統合がグローバル企業で活発になり始めて約20年が経過しました。当初、約20年以上前にM&Aが始まった頃は日本企業や日本人の心境は言葉で表すと会社が乗っ取られるというのが正直な印象でした。それは外資系の企業同士で技術力や信頼性などお構いなしで資本力のある会社がその資本力で他社を買収するという構図でした。これを日本の製薬企業で働く従業員の立場で言うとまさか我が社にはそのようなことは発生しないだろうという思いが本音であったと思います。

当初は企業の歴史や知名度などを考慮して資金を蓄えた成り上がりかも知れない企業が有名企業をその持ち株数で株主にアプローチする様な例があったのではないでしょうか。しかし、その後は特に優良企業の将来性を新製品の売り上げ予想額などをM&Aの専門家が評価してM&Aを仕掛けるように変わってきました。最初の10年くらい経過した頃、M&Aが珍しくなくなってきてその専門性も高まり買収先企業の資産価値のみならずHSEの運用レベルや特に環境問題として医薬品工場は事業所での化学物質使用履歴、土壌汚染リスクを評価せずに買収をして土壌汚染対策や地下水汚染対策に莫大な費用がかかり、買収した企業のメリットとしての収入が激減したようです。M&Aの結果、買収企業のその後の経営に大きな支障をもたらした事がわかり、グローバル企業はM&Aを仕掛ける前に環境のDue Diligenceをやって評価結果を見て、総合的に資産を行った後にM&Aを仕掛けることが常態化するようになりました。歴史的に見てグローバル企業は失敗も経験し、賢くなったと言えます。

さて、日本の製薬企業ではHSE(健康安全環境)の部署を持たないか持っていても専門家が育っていない為、環境のDue Diligenceを実施したり教育したり出来る製薬企業や工場はまだまだ少ないと聞いています。ましてや、M&Aの経験が乏しい会社が多く、Due Diligenceの必要性すらわからないではM&Aを仕掛ける事などもっての外では無いでしょうか。知識がなければ外注の専門会社に大金を積んででも十分な事前準備を行い、大金を費やしてでも事前に従業員の人財教育をおこなった上でM&Aを仕掛けたり、受けたり出来るようにしなければなりません。

いまや、M&Aは企業の生き残りを賭ける重要な戦略として位置付けされています。世界規模でこのM&Aに対応出来る力をつけることがあるべき姿ではないでしょうか。

 

 

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